大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・乃木坂学院高校演劇部物語・1『序章 事故・1』

2022-10-21 06:34:06 | 青春高校

RE.乃木坂学院高校演劇部物語    

1『序章 事故・1』  

 

 

 ドンガラガッシャン、ガッシャーン……!!

 タソガレ色の枯れ葉を盛大に巻き上げて、大道具は転げ落ちた。

 一瞬みんながフリ-ズした。

「あっ!」

 思わず声が出た。

 講堂「乃木坂ホール」の外。十三段の外階段を転げ落ちた大道具の下から、三色のミサンガを付けた形のいい手がはみ出ている。

「潤香先輩!」

 思わず駆け寄って大道具を持ち上げる! 頑丈に作った大道具はビクともしない!

「何やってんの、みんな手伝って!」

 フリ-ズの解けたみんなが寄って、大道具をどけはじめた。

「潤香!」
「潤香先輩!」

 ズサッ!

 皆が呼びかけているうちに、事態に気づいたマリ先生が、階段を飛び降りてきた。

「潤香……だめ、息してない!」

 マリ先生は、素早く潤香先輩の気道を確保すると人工呼吸を始めた。

「きゅ、救急車呼びましょうか……」

 蚊の泣くような声しか出ない。

「呼んで!」

 マリ先生は厳しくも冷静に命じ、わたしは弾かれたように中庭の隅に飛んで携帯をとりだした。

 一瞬、階段の上で、ただ一人フリ-ズが解けずに震えている道具係りの夏鈴(かりん)の姿が見えて……乃木坂の夕陽が、これから起こる半年に渡るドラマを暗示するかのように、この事故現場を照らし出していた。

 

 ロビーの時計が八時を指した。

 

 病院の時計だから、時報の音が鳴ったわけじゃない。心配でたまらない私たちは、病院の廊下の奥を見ているか、時計を見ているしかなかった。

 ロビーには、わたしの他には、道具係の夏鈴と、舞監助手の里沙しか残っていなかった。

 あまり大勢の部員がロビーにわだかまっていては、病院の迷惑になると、あとから駆けつけた教頭先生に諭されて、しぶしぶ病院の外に出た。
 外に出た何人かは、そのままエントランスのアプローチあたりから中の様子を窺っている気配。
 ついさっきも部長の峰岸さんからメールが入ったところだ。
 わたしと里沙はソファーに腰掛けていたけど、夏鈴は古い自販機横の腰掛けに小さくなっていた……いっしょに道具を運んでいたので責任を感じているんだ。


 時計が八時を指して間もなく、廊下の向こうから、潤香先輩のお母さんとマリ先生、教頭先生がやってきた。


「なんだ、まだいたのか」

 バーコードの教頭先生の言葉はシカトする。

「潤香先輩、どうなんですか?」

 マリ先生は許可を得るように教頭先生とお母さんに目を向けて、それから答えてくれた。

「大丈夫、意識も戻ったし、MRIで検査しても異常なしよ」
「ありがとう、潤香は、父親に似て石頭だから。それに貴崎先生の処置も良かったって、ここの先生も。あの子ったら、意識が戻ったら……ね、先生」

 ハンカチで涙を拭うお母さん。

「なにか言ったんですか、先輩?」
「わたしが、慌てて階段踏み外したんです。夏鈴ちゃんのせいじゃありません……て」
「ホホ、それでね……ああ、思い出してもおかしくって!」
「え……なにが……ですか?」
「あの子ったら、お医者さまの胸ぐらつかんで、『コンクールには出られるんでしょうね!?』って。これも父親譲り。今、うちの主人に電話したら大笑いしてたわ」
「ま、今夜と明日いっぱいは様子を見るために入院だけどね」

「よ、よかった……」

 里沙がつぶやいた。

「大丈夫よ、怪我には慣れっこの子だから」

 お母さんは、里沙に安堵の顔を向ける。

「ですね、今年の春だって自分で怪我をねじ伏せた感じだったし。あ、今度は夏鈴のミサンガのお陰だって」

 マリ先生は、ちぎれかけたミサンガを見せてくれた。

 ウワーーン(;´༎ຶ۝༎ຶ`)!!

 夏鈴が爆発した。

 夏鈴の爆泣に驚いたように、自販機がブルンと身震いし、いかれかけたコップレッサーを動かしはじめた。それに驚いて、夏鈴は一瞬泣きやんだが、すぐに、自販機とのデュオになり、みんなはクスクスと笑い出した。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・100『何かあったんだ!』

2022-10-20 08:00:34 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

100『何かあったんだ!オメガ  





 マッジさんに来てもらえないかしら。

 一通りマッジさんのいきさつを説明すると、木田さんは胸の前で小さく手を合わせた。

 四月の下旬に、学校で『ミサイル着弾を想定した避難訓練』が行われ、木田さんは負傷してしまった。

 その木田さんを助けたことで、木田さんのお祖父さんがお礼に来られた。

 木田さんのお祖父さんは徳川家友と言う名前で、盾府徳川家の当主。

 世が世ならば侯爵家、貴族院の議長でもやっていようかというようなエスタブリッシュメントだ。

 木田さんは、その嫡孫、すなわち盾府徳川家のお姫様。未成年のうちは母方の姓を名乗っているが、ゆくゆくは盾府徳川家を相続するお姫様なんだそうだ。

 そのお姫様が、誰も居ない生徒会室とはいえ、困った表情で手を合わせているんだ。正面から向き合わざるを得ない。

「父の代から勤めていてくれていたメイドが辞めてしまったの……」

 学校に通う都合で、木田さんは別宅に住んでいる。

 身の回りの世話は、住み込みと通いのメイドさんがやっているそうなのだが、住み込みのメイドさんが身体を壊して辞めてしまったのだ。

 低血圧の木田さんは、遅刻せずに起きるのが精いっぱいで、自分の身の回りのことも不自由になってきているらしい。

「通いのメイドも居るのだから、なんとかなると思っていたんだけど、ちょっともう限界で……それで、こないだマッジさんがお弁当届けに来たじゃない。窓から一部始終を見て、こんなメイドさんに来てもらえればと、そう思ったの」

「分かった。マッジさんも来日早々勤め先のお宅が火事になって困っていたんだ、結論は話してみなきゃ分からないけど、双方にいい話なんじゃないかな」

「ほんと?」

「おそらく」

「嬉しい、相談してよかったあ!」

 木田さんはバネ仕掛けみたいにジャンプして俺の手を握った。

 フワッとシャンプーだかのいい匂いがして、クラクラした。

「だ、だいじょうぶ?」

「ドンマイドンマイ」

 いそいで取り繕う。こういう時に、俺のω顔は人に安心を与える。

 

「まことにありがとうございました」

 

 マッジさんが慇懃に頭を下げる。こういう動作にもリアルメイドの気品が漂う。

 盾府徳川家本宅に挨拶に上がった帰りだ。

 本宅は江戸時代の上屋敷で、終戦後手放したのをお祖父さんの事業拡大に伴って買い戻したものだ。

 面積は半分になってしまったらしいが、それでも都心の小学校程はある。

「これなら、マッジさんが言ったように、マッジさん一人でも来れたね」

「いいえ、右も左も分からない東京です、付き添ってくださって助かりました」

 謙遜なんだろうけど、マッジさんは行き届いた人だ。

 マッジさーーん!

