南海トラフ地震はマグニチュード9.1を想定し最悪の条件で推計すると、死者総数は320,000人の由。
片や間もなく首都東京を襲うと言われている直下型地震。
政府の被害想定では、理由は不明だが火災は2,500件発生し、1,300件が消火できず、650,000棟が焼失。
火災による死者が6,200人になると想定しているそうだ。
この政府想定に異論を唱える人がいる。関西学院大学災害復興制度研究所長室崎益輝先生です。
先生の専門は防火・避難計画で、消防庁消防研究所長を務めたこともある。
先生の主張を四捨五入します。
・過去の地震火災実態では1,000棟燃えると100人の焼死者が出る。
・つまり政府想定焼死者数6,200人は少な過ぎだ。
・650,000棟消失するなら焼死者数は65,000人で政府想定数の11倍。多分100,000人は焼死するだろう。
こんな深刻な事態になるかもしれないのに、何故被害想定が過小評価になったのか。先生の指摘によると、
・被害想定をする委員会に地震火災の仕組みが分かる専門家を入れていない。
・想定の基になる40件を超す大火災の事例は、震災は関東大震災だけで、他は平常時の強風時大火災だけ。
・関東大震災でも、一箇所で40,000人近くが犠牲になった旋風火災は、「必ずしも起きるとは限らぬ」と除外。
・「最悪の事態は起きて欲しくない」という気分が、予測される被害実態から目をそらしている。
先生は憤慨している。
・これは福島原発事故と同じだ。不適切なデータによる誤った対策は多くの命を奪いかねない。
やれやれ、日本には「原子力村」だけではなく、「震災村」もあったんですね。
全く、日本人はどんな場合でも、都合の悪いものは見えないし、見ようともしないのである。
国の有識者会議は、南海トラフ地震では最悪の想定を発表した。
首都直下型地震について先生に反論できなければ、内閣府と東京都は、誤りを正し、謝るべきである。
この記事を掲載した朝日新聞には、その後どうなったか、を追跡取材して欲しい。
でないと恐ろしくて、たまには東京へ行こう、という気持ちが萎えますね。
木造住宅密集地で火災が広がり取り囲まれると、100m離れていても火傷を負う。
新宿御苑や皇居前広場くらいの広さがないと命は守れない。地震発生と同時に逃げ出さないと間に合わない。
地震火災の原因は通電火災比率が非常に高い。感震ブレーカーの設置を法律で義務付けるべきだ。
等々、8月24日朝日新聞朝刊13頁「地震火災を甘くみるな」を、読みましょう。
120903