地下に降りる階段前でタキシード爺さんが3人を迎えてくれた。
愛想が無いが、まぁ、この歳で夜のお仕事は辛い。仕方が無いや。
「アコースティックライブハウス」はほぼ満席だった。
端唄の会はこれまでご婦人が多かったが、今夜は紳士も多い。
皆さんリュウとした背広やジャケット姿で、森男は正直たじろいだ。箪笥に沢山寝かしているのに、と後悔した。
席は指定席。
前回の彩翔亭と違って椅子席で助かる。
3人は本職の津軽三味線の若者、貫禄の紳士たちと同卓。何故かあのタキシードも。
ワンドリンクサービスで少し元気が出て、紳士たちの身元調査をした。
飛行場がある某市市長閣下、恰幅社長、我がまち市長のご親戚である自称「百姓」。
タキシード姿は、レレレ、市長閣下お膝元某有名大病院の院長先生だっ。
それに牡丹のような、濃い洋装姐さん。
三味線は7棹。(数詞は津軽三味線君から教わりました)
一寸音を外しても、全然大丈夫であること、第九の合唱の如し。
それなり美人の6人の名取さんは、無表情だけれど、良い席を指定してくれた麗華さんは笑顔で婉然。一番ス
・テ
・キ
。
でも、こんなに近くよりも、少し離れた席の方が本当はいい。
理由は内緒。
この会は4回目で、既に聞いた歌が多い。
でも、聴き込むほどにしっぽりと艶で、悩ましい。
家元の鶯谷麗さんが時々脇から出てきて、演奏中に三味線の調弦をする。
麗華さんは瞬間だが、顔顰めたぞ。出しゃばり家元め。
曲目は三味線伴奏で14曲。
今回はおっさんも3人出演して、正調博多、相撲甚句、月落烏啼、玉川、柳の雨、柳橋から、などを歌った。
ぞろりとした鶯色の着物に野袴はまぁいいけど、裾から白い股引とは野暮ですよ。
仙台平の袴でばっちり決めたお父さん、胴間声で、はぁどすこいどすこい。
ご婦人連は先ず家元のお江戸日本橋。
そして、そして、そして........。
家元の名前を取って、丸やら、輔やら、美やら、蝶。
会が退けたら何が誰だか分からなくなって、貰ったプログラムと一致しなくなってしまった。ごめんなさいね。
いずれにしても、いずれあやめか姥桜。
何度も書くが麗華さんが一番ス・テ・キだった。
仏子の喫茶店同様、今回も拡声器付きである。
巨大拡声器の前に家元は陣取り、三味線のアラを探しているが、大音響ガンガンを何とも感じないのが不思議である。
森男たちの卓は直ぐ傍で、大音響は実は迷惑だった。商家や彩翔亭の方が良かった。
50人足らずで満席なのだから、地声で歌ってほしい。アコースティックで行こう。端唄はジャズじゃないんだからサ。

2回休憩を入れて、第3部15曲目からはピアノ伴奏の端唄である。
家元さんが、梅は咲いたか、秋の夜。春雨、さのさ、を歌い上げたのである。
「ライブ」だからピアノはしょうがない、と思ったが、これが案外、頗る良いのである。
ピアノ伴奏は、氷川きよしや石川さゆりの「スタジオミュージシャン」だそうだが、小沢昭一さんのハーモニカ伴奏で全国の舞台にも立っている由。
編曲は全てこの先生。装飾音符をちりばめて、ショパン、リスト、メンデルスゾ-ンも逃げ出す情緒纏綿じゃあないか!
でもなあ、家元麗さんはトップランナアのように自負されてるが、これって市丸姐さんが大昔、もっと大舞台でやってたんじゃないの。
森男は子どもの頃、本職名人の尺八や三味線の練習をライブを聴いていたから、邦楽には煩いんです。
マイクを使って歌えば、負けずにグランドピアノを叩く。
その音量にに圧倒されてしまい、これって端唄なの? でも、悪いわけではない。「ニュー・ハウタ」と考えれば、十分楽しめる。
........で、名曲「秋の夜」。
秋の夜は長いものとは..... まんまるな月見ぬ人の心かも
更けて待てども来ぬ人の 訪づるものは鐘ばかり......
数ふる指も寝つ起きつ わしゃ照らされているわいなぁ..........
待てど暮らせど来ぬ人を、宵待ち草のやるせなさ、ですね。
待たせるなんて、いいなぁ......。

ま、少しケチ付けたけれど、楽しかった。
ワンドリンクサービスのシコスオレンジ(?)は美味かった。少し酔ってしまった。
端唄ワールドは素晴らしい。
花束贈呈は家元さんとピアニストに。
盛大な拍手に包まれて、家元さん、アンコールと思いきや.......。
意外や意外、呆気にとられるデキゴトが.......。
......長い「林住記」は股引です。
人生は短く、秋の夜は長い、のです、とまた繰り返すヤボテン。
お後は、明日、投稿しますね。

お写真は25年前のイメージです。ちょっとずつ違いますからね。
イメージばっかり膨らんじゃって......。