 すでに遠くなった門の方から木田さんの声がした。

「おじい様もとても喜んでくださったわ! わたしったら舞い上がっちゃって、お話もできなくて、よかったら別宅の方見てもらえないかしら?」

「あ、それは、こちらこそ」

「じゃ、決まりね。妻鹿君も来てくれるでしょ?」

 マッジさんが一瞬俺の顔を見る――乙女心です、いらしてください――と言っている。

 こういうのは苦手なんだけど、マッジさんの思うことなら間違いはないだろうと思ってしまうから仕方がない。

「うん、行かせてもら……」

 そこまで行った時にスマホが鳴った。画面はシグマからの着信を知らせていた。

「おう、俺だけど……」

 気楽に出た電話だったが、シグマの声はこわばっていた。

『すみません、い、今から会えませんか……いえ、会って欲しいんです……神社で待ってます』

 シグマの、こんな声は初めてだ。

 どんなフラグかは分からないが、放置していい声じゃない。

「分かった、鳥居の前な、すぐに行く!」

 何かあったんだ! 二人に挨拶もせずに駆けだした。

 表通りに飛び出したところで、視野の片隅に大きな影が膨らんだ。

 それが流行りのSUV(スポーツ用多目的車)だと気が付いた瞬間、俺の体は宙を飛んだ。

 梅雨にしては青い空だ……そう思って、意識が切れてしまった。


※ オメガとシグマ第一期終わり  第二期に続きます

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・99『ほどではないが』

2022-10-19 06:08:40 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

99『ほどではないがオメガ  





 やっぱり一年生は子どもだ。

 マッジさんが弁当を届けに来て以来、小菊は大人気だ。

 昨日は学校帰り、暇な生徒たちに追いかけられていた。

 小菊はパート帰りのお袋と出くわし、助けを求めたら、今度は「キャー、小菊と雄一を生んだ奇跡の母よ!」と、お袋が追いかけられるハメになった。

「あーおもしろかった!」

 お袋は、娘と一緒にご町内の裏や表を逃げ回り、四十数年ぶりの鬼ごっこに息を弾ませて帰って来た。
 
 俺は遠巻きに視線は感じるが、パパラッチ化した生徒に追いかけ回されることは、ほとんどなかった。

「三年生が落ち着いているというよりも、お前には、もう一つ華がないんだろうなあ」

 いつもの学食で、スペメン(全部載せラーメン)を啜りながらノリスケが言う。

 増田さんは(小菊ほどではないが)集まる視線に怯えて別の席で食ってる。

「華なんかいらねーよ、俺は普通がいいんだ」

「確かに小菊ちゃんは、押し出しのある可愛さで、クラスじゃ担任の先生も頼りにするしっかり者、その上売り出し中のラノベ作家だ」

「なんか、その言い回しは、俺には取り柄が無いと言っているように聞こえるんだけど」

「だって、普通がいいんだろ?」

「そうだけど、おまえの言い回しは微妙に違う」

「アハハ、それは俺の友情だ!」

「食いながら笑うな! ほら、チャーシューのカケラが飛ぶじゃねーか!」

「あ、すまんすまん」

 ノリスケは身を乗り出したと思うと、俺のほっぺたに飛んだチャ-シューのカケラを舐めとった。

 キャーーー!

 隣のテーブルの陰に隠れていたパパラッチ女子が悲鳴を上げて逃げていく。

「これで、オメガを追いかけてくる奴はいなくなった」

 いいんだけども、ちょっと寂しくないこともない。離れた席で俯いてしまった増田さんも可哀そうだ。

 学食を出ると、校舎の二階から木田さんが手を振っているのに気付いた。

 目が合うとポケットに覗いたスマホを指さした。

 なるほど、人目を避けスマホでコミニケーションを計りたいらしい。

―― 相談したいことがあるので生徒会室まで来てもらえませんか? ――

―― 了解 ――

 ノリスケと別れて生徒会室を目指した。

 生徒会室には木田さんが一人いるきりだった。

 

「代議員会やってるから、昼休みは誰も居ないの。外で声かけたら、ちょっと目立つでしょ」

 やっぱり、木田さんが引いてしまうほどには注目を集めているようだ。

 で、気づいた。木田さん、ちょっとやつれてないか?

 いつもの木田さんらしくなく、横っちょの毛が跳ねてアホ毛っぽくなっている。制服の着こなしも、どこか微妙。ブラウスの打ち合わせが右に寄ったりしている。

「寝癖直すヒマなくって……」

 表情を読まれたのか、木田さんはササッと手櫛をかける。櫛とかも持ってない様子だ。

「あの……妻鹿君ちにメイドさんいるわよね?」

「え……?」

 ちょっと身構えてしまう俺だった……。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・98『ヤバイ!』

2022-10-18 06:30:16 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

98『ヤバイ!』小菊  





 九州と山口県が梅雨入りした。

 東京の梅雨入りは四五日は先だろうに、神楽坂のあたしは一足早く梅雨入りだ。

 なんたって腐れ童貞と兄妹だと言うことが学校中に知れ渡ってしまったんだから!

 マッジがお弁当を持ってきた。

 

 学食のトラブルをいち早く知って、お弁当を用意して届けてくるのはアッパレよ。

 四時間目を十分だけカットして買いに行けと言う学校も無茶だわよ。

 だからってメイド服でやってくる!? 

 校舎のどこからでも丸見えの大蘇鉄の前で待ってる!?

「いいか、マッジさんは格安で下宿する代わりにメイドの仕事をしてくれているんだ。大蘇鉄の前に居たのは、玄関が掃除中で、教頭先生が『蘇鉄の下なら陽が当たりませんよ』と言ったから、マッジさんは悪くない! 兄妹だってことが大っぴらになるけど、バレるのは時間の問題だっただろうが、な、お前も分かれよ、な、分かるだろ?」
 
 腐れ童貞は、小学生に言うみたいにウダウダ説明。でも、説明されても気持ちは収まらないよ!

