「ウグイスカグラ」の花がひっそりと咲き始めた。
実家の庭にもあり、子どもの頃は「グミ(茱萸)」と言っていた。
ルビーのような小さい実が成り、少しも腹の足しにはならないけれど小鳥のようについばんだものである。
猫額亭に引っ越して自分の庭を持った時に、あの「グミ」が懐かしく、実が大きいという「びっくりグミ」の苗を移植した。
「びっくりグミ」は、花の形は似ているが、色は黄白色で記憶よりずっと大きく、葉は大型で強健。冬になってもなかなか落葉しない。
茎には棘まであり、実はビックリするほど大型。味はなかなか美味である。
それ以後、あのグミは一体何だったのだろうと長い間、気になっていた。
何年か前の今頃、丘の上の公園で作業中、会長さんが、
あれっ、「ウグイスカズラ」が咲き始めた
と言ったのを聞いて、近寄って見ると、子どもの頃の「グミ」と同じ花だった。
あの「グミ」は「ウグイスカズラ」だったのか、とあやふやな記憶を訂正した。
よく見ると、雑木林の中にはいっぱい自生している。
それから何年かはあの「グミ」は「ウグイスカズラ」だったのか、と腑に落ちていたが、カズラは「葛または蔓」。蔓草(つる草)の総称のはず。
どう見ても蔓ではない。
図鑑を調べたら、「ウグイスカグラ(鶯神楽)」だったのである。
現在、植物の名前を書く時はカタカナを使うべし、と決められているそうだ。
お陰で、正しい名前に辿り着くまで、60年も掛かってしまった。
だからカタカナ表記は味も素っ気も無く、イヤなのだ。
●会長さんは「神楽」と言ったのかも知れないけれど、「蔓」と覚えている人が多い。
森男は「紀伊上臈杜鵑」を「黄女郎杜鵑」と覚えていた時期がある。
鶯神楽はスイカズラ科スイカズラ属で、グミはグミ科グミ属。