パンプローナから東に200kmほど行った山中のギャヴィン(Gavin)のキャンプサイトは山の斜面に段々になったテラス状の静かなサイトで、遠くの山に雪が白く輝いている。ギャヴィンの村より下に面したサイトでトイレ、シャワー、キッチン、洗濯室などの設備が良くて高級キャンプサイトの感じがある。早朝からカッコウが鳴き、鷹がゆっくり上空を旋回している。
ギャヴィンから北東はオーデッサ(Ordesa)& モンテ・ペルディード(Monte Perdido)自然公園で晴天の一日この自然公園を訪ねた。
ギャヴィンから20kmほど山を登りトンネルを2か所通って曲がりくねった山道からトーラ(Torla)の小さな村が見えてウワーと歓声を上げた。素晴らしい岩山が雪をかぶって屏風のようにそそり立ち、その前に石造りの古い教会が建っていて観光写真そのもの。ここは夏の観光客が集中するところらしく、観光案内所の前が広い駐車場になっていて、たぶん数百台は駐車できるだろう。それにホテルがズラーと並んでいる。
谷間の雑木林は山桜の白い花が満開で山全体が白い点々模様になっていた。教会の後ろの小さな公園には昔使っていたらしい粉ひき石の一部が飾ってあった。直径1メーター以上する大きなものだった。
トーラからまた北に15kmほど山道を登ったところが行きどまりのオーデッサの駐車場で、ここから河のほとりに沿って散歩道が17km山に入ってゆく。
歩道の木陰にはまだ雪が残っているし、岩やがけの間を飾る白と紫いろの小花が目を楽しませてくれる。見上げると谷間にまっすぐ伸び育っている杉の木の高いこと、そそり立つ岩山に雪が輝き、雪解け水が滝になって流れ落ちている。川の水は澄み切っていて飲んだらどんなに冷たいだろうか?
17kmの全行程をこなすほど時間もないので、途中で折り返し、一か所に架かっている石の橋を渡ったところから駐車場まで車いすが通れる整備された歩道があった。素晴らしい景色を愛でて午後4時ころに山を下りキャンプサイトへ戻ってきた。太陽は暑いくらいだったが、木陰はまだ涼しく、残雪もこの夜激しく降った雨で解けたかもしれない。
山ふもとの牧場に放牧された牛たちは全部が首に大きなベルを下げていて歩くたび、草を食むたびにガランガランとおおきな音を立てる。初めてスイスへ行ったときに聞いたベルの音は旅情をそそり忘れがたいものだったが、近くで聞くとあまりにうるさくて、なんだか牛たちかかわいそうに思えてきた。
ただ一か所の谷間の崖一面にプリムローズの花が咲いていた。今年初めての春の花だ。英国へ帰れば花の時期は終わっているだろう。