「うすうす分かっていたけど、二人がホントに兄妹だったなんて、とってもアメージングじゃない!」

 増田さんが手放しで、いつもの彼女では考えられないくらいクリアーに叫ぶ。

 お蔭で「同居してるイトコなの!」という最後の設定も言えなくなってしまった。

 おまけに金髪美人のメイドまで居るというので、あたしの家そのものへの関心まで高まって来た。

「どういうつもりよ、あんたたち!?」

 学校帰りの交差点、急ぎ足も虚しく赤信号にひっかかって、とうとう叫んでしまった。

 電柱や自販機の見え隠れに十人ほどの生徒が付けてきているのだ。

 …………………………。

 あたしの叫び声に応える者はいない。追跡を諦める者もいない。

 青信号までは間があるけど、エイヤ! 車の間隙を縫って横断歩道を駆ける。

 角を曲がってコンビニの前で立ち止まる。いきなり走ったのでわき腹が痛い、ジュースでも買おうかと店内に目を向けると、ここにもうちの生徒たち。
 
 ヤバイ!

 再び駆け出す。

 ここらへんは、子どものころからの遊び場、でもって神楽坂というのは通り一本中に入るとラビリンス。

 三回角を曲がった路地で息をつく。

 ハーハー

 すると、パート帰りのお母さんが通りを歩いているのが見える。

「お、お母さ~ん!」

 こんなにお母さんを懐かしく感じたのは保育所以来だ。

「あ、どうしたの小菊!?」

 いきなり路地から飛び出してきたあたしにビックリのお母さん。

「もう、あたしイヤダ!」

 お母さんの胸にすがり付いていると、また気配!

「あ、あれ、妻鹿さんのお母さんだ!」

「キャー、小菊と雄一を生んだ奇跡の母よ!」

 え、ええ!?

 いきなりのことで、わけもわからず立ちつくすお母さん。

 申し訳ないけど、お母さんをスケープゴートにして逃げる。

 このまま帰ったんじゃ、家に殺到されてしまう!

 あたしはご町内をグルッと大回りするハメになった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・97『メイド服のマッジさん!』

2022-10-17 06:11:41 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

97『メイド服のマッジさん!オメガ 

 



 某国のミサイルが落ちてくるのは宝くじに当たる確率ぐらいだと思い始めている。

 まあ、危機感というものは長続きしない。

 今日もミサイルは落ちてこないが、そのミサイル的確率の事故が学校で起こっちまった!


 なんと、学食でガスと電気のトラブルが重なったのだ。

 

 うちは都立高校の中でも指折りの古い学校なので、耐震補強とかバリアフリーとかは進んでいるんだけども、ライフライン設備はすごく老朽化している。

 校内放送で教頭先生がグダグダ説明したけど、要は、本日食堂は使えないということだ。

 おまけに、学食にパンを運んでいた車が事故で大破という事態が重なった。

 つまり、自販機のジュース以外、校内では手に入らなくなったのだ(;'∀')。

―― 四時間目を十分短縮します。その十分間で、弁当を持たない生徒は校外で調達してください ――

 学校の対策は無茶だ。

 十分で行って帰ってこられるのは、学校の半径二百メートル以内だ。

 昼休みの半分を買い出しに当てるとしても、半径四百メートル。

 利用できるコンビニは三軒、パン屋が二軒。この五軒で五百人はいるであろう学食生徒の昼飯をまかなうことは不可能だ。

「いっそ、午後の授業をカットすれば、問題解決になるんじゃないっすか?」

 真面目に提案したんだけど、教壇のヨッチャンは完全に無視だ。

 どうも俺のω顔では、真面目な発言とは受け止めてもらえない。

「……脱走だな」

 ノリスケが呟く。

 買い出しに出たまま帰らないという意味なのは、付き合いが古いので以心伝心。

 無言のうちにチョイ悪男子を決意したところで、校内放送がかかった。

―― 一年三組の妻鹿小菊さん、三年三組の妻鹿雄一君、至急玄関まで来なさい ――

 さっきの教頭先生が俺と小菊をまとめて呼び出しているのだ。

 何事かと駆けつけてブッタマゲタ!

 

 なんと、マッジさんが濃紺のワンピースに胸当てエプロンという真正メイド服姿で立っていた!

 

 それも玄関車寄せの真ん前、大蘇鉄のところにだ!

 いかにも、メイドさんが御主人の使いでやってきて、うやうやしく控えています……って感じ!

 ここは、本館のどこの教室からでも見える! 見えてしまう!

 俺が彼女のところに駆け寄った時には、校舎中の窓からの視線が突き刺さってきやがった。

 もし、視線を可視化したとしたら、俺は体中に矢が突き刺さった弁慶の立ち往生! マッジさんは、体中から奇跡の後光を発しているマリア様!

 そりゃそうだろう、アキバのメイドじゃなくて金髪で青い目の真正メイドさんなんだ、注目を集めないはずはねえ!

「お呼びたてして申し訳ありません、学校食堂の事故を知りましたので、お弁当をお持ちしました」

 マッジさんは二つのランチボックスを持っていた。

「え、あ、いや、どうもすみません(#'∀'#)」

 大きい方を受け取ると、マッジさんは俺の肩越しに玄関の方に頭を下げる。

 ランチボックス持ったまま首を捻じ曲げると、怖い顔をして玄関から出ようとしない小菊が目に入った。

 ちょっとマズイよな……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・96『微妙な気持ち』

2022-10-16 06:20:13 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

96『微妙な気持ち小菊 





 我が家に外人さんがやって来た(;゚Д゚)。

 それも十八歳のブロンドの女の子……第一印象は女の人なんだけど、自己紹介で十八と言われてぶっ飛んだ。

 今どき外人の女の子なんて珍しくないんだけど、受ける印象がひどく大人びている、おまけに日本語ペラペラ。

「……ということで、しばらくお預かりすることになった、みんなよろしくな」

 お祖父ちゃんの紹介が終わると、青い瞳を春の海のような穏やかさにして口を開いた。

「マッジ・ヘプバーンと申します、急な話でご迷惑をおかけするかもしれませんが、勤め先が見つかるまでの間ですので、なにぶんよろしくお願いいたします」

 そうなんだ、マッジさんは急に決まったお務めの為に、松ネエと同じ便で東京にやって来た。

 羽田からは、自分の勤め先に行く予定だったんだけど、勤め先が火事で焼けてしまうという不運。

 とりあえず落ち着く場所が必要ということで、松ネエが電話してきてお祖父ちゃんが二つ返事で引き受けた。

「当たり前なら、いったんハワイに帰るところなんですが、不退転の決意でやってきたものですから無理を申しました」

「いやいや、是非にと言ったのはわたしの方だ。お節介なんだが、若い人の決意は応援したくてね」

 お祖父ちゃんが頼もしそうに言う。あたしが突破新人賞を獲った時も似たような顔をしていたけど微妙に違う。

 お祖父ちゃんが三十歳も若ければ「惚れたか?」と勘違いする。曰く言い難しなんだけど、言葉にしたら「頼もしそう」ということになる……しておく。

「部屋は、小松の隣の部屋を使ってもらう」

 うちは無駄に部屋が多い、大昔置屋をやっていた名残なんだけどね。

 あたしは、微妙な気持ちになった。

「あ、えと……あ、
あそこは、あたしが使いたいんだけど(#゚Д゚#)!」

 

 みんなの視線が集まった。

 

「えと……本を書くじゃない、今の部屋は通りに面してて、ちょっとね」

「おまえ、そんなこと言ってなかったじゃねえか」

「うっさいわね! 考えてたけど言い出せなかったんじゃない」

「だけどなあ」

「うっさい、腐れ童貞!」

 

 実は兄貴が正しい。今の今まで部屋を代わろうとは思ってなかった、お祖父ちゃんがいきなり言うもんだから、反射的に出てしまった。

 

 うちは間数は多いけど、手入れや掃除をしないですぐに使える部屋は、そんなには無い。

「わたしが無理を言ってるんですから、パイン……小松さんと同じ部屋で結構です」

 うちに来るまでは、松ネエと、そういう話になっていたらしい。

「ようし、マッジさんには小菊の部屋を使ってもらおう。じゃ、今から引っ越しだ」

 お祖父ちゃんが宣告した。

 身から出た錆。

 

 夕べは遅くまでかかって引っ越し。とてもあたしとマッジさんだけではできないので、兄貴と松ネエも手伝ってくれる。一言も文句言わないで。

 悔しいけど、二人の方が大人だ。

 自己嫌悪で夕べは眠れなかった。

 今朝起きると、町内恒例のドブ掃除をやっている。うちは間口も広いので一家総出、マッジさんもTシャツに短パンという出で立ちで手伝っている。

 あ、つい寝過ごしちゃった……

 声が小さすぎたのか、誰も反応しない。

 急いで状況を判断、下水に撒く薬がまだのようなので「薬もらってくる!」と宣言して町会長さんちへ。

 それからは、例年通り、手を洗ったり着替えたりしてからみんなでスイカを頂く。

 そして、反省しながら、この文章を打ってんのよ。

 も、文句ある!?

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ・ヘプバーン      ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・95『ほうじ茶が冷めるまで』

2022-10-15 06:54:29 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

95『ほうじ茶が冷めるまで小松 





 和食ではラーメンとカレーライスが好きです。

 ほうじ茶をフーフー冷ましながら呟くようにマッジさん。

 ちょっぴり頬が染まっているのは、ほうじ茶の熱さのせいか照れているのか、よく分からない。


 今夜はハワイ旅行の最終日で、ミリーさんの家でパーティーだった。


 @ホームのメイドさんたちだけでなく、テニスでいっしょになったマッチョさんたちも加わって、賑やかで楽しいひと時だった。


 で、ゲストも帰り、後片付けが終わって、リビングでハワイ最後の夜を女五人で過ごしているところ。


 ミリーさんがほうじ茶を出してくれて、しみじみ頂いている。

「ラーメンとかカレーライスって和食?」

 チロルさんが素朴な質問をする。

「ええ、立派な和食ですよ。ラーメンは中国、カレーはインドだけれども、日本に入ってきて独特の進化を遂げて、もう中国人もインド人も日本独特の料理だと思ってますよ」

「へー、そうなんだ」

「横須賀にいたころにファンになったんです。ドブ板通りに美味しいお店があって」

「え、ドブ板知ってるんですか!?」

「はい、横須賀生まれですから」

「もなかも横須賀だよ! 諏訪公園の北側!」

「あ、丘の上に女学校が見えるところですね!」

 
 そう、もなかさんとマッジさんは同じ横須賀生まれと分かって賑やかになった。


 お父さんが軍人で十五歳まで日本で暮らしていた……というのは、あまりに上手い日本語なので「お生まれは?」と聞いて、初日(傷痕が痛んでオバマ先生に診てもらった)に教えてもらっていた。そこにもなかさんも横須賀だと分かって、突然みんなの距離が近くなった。

「あ、ドブ板って云えば……!」

「うんうん、だよねだよね!」

 ひとしきり、ドブ板のおもしろそうなお店の話になりかけるけど、他の者は横須賀を知らない。するとマッジさんは自然に話題を戻した。

「横須賀でも、一押しのソウルフードは、ラーメンとカレーですけど、もう日本人の国民食ですね」

「食のガラパゴス化なのかもしれないわね」

 もなかさんが納得しかける。

「少し……ちがうと思います……元のをヒントに……きっかけにして作られた別物だと、わたしは感じてます」

 ほうじ茶を持ち上げたが、まだ熱いのか、テーブルにもどした。その仕草が引きつける力があるのだから、マッジさんはタダモノじゃない。

「これも好物なんですけど、肉じゃがってあるじゃありませんか」

「男の胃袋つかむ必須アイテム!」

 アハハハ(^O^)

 チロルさんのツッコミに、みんなが笑う。

「あれって、元々はビーフシチューなんですよね。東郷平八郎提督がイギリスに留学した時に惚れこんで、日本風に作らせたのが始まりなんですって」

「「「へーそうなんだ」」」

「英国風メイドとアキバメイドの違いみたいなものかしら?」

 ミリーさんが、お寿司屋さんみたいな湯呑みを持って輪の中に入って来た。

「そうですね、良い例えだと思います」

「ビーフシチュー好きな人って100%肉じゃがも好きよね」

「ですよね、わたしもそうです」

「うちの母は両方得意料理です!」

「ハハ、主婦料理の定番だもんね」

「肉じゃがの方もやってみようとは思わない?」

「はい、勉強してみます。まだ主婦になる予定はありませんけど」

「それじゃ……」

 耳元で囁くミリーさん。マッジさんはまだ熱いのか、含んだお茶を慌てて呑み込んで、小さく「アッ」と言った。

 アハハハ( ´艸`)

 

 ミリーさんが笑って、それを潮にお茶会はお開きになった。

 

「あれって、マッジさんに縁談でも勧めたのかなあ」

 ベッドに入るとチロルさんが呟く。

「違うわよ、ミリーさん、@ホームで働かないかって謎を掛けたのよ」

「え、そうなの!?」

「あ、ちょっと希望的観測も入ってるかな?」

「フフ、なんだ」

「いい人だもの、マッジさん」

「マッジさん、日本に来るのかなあ……」

「どうだろ、頬染めてたし、もし来るとしても、学校とか終わった秋じゃない?」

「わたしは……」

「なに、パインさん?」

「あ、ううん、なんでも……フワ~( ̄O ̄) あ、ごめんなさい……」

「パインさん、お眠だ」

 女三人、喋り出したらきりが無いので、わたしのアクビをきっかけにチロルさんが部屋の照明を落とした。

 
 そして、そのあくる日、どんでん返しがあった。
 

「日本までごいっしょします」

 帰国の空港に、マッジさんはパスポートを持って現れたのだった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • マッジ            ミリーさんの知り合いの娘 天性のメイド資質
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •            

 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・94『三人ともぶっ飛んだ』

2022-10-14 06:38:03 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

94『三人ともぶっ飛んだ小松 





 マッジさんがいなければテニスは諦めていただろう。

 わたしたちに、マッチョ七人を相手に交渉する度胸は無い(^_^;)。

 で、その交渉の結果、仲良く一緒にプレイすることになった。

 

 正直――なんでよー!?――

 コートの向こうとこっちに分かれてプレイ開始!

 袖口からタトゥーが覗いて、身長は190はあろうかというマッチョが進み出てきてネット越しの握手。

 ガシガシ!

 ボクシングのグローブくらいの手で握手され、振動で景色がブレて、わたしのちっこい手は完全に呑み込まれる。

「『我々は初心者なんで、どうぞお手柔らかに』だそうです」

 マッジさんが同時通訳。

 通訳が終わると、マッチョは一瞬サングラスをとった。

 意外に甘いマスク……というか子供っぽいスマイルに、ちょっと拍子抜け。

 アメリカ人というのは一般的に歳より老けて見える。それが、この童顔はいったい?

「アメリカには、ベビーなんちゃらとか、なんちゃらキッドとか童顔の悪もいるって云うよ(,,꒪꒫꒪,,)」

 もなかさんが小声で忠告。

 で、ゲームを始めると「おちょくってんのか!?」というくらいにマッチョたちはヘタクソだった。

 サーブは確かに力があるけど、力任せのためか、ことごとくがファウル。

 Goddamn!(こんちくしょー!!)

 わたしにも分かる英語で悔しがるマッチョたち。ラブ:フィフーティーンになるとさすがにコントロールを意識してきた。

 カッポーーーン

 意識すると、今度は極端に球速が落ちて簡単に打ち返せる。

 打ち返したボールは三回に一回くらいしか返ってこない。ヒットしたボールも力任せなので、明後日の方向に飛んでいき、あっという間に勝ってしまった!

 童顔マッチョだけかと思ったら、他の六人もことごとくヘタクソマッチョ。

「やっぱりインターハイに出るような女子高生は違うなあ~……だそうです」

「「「イ、インターハイ? 女子高生?」」」

 三人ともぶっ飛んだ。

「そう紹介したんです、インターハイに出るための練習に来てるって」

「はあ……で、こちらの方々は?」

「サンフランシスコのお巡りさんたちです、休暇でハワイに来られてるんです。テニスはEスポーツではグランドスラム級だそうですよ」

「Eスポーツ?」

「……これですよ」

 コントローラーを持つ仕草でアキバでもお馴染みのテレビゲームだと分かった。

 プレイが終わって七人のマッチョさんたちと改めて挨拶。

 サングラスをとった七人は、みんな人のいい顔をしていた。

 一人童顔のマッチョさんはトム・クランシーというなり立てホヤホヤの19歳だと分かった。

 マッジさんはマッチョさんたちにも種明かし。

 オオ! アメージング!!

 わたしたちがアキバのメイドだと知ると、驚いたり喜んだり。

「実は、ホノルルにもメイド喫茶がオープンしたんですよ。彼女たちは、その指導にやってきたんです」

 マッジさんが微妙に誇張し、ランチを食べた後、みんなでハワイ@ホームに出向くことになった。

 マッジさんの凄さを認識したのでした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  


 
  

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・93『マッジさんと七人のマッチョ』

2022-10-13 06:33:56 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

93『マッジさんと七人のマッチョ小松 




 ほら、違うでしょ?

 座りなおしたミリーさんは二割増しフレンドリーになった。

 昨日、ミリーさんがオバマ先生を連れて見舞いに来てくださった。

 ニ十分ほどで居合わせたみんながフレンドリーになって、ベッドでひっくり返っているわたしを含め、とても充実した時間を過ごせた。

 それが、マッジさんの気配りからなんだと直感はしたものの、具体的にマッジさんがどうやったのかは分からない。

 それで、今朝も見舞ってくださったミリーさんに聞いてみたのだ。

「椅子を引いて座って頂く時に、ほんの少し近くして、方向もみんなが向き合うように微妙に変えるの。すると、座り直した時に……こうなるワケ」

「なるほど、それが自然にできちゃうわけですね」

「でも、みんなに同じことをやったら気づかれる。気づくととたんにぎこちなくなる」

「ですよね、不自然な圧を感じます」

「だから、お茶を出したりクッキーを出したりするときに……そうね、例えばもなかさんは、少し距離があっても手を出すから、このへん」

「ほんとだ、わたし自分から近づいて行ってる!」

「むろん、みんなに仲良くお喋りがしたいという気持ちがなくっちゃだめなんだけど。ま、そういう空気も読んで、自然に雰囲気が出来るように、ね」

「そういう気配りって、メイド喫茶のマニュアルじゃできませんよね」

 チロルさんが感動して、男みたいに腕を組んだ。

 メイドが人前で腕を組んではいけないんだけど、休憩室なんかでリラックスするとやってしまう。彼女の魅力は可愛いルックスの下に潜んだ男らしさなのかもしれない。

「テニスコートの準備が整いました」

 マッジさんが、テニスウェアーで現れて、みんなに告げた。

 今日は、わたしも回復。ホテルのテニスコートを借りてテニスをすることになっているのだ。

 わたしがこんなだから、マッジさんが手配をしてくれたんだ。

 マッジさん自身、ハイスクールでは地元のテニスクラブに所属していたので、コーチを兼ねた一日マネージャーをかって出てくれた。

「わたしはランチの予約をしてからまいりますので、みなさんお先にどうぞ、三番コートです」

「すみません、なにからなにまで」

「いいえ、こういうの好きですから」

 マッジさんと分かれてテニスコートに向かう。

「じゃ、楽しいテニスを」

 ミリーさんはお店があるので駐車場の方に消えて行った。

 あ、あれ~?

 三番コートには先客が居た。

 それもマッチョな男の人たちが七人も。
 
 七人とも短髪のサングラス、人種はまちまちだけど、チューインガムを噛んでいる口から漏れるのはネィティブな英語だ。

「すごいタトゥーだ……」

 チロルさんは、男たちのTシャツの下に隠れている刺青を目ざとく見つけた。

「ちょっとヤバイ感じ……」

 あたしたちはジワジワと後ずさって、テニスコートの入り口まで戻った。

「どうしたんですか?」

 ランチの予約を終わったマッジさんと出くわした。

「分かりました」

 事情を説明すると、マッジさんは、ツカツカと三番コートへ。

 Hey you guys!!(ちょっと、あんたたち!)

 最初の一言しか分からなかった。

 双方早口の英語(ゆっくりでも分からないけど)の上、ほとんど怒鳴っているし、わたしたちはビビってる。

「ヤバいわよ、通報した方が……」

「「う、うん」」

 通報と言いながら、三人の脚は動かない。

 マッジさんが、完全に囲まれてしまったときは、正直ちびりそうになった。

 一瞬、男たちがいっせいにわたしたちを睨んだ。

「「「ヒッ!」」」

 五歳の時にお化け屋敷に入って以来の悪寒が背中を走る。

 すると、男たちが早足で、わたしたちのところにやってくる。

 瞬間意識が飛んだかもしれない。

 気づくと、マッジさんが目の前に居た。

「ダブルブッキングのようです、あちらといっしょにフロントに掛け合ってきます」

 そう言うと、再びマッジさんは男たちに囲まれてホテルの本館に向かった。

 生きた心地もしなかったけど、結論は直ぐに出た。

「フロントのミスでした。あの人たち、いっしょにやろうって言ってますけど、どうしましょうか?」

 で、けっきょくマッチョ七人組と、テニスをする羽目になってしまった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・92『ぶり返す傷痕』

2022-10-12 06:53:36 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

92『ぶり返す傷痕』小松 




 もう少し早く声を掛けていたら……。

 マッジさんは、枕もとで凹んでいる。


 右わき腹の傷痕は、やっぱり二人には分かってしまった。

 @ホームのメイドは毎日自分たちで制服や身だしなみをチェックする。お客さんに夢を与える仕事だから当然のこと。ロッカールームで着替えたら、お互いの姿を数秒見て「よし!」と確認してからフロアに行くんだ。仕事中も、メイド服やエプロンにシミが付いていないか、乱れはないかとか無意識にチェックしている。それが、ハワイに来ても出てしまう。

 Tシャツ脱いだ瞬間に、二人の視線。ほんの0・1秒ほどなんだけど、元からわたしの傷を気にしているもなかさんが気が付いて、もなかさんの表情からチロルさんも息を呑んでしまった。

 もなかさんは――どうしよう――という気持ちで一杯になって表情まで引きつってきた。

――ドンマイ――

 口の形で、そう言って、水に飛び込んだ。

 瞬間迷った。知らないふりするか、なにか気の利いた言葉を掛けるか。逡巡したり、固まったりするのは一番NG。

 なにかエスプリの利いた一言が言えればよかったんだけど、ドンマイじゃ――気にしてる――って丸わかり。

 二人だけじゃなくて、近くに居た水泳客も、わたしたちの表情から気づく人がいて、ちょっと困ってしまった。

 むろん、お行儀のいい水泳客ばかりだから――お気の毒に――というものばかりだったけど、どんな目で見られようと、もなかさんにはプレッシャーだ。

 おまけに、わたしは具合が悪くなった。

 海水に浸かったせいか、薄い水着のせいか、傷痕がつっぱらかり、右わき腹全体が痛み出したのだ。

 そのため、夕食も食べずにベッドでひっくり返り、マッジさんの世話になっているってわけ。

 マッジさんが二度目のため息をついたときにドアがノックされた。

 

「ミリーさんが来られたわよ」

 

 マッジさんの応対を待たずに入って来たのはチロルさん。そのチロルさんの次にもなかさんのエスコートでミリーさんと、引退したお相撲さんのような男の人が入って来た。

「ビックリしたわ、日本でのこと、何も知らなかったから……どう、おかげんは?」

「申し訳ありません、わたしが付いていながら」

 マッジさんの恐縮した肩に手を置いて慰めた後、引退したお相撲さんみたいな人を紹介するミリーさん。

「お医者様に来ていただいたの、わたしが五十年診ていただいているから太鼓判よ」

「五十年も!」

「わたしは二代目です、シバラク・オバマと言います」

「なんだか大統領みたいでしょ」

「わたしはシバラク、ぼくは共和党だしね、さ、脈から診ましょう……」

 毛むくじゃらの手にビビったけども、腕を掴んだ手は、とても優しかった。

「傷跡を見せてもらっていいですか?」

 男の先生に見せることよりも、女四人に見られる方が極まりが悪い。

「きれいに縫合してあります、ただ術後の日数がたっていないので、ちょっと無茶でしたね。水着になるのにドクターの許可は得ましたか?」

「術後は一回行ったきりで、そのあとは行ってないんです」

「それは、またどうして?」

「じ、じつは……」

 わたしは、薄情な女医さんのことをまくしたてた。

「アメリカなら訴訟になりますね、ま、そのままほったらかしにした貴女も豪傑ですけどね」

「わたし、日本に帰れますでしょうか……?」

 凹んでいるマッジさんともなかさんを元気づけるために、おどけて聞いてみた。

「こんなチャーミングなメイドさんなら、そこのお友だちもいっしょに出国を阻止したいところですけどね」

「オバマさんは、うちのお店の常連さんなのよ」

「@ホームはスバらしいですよ、とってもファンタジーです。わたしも、後継ぎが出来たら妖精さんになりたいですね」

 妖精さん? 瞬間戸惑ったけど、メイド喫茶のスタッフ(妖精さんと呼ぶ)のことだと思い至って笑わせてもらった。

 気が付いたら、わたしのベッドを中心にして輪が出来ていた。

 わたしに人望があってとか、みんなが気を遣ってというんじゃない、気が付いたら部屋のスツールや椅子がそうなっていて、みんなで仲良くお茶会になっていたのだ。

 オバマ先生が帰ってから気が付いた。

 お茶を出すタイミングとテーブルの移動、さりげなく輪になるようにマッジさんが誘導していたんだ。

 マッジさん……なかなかの人だ。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・91『ワイキキビーチだ!』

2022-10-11 07:12:06 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

91『ワイキキビーチだ!小松 




 同じ27度でも、こんなに違うんだ。

 ビーチまでの道を歩きながら思う。

 道と言っても芝生の緩い坂を、ほんの数十秒なんだけどね。

 ホノルルのワイキキビーチは、とても爽やか。

 ホテルのドアを出て直ぐにワイキキビーチ。

「ドアツードア!」

「ビーチにドアは無いわよ( ´∀` )」

「スープの冷めない距離!」

「結婚願望?」

「ちが~う。じゃあ、ドアツービーチ!」

「うわあ、気持ちいい~♪」

 チロルさんもなかさんとビーチの近さでじゃれてるうちに、波は足を洗った。

 昨日は、同じ27度のアキバを歩いていた。

 駅から@ホームの往復だけなんだけども、五分足らずの道行で汗みずくになった。

 それが、このワイキキビーチでは水着の上から厚めのTシャツを着ていても、お肌はサラサラだ。

 やっぱ湿度が違うんだろうか。

 ビーチはカラッとしているけど、わたしの心は、少し湿度が高い。

 水着は着たものの、Tシャツを脱ぐことにためらいがある。

 右のわき腹には、まだ初々しい傷跡があるんだ。

 ほら、連休の狭間、秋葉原駅でもなかさんがストーカーに襲われ、助けに入ったら刺されてしまった、あの傷。

 水着にならないのが順当なんだろうけど、それじゃもなかさんが気にするだろう。

 ワンピースにすれば、傷跡も隠れるし、ビーチにまで来ながら水に浸からないという不細工なことをしなくても済む。

「やっぱ、ワイキキビーチならビキニだよね!」

「うん、オソロにしよう!」

 そう誓い合ったのは、ミリーさんに招待されてハワイに訪れた先月のことだ。で、一応はオソロのビキニは持ってきたんだけどね、いざビキニを着たら抵抗ありまくり。

 パインさん

 躊躇していると、わたしを源氏名で呼ぶ声がした。

「あ、マッジさん」

 ミリーさんから、わたしたちの世話を頼まれているマッジ・ヘプバーンさんだ。

 ほら、ミリーさんの家でパーティーをやったとき、人数が13人になることを避けるために呼ばれた人。

 パーティーじゃ目立たない人で、今回お世話していただくことになって、到着した時に流ちょうな日本語で挨拶されたのでビックリした。

「パインさん、気にしてらっしゃるんじゃないですか?」

 そう言って、マッジさんは自分のわき腹をさすった。

「え、あ、えと……」

 ビックリした。なんでマッジさんが知っているんだ!?

「レンタルならワンピースのがあります」

「でも……」

「ジュースがこぼれて着替えるというアクシデントはどうでしょう?」

「あ……」

 うまいことを考えるもんだと思った。で、ビーチ突撃の寸前にレンタルの水着に着替えた。白地にパイナップルの柄を散らした、いかにも私向けのワンピース。

 二人ともー、早くおいでよ!

 チロルさんが手招きしている。

「うん、いま行く!」

 躊躇したら不自然。

 Tシャツを脱ぎながら二人のいる波打ち際へ。

 二人の目が、瞬間だけど傷跡のあるところに来る。その瞬間の半分くらいの間、もなかさんの表情が曇る。

―― ああ ――

 水着で隠れてるんだけど、傷のある所はパイナップルの柄から外れていて、気にしている二人には、水に濡れたら透けて見えるのかもしれない。

「さ、いっぱい泳ぐぞーーー!」

「「オーーー!」」

 三人の声が揃って、わたしたちのバケーションが始まった。

 最初はショックでも、わたしが元気にしていればいい話なんだもんね!
 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・90『アキバの青空』

2022-10-10 06:43:15 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

90『アキバの青空』オメガ 




 アキバの青空は格別だ。

 ビルやJRの高架に囲まれ、中央通などを除いて道幅が狭くて、アキバの空はどこも四角く切り取られ、学校のグラウンドから見上げる空の半分も見えない。

 そんな空でも、しっかり五月晴れになっていると、シャレじゃないけど晴々して深呼吸なんかやってみたくなる。

「創立記念日だからですよ!」

 そうなんだ、シグマの言う通り、今日は学校の創立記念日なんだ。

 増田さんは、伯父さんの葬儀が終わって昨日帰って来た。

 本来なら――サブカル研の親睦会を兼ねて、アキバにゲームを探しにいく!――というアイデアは一週遅れるはずだったんだが、運よく創立記念日の月曜日。俺たちは連れ立ってアキバにやって来たのだ。

「フーーー、あんなに安いとは思いませんでした!」

 ラジ館・ソフマップ・アニメートと回ったところで、増田さんはため息をついた。

「そうよね、10円なんてのもあるんだもんね」

 コンシューマー化されたゲームを買うのが目的だったが、天下のアキバだ、いろんなものが目につく。

 シグマや風信子が増田さんの気をひいている間に、俺とノリスケは格安エロゲを仕入れることを忘れなかった。

 むろん、第一目的のコンシューマー化されたゲームも仕入れた。

 懐かしの『ツーハート』や『この青空に』を最初に買った。あらかじめネットで検索してあったので発見は早い。

 でも「お、こんなのもある!」的な発見の連続だ。

「ラノベって、たいがいゲームになってるんですね!」

 あまりアキバに足を運ばない増田さんは、すごく新鮮なようで500円前後で買えるレトロゲームに目を輝かせている。

「大げさかと思ったけど、リュックにして正解だったわね」

 何十本も買ったわけではないけど、エロゲというのはパッケージがデカい。初版限定品なんかだとオマケが一杯ついていて特大の弁当箱かと思うくらいの大きさだ。むろんコンシューマー化されたゲームにも、そういうのがあって、終戦直後の買い出しかというくらいのリュックでないと間に合わない。

