「ザ・デプス」
原題:DEEPSTAR SIX
1989年 アメリカ 99分
■監督:
ショーン・S・カニンガム
■出演:
グレッグ・エヴィガン
ナンシー・エヴァーハード
ミゲル・ファーラー
ニア・ピープルズ
●あらすじ
豊富な資源と戦略上の機密性から、深度1万メートルの海底に造られた
アメリカ海軍の秘密基地ディープスター・シックス(DeepStar Six)に隣接して
ミサイル基地の建設に従事する11人のクルーが、突如現れた正体不明の怪物に襲われる。
(Wikipediaより)
★感想など
深海SF物では一番最初に全米で公開された作品。
まず制作会社がカロルコ・ピクチャーズなのに驚いた。
カロルコとはマリオ・カサールとアンドリュー・G・ヴァジナと言う二人の山師が作った会社で
1980年代にはヒット作を連発していたので有名である。
ヒットしたタイトルを一部挙げると「ランボー(1982)」「ランボー/怒りの脱出(1985)」「レッドブル(1988)」
さらには「ゼイリブ(1988)」「ショッカー(1989)」に「トータル・リコール(1990)」
そして何と言っても極めつけは「ターミネーター2(1991)」だろう。
どちらかと言うとビッグバジェットで大作を連発し、世界中のマーケットで稼ぐ方針だったカロルコだが
本作は結構な低予算である。
そして監督には何故かのショーン・S・カニンガム。
ライバルとなる「リバイアサン」の監督はジョージ・P・コスマトスなのだが、むしろコスマトスの方がカロルコとは縁が深い。
「ランボー/怒りの脱出」も彼の監督作だしね。
だがこの時の深海SFブームでは関わっていない。
推測だけど、「ザ・デプス」と「リバイアサン」の両方からオファーが来て、予算がある「リバイアサン」を選んだのかな。
そのせいかどうかは分からないけど、本作の監督に抜擢されたのは「13日の金曜日」を監督したショーン・S・カニンガム。
「13金」繋がりなのか、本作の音楽は「13金」でも音楽担当だったハリー・マンフレディーニなのが面白い。
他には予算が少ない事が影響している点がいくつかあり、まずは出演している俳優陣がみなノン・スターだ。
そして海底の特撮シーンは全てミニチュアで撮影されている。
このミニチュアによる撮影が、まるで東宝特撮シリーズのような趣きがあり、我々日本人にはとても馴染みがあって良きである。
モンスターの造形もどちらと言うと怪獣映画のノリに近く、正に正統派モンスタームービーと言えるかも知れない。
だが反面、怪獣が登場するまでに1時間以上を要するのは、いささか長いかもしれない。
そう考えるとこの映画の作りって、カニンガムが監督した「13日の金曜日」と、構図がほぼ同じな事に気付くんだよね。
低予算ゆえのノン・スター俳優たちがあーだこーだやって時間を潰し、1時間以上経ってからようやく
殺人鬼だったり怪獣だったりが登場すると言う、引っ張り方。
ラストに助かったと思って海上まで逃げたのに、怪獣がそこまで追っかけてくるオチも「13金」と同じだしね。
だけど本作が「13金」と大きく違う点は、開始から1時間近くある話の中で色々と問題がおきるが
その原因が怪獣ではなくて、一人のヤバイ奴のせいでトラブルが発生すると言う事だ。
一人下っ端で基本上から指示されて行動する男がいるのだが、こいつが全てにおいてヤバイ。
まず自分の頭で考えると言う事をしなくて、上司からこれやれって言われたら
どうしてそれをやる必要があるのかとか、これをやっていいのかとかそういった疑問を持つ事がない。
それでいて指示された結果とんでもない事になってしまうと、
「オレは悪くない。言われたからやっただけだ」と責任転嫁と逆切れの嵐で、手に負えない。
実社会でもこういう奴っているけど、本当に周りが困ってしまう。
こいつは正にそれを地でいくやつで、とにかくやることなす事ろくでもない結果にしかならない。
この映画で登場人物たちが色々な災難にあう理由は、ほとんどがこの男がやらかした事による結果だ。
おかげで肝心要の怪獣の存在感が薄い事薄い事。
でも最後に怪獣映画っぽい活躍を見せてくれるだけで、何だか嬉しくなってしまうのが、
怪獣映画ファンの性なんだなあ(笑)