実家の近くに、中規模のスーパーが新しくオープンしたらしい。以前その場所には市場があった。 それぞれの売り場が個人商店ごとに仕切られ個々に商売をするスタイルであった。
記憶では、私が小学校低学年の頃にオープンしたので、50年以上前の話である。昔は新規で市場がオープンすると、空にはアドバルーンと花火が上がり、街にはチンドン屋が繰り出し、芸能人が呼ばれ彼らの余興を楽しんだものである。
大昔の話なのに、結構覚えているもので、その時は、確かパンパカパーンで有名だった、漫画トリオがやって来た。そう! ノック(横山ノック)、フック(後の青芝フック)とパンチ(後の上岡竜太郎)の3人組でその時のネタの一部の記憶もある。
年をとると最近 の記憶でさえ曖昧になるのだが、この手の話はどのような訳か脳内の別枠の記憶みたいで、たわいもない出来事なのに本当に不思議とよくお覚えているものだ。
その市場は、2年ほど前に売り上げ不振で閉店となり、スーパーとして新しく建て替えらオープンに至った。
過去に商店街や市場などを埋め尽くした一般的な個人商店は、現代ではスーパーや通販によって淘汰される運命みたいである。
近所でも、昔ながらの個人経営の本屋さんは1店を残して消滅。CDショップに関しては、住んでいる沿線ではCDのレンタルと新譜販売をしている大型店舗のツタヤ除いて 全滅。
まあCDの場合は、繁華街の大型店舗でも置いていないような、ボックス・セットや輸入盤を買う事がほとんどなので、不便を感じることは全くないのだが、昔みたいにレコード屋の親父と“あれがお薦め”とか、“これはダメだ”とか言うような会話が無くなり、通販で購入する時はマウスで“ポチッ”と無言の一方通行アクションでなんとなく寂しい気分である。
そう言えば、学生時代近所のレコード屋の親父は毎月一回レコードを買いに行くと、お勧めの新譜をよく聴かせてくれた。そのレコードがその後他の客に販売されたかどうかは定かではない。
そんな中、購入したのがSX-68サウンドと呼ばれる西独ノイマン社の最新カッティング・マシーンでカットされた、サイモンとガーファンクルの日本編集ベスト盤(ALL ABOUT SIMON & GARFUNKEL)であった。
日本語のライナーが内ジャケットに記載
SX-68 西独ノイマン社の最新カッティングには賛否両論あったようだが、個人的にはキンキンしないアナログ・サウンドなので好感が持てた。
信頼のSX-68サウンド
多分1973-74年頃の購入と記憶している。当時ソニーのかぶせ帯仕様の洋楽LPは、シュリンク・パックされていたので、封が切られていない限り新品であった。ビートルズのホワイトアルバム(4000円)を除けば、他のレコード・メーカーの2枚組価格の設定は当時3000円だったと思う。
ちなみに 値段はCBSソニーの強気の価格設定3600円也、などと10代の記憶がどんどん蘇り嬉しい限りである。
しかし、現代の10代の若者が、いまどき自ら進んでサイモンとガーファンクルの音楽を聴くことがあるだろうか?
もし全く興味が無いのであれば、将来には絶滅危惧種に指定され、20年後には街の本屋やCDショップのような運命をたどるかもしれない。
何しろ、約50年ほど前に絶大な人気のあった漫画トリオの存在を知っている現在の若者は皆無と思えるからである。
T. REXの日本盤、SLIDERの付録のライナーには、大森康雄氏が調査及び編纂した年表が記載されている。
そこには、1964年マークは学校を 卒業後、ブティックで2週間働き、その後フランスで魔術師と過ごすと記載されていた。
このことが本当かどうか、今となっては確かめる術はないのだが、少なくともその後の活動において、魔術師絡みと言うかそれに準ずるようなイメージを出そうとしていたことは感じられる。
1967年に、リーガル・ゾノフォーン・レーベルからバンド名をティラノザウルス・レックスとして、パーカション担当のスティーブ・トゥックと2人組でデビューを飾る。
ファースト・アルバムは、MY PEOPLE WERE FAIR, AND HAD SKY IN THEIR HAIR… BUT NOW THEY’RE CONTENT TO WEAR STARS ON THEIR BLOWSと和訳しても何のことかわからないタイトルだが、ジャケットのイラストを見ると少し不気味な空想の世界が描かれている。
また、セカンド・アルバムは、PROPETS, SEERS & SAGES - THE ANGELS OF THE AGES(預言者、先見者と哲学者たち - 代々の天使たち) とこれまたよく分からないタイトルだが、ジャケットは放浪の魔術師という感じの出で立ちである。
アコースティック・ギターとパーカッションの2人組のシンプルなフォークサウンドであるので、エレキギターを使い始めた頃にファンとなった人には少し物足りなく感じるサウンドかもしれない。
しかし、現時点においてリーガル・ゾノフォーン時代に出したCDにアウト・テイクを付けた2枚組のデラックス・エディションなるものが出されていることから、ミュージシャンとマジシャンの境界に存在するようなマーク・ボランのイメージに惹かれるファンが、今尚多く存在するのではないかと想像するのである 。