「リュックが満杯にならないうちに飯にしよう!」

「それなら@ホームだ!」

「え、あの有名なメイド喫茶ですか!?」

 アキバに行くと言ったら、松ネエがウェルカムチケットをくれたのだ。ドリンクサービス、ランチ10%引きだ。

 増田さんが喜んでくれたのが嬉しい。

「「「「「「「「お帰りなさいませ、ご主人様、お嬢様(^^♪」」」」」」」」

 メイドさんたちが一斉の御挨拶で向かえてくれる。

「フワ~、こ、これがリアルメイドさんなんですね~(♡o♡)!!」

 増田さんは胸の前で手を組み、瞳を♡にしアニメのように感激した。

「ハハハ、ほんとうに嬉しそうだね」

「はい、地球屋でバロンを見つけた時みたいです!」

 えと、『耳をすませば』のイベントなんだろうけど、きっちり観ていない俺には分からない。

「ハハ、空に飛んでいってしまいそうだな」

 ノリスケは増田さんの頭を撫で、シグマも風信子もニコニコ。

 やがて、ランチが終わって、サービスのドリンクが運ばれてきたときに、ショータイムになった。

「「「ラッキー!」」」

 混み具合によっては割愛すると聞いていたので、俺とノリスケとシグマはガッツポーズ。

「みなさん可愛いですねえ~~~~」

「真ん中の三人、チロルさん、もなかさん、パインさんて言って、お店のベスト3なんだわよ」

「迫力ね~」

「めったに揃わないんだぜ」

 揃った理由は知っている。あの三人のメイドさんは明日からハワイの@ホームに行くんだ。

 この海外展開のきっかけを作ったのはシグマなんだけど、自慢する様子が無い。増田さんと二人頬を染めてニコニコしている。本人も気にしているΣ口だけど、嬉しいときのΣ口だ。近ごろは違いがはっきり分かるようになってきた。俺が慣れてきたのか、本人の表情が豊かになってきたのか。

「ゆうくん、顔が赤いぞお」

 風信子が不意を突く。油断のならない幼なじみだ。

 こ、こら、俺とシグマの顔を交互に見るな(#°д°#)!

「メイドさんのコスプレもいいですね!」

 @ホームを出ると、増田さんはすっかりメイドファンになってしまった。

「じゃ、これからジャンク通りに行くぞ!」

 ノリスケを先頭に中央通を横断した。

 中央通りと交わる蔵前橋通りからAKIBAカルチャーズZONEまで伸びる裏道、通称「ジャンク通り」と呼ばれるアキバ中のアキバだ。

 パソコンパーツに限らず、いろんなジャンク品が並んでいる。

 子どものオモチャ箱とオッサンの道具箱をいっぺんにぶちまけたような、オタクの通りだ。

「あれ、増田さん?」

 CAFÉ EURAでアイスクリームの列に並んだところで、増田さんが遅れていることに気づいた。

「あ、あそこ」

 増田さんは、一つ向こうの十字路でしきりに写真を撮っている。

「増田さ~ん、順番周って来るよ~!」

 シグマが叫ぶと、照れたような笑顔になって戻って来た。

「すみませ~ん、こういうディープなところって好きなんです。お祖父ちゃんも好きなんで写真送ってあげました!」

 目をカマボコ形にしてペロッと舌を出す増田さん。

 こんな表情もするんだと、横を見るとノリスケも嬉しそうに目を細めている。

 期せずして、エロゲヒロインの決めポーズ『テヘペロ』になってるんだが、あえて指摘はしない(^_^;)。

「それで、お祖父ちゃんから、いい情報を仕入れたんです!」

「え、なになに!?」

 アイスを手に手に、増田さんの案内で、さらにディープなアキバに足を伸ばす俺たちだった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 



 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・89『増田さんの忌引き』

2022-10-09 06:27:15 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

89『増田さんの忌引きオメガ 





 昨日の祝賀会で食べ過ぎてしまった。

 ほら、小菊の突破新人賞受賞祝賀会。

 うちのご近所は、なにか祝い事があると自然に寄り集まる。

 下町の義理堅さとか人情とか言っているけど、要は祝い事にかこつけて一杯やりたいというのが本音。

 でも、そういうの、俺は嫌いじゃない。

 高校生になっても、ご近所の人たちと気楽に付き合えるというのは珍しいことで、いいことだと思う。

 要は、俺も好きなんだ。

 子どもたちや呑めない人のために、酒のさかなも美味しいものが多いしな。祖父ちゃんが作るだけじゃなくて、ご近所さんも、なんだかだと持ってくるしな。ひとが美味しいものを食って、幸せそうになってるっていうのは、いいもんだ。まして、昔から付き合いのあるご近所さまならなおさらだ。

 で、食べ過ぎて、トイレに籠っている。

 でまあ、いつもより時間をかけて用を足し、すっきりした腹を摩りながらトイレを出る。

「ムッ……消臭スプレーしときなさいよね!」

 トイレを出たところで小菊が鼻をつまんで立っている。

「ドアの真ん前に立ってるお前が悪い……なんだ、順番待ってたんじゃないのか?」

 小菊はトイレには入らず、鼻をつまんだまま、俺の後を付いてくる。

「プハーー! 窒息するとこだった」

「おまえ、ずっと息停めてたのかよ!」

「聞きたいことがあんのよ」

「なんだよ?」

「お葬式で休んだら欠席扱いにはならないんだよね?」

「え、葬式ができたのか?」

 

 葬式は増田さんだった。

 

 伯父さんが亡くなったので休まなければならないんだが欠席になることを気にして電話をしてきたようだ。

 伯父さんなら三日間の忌引きが認められ、その間は欠席にはならない。そう教えてやると、小菊はすぐにスマホで連絡をした。

「喜んでた、高校三年間皆勤を目指してるんだって!」

 聞かれもしないのに教えてくれる小菊。

 ここんとこ、増田さんは俺たちと一緒に居ることが多く、入学以来の友だちである小菊は少し寂しかったようだ。

 突破文庫新人賞を獲っても、やっぱ、根は十五歳の女子高生だ。そう思うと、俺もホッとする。

 そうだ!

 ホッとしたところで思い立った。

「……というわけで、サブカル研でやるゲームを考えたいんだ」

 増田さんのいない部活で俺は提案した。

 増田さんはエロゲの耐性がほとんどゼロで、こないだはモニターの画面を見て気絶してしまった。

 シグマの機転で錯覚だったということになったが、あれ以来、部活でエロゲができなくなった。

「賛成です、この際、コンシューマー化されたゲームをやってみるのも勉強になると思います!」

 シグマが真っ先に賛成した。

「じゃ、サブカル研の親睦を兼ねてアキバに出向くか♪」

 ノリスケが腰を浮かせる。

「でも、やるんだったら増田さんが参加できる日を設定しなくっちゃね。ノリスケ、増田さんに聞