
南伸坊さんの本には、ツマ・文子さんがしばしば出て来る。
一緒にアチコチして、夫婦仲は良さそうに見える。
その秘訣は?、と南伸坊さんの「狸の夫婦」を読み込むと......。
この夫婦、はたして夫婦仲はいいんだろうか、と。
ツマの文子さんは大胆な人である。オット伸坊さんに、
しんちゃん、チンチンとキンタマって同じだよね
といきなり尋いてビックリさせる。
また、伸坊さんのハラがせり出してくると、
ハラ!
と単刀直入に厳しく、何度も何度も指摘する。
永年一緒に暮らしているのに、伸坊さんは文子さんが「お天気趣味」である事を知らなかった。
文子さんは、日の出、日没時間にひどく関心があるのだ。
ベランダのトマトに対しては、文子さんは厳格な放任主義だ。
伸坊さんは過保護主義で水をやり過ぎ、弄り過ぎる。
ホースリールが欲しい、と言えば、20mもあるホースは必要ナイ、と文子さんは却下だ。
トマトと洗濯物で狭いベランダの覇権を争う。
夜、トマトの苗の葉っぱを慈しみながら摘むと、朝、寝室で仁王立ちなり、詰問調で、
どういうつもり?!
と追い詰め、伸坊さんを激しく反省させる。
何日か経つと葉っぱが出てきて、何もあんなに反省することはなかった、と反省する。
しかしそれを公言することを伸坊さんはハバカル。
ホースだって、自分の小遣いで買えるのに、とも考えるが、ともかく差し控える。
ハラの出っ張りは、捻り体操で凹ませよう、と約束し努力するが......。
ま、こんな風に伸坊さんが耐えているので、日々はヘーワに推移しているのだ。
一方、ツマ文子さんだって、伸坊さんが齢60に達すると、
しんちゃん、カンレキのお祝い、ホースにするか?
と覚えていて、伸坊さんを手放しで喜ばせる。
ハラを体操で凹ますから暫く追求しないでくれ、と言えば、ツマは爾後完全に黙ってる。
長瀞のカキ氷に、寒い東武東上線電車を我慢して付き合う。
酷寒の深夜、近くの原っぱの月見に誘われると、防寒着で身を固めて婦随。
原っぱで、過ぎ去りし二人のあの街この街を偲んでみたりする。
等々その他、ツマ文子さんだって結構オット伸坊さんをオモンバカリ、立てているのだ。
傍から見ると二人は仲がいい。だが天然自然ではなかったのだ。
本の腰巻に書いてある
へーへー ぽんぽこりん の日常生活
なんて気楽なもんじゃなかったのだ。
二人は、互いに狸寝入りをしたり、化かし合ったりしてヘーワを維持している。
それでなるほど、「狸の夫婦」なんでした。
う~む。

写真は9月29日朝日夕刊に掲載された南伸坊さんの仕事部屋です。
のほほんかと思ってたら、へえ~!でした。