林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

犬塚勉展

2009-08-24 | 色めがね

「犬塚勉」という風景画家はNHKの日曜美術館ではじめて知った。
独学で絵を学び、徹底的に対象を見詰め、極めて寡作。晩年は高山に拘り、谷川岳で亡くなった。
作品は超絶技巧の細密描写で、分り易く、美しい風景画だが、甘くは無く、迫力がある。

筆記具を忘れたので画題に記憶違いがあるかもしれないが、「夕暮れの坂道」、「多摩丘陵(冬)」、「多摩丘陵(春)」の滲んで暗い叙情が美しい。

「梅雨晴れ」は、何気ない風景を大胆な構図で細密に描き、ギラリと迫る。

     (新聞紙見開き4枚分以上の大きさでした)

「縞栗鼠の食卓」、「山の暮らし」は大木の切り株や倒した大木の切り口だけの絵だが、木肌は渋く深く、伐り跡は鋭い。超細密描写だが抽象画のように見える。

初冬のブナの大木と雪が積もったブナの作品群は、さほど大きくはない画面なのに深い奥行きが感じられ、はりつめた空気の痛さをブナの木肌で暖めてくれる。

    

「暗く深き渓谷の入口」の2点は、白く細い滝を配した黒い渓谷を背景にして、大岩がデンと据わっただけの絵だが、鬼気迫るものがあった。

    

日本の洋画家はよく、油絵具で湿潤な日本の風景は描けない、と言うが、犬塚の作品を観ると、彼らは眼力や腕力が劣る、ということの言い訳をしているに過ぎない、と思う。

似た画家にワイエスがいる。
寡作の犬塚は多作のワイエスを超えているのではあるまいか。
犬塚は40歳前に亡くなってしまった。絵に精魂を注ぎ尽くしたのだろう。

8月30日で会期は終了する。
近いのでもう1度、空いている(?)平日に行って観たい展覧会でした。

犬塚を特集した日曜美術館は、館内貼紙によると、9月に再放送されるそうです。
挿絵▲は「縦走路」。美術館の説明書から。

絵葉書も展示作品目録もありません。
挿絵は「せせらぎの里美術館」の簡単な略歴チラシとHPから転写しました。
画集は3500円。買わなかった。ネットで買おうか、と悩んでます。

館内は撮影禁止なのに記念撮影をするじじい、停止線を越えて作品に息を吹きかけるばばあ。
お行儀を忘れたじじばばがいて、残念でした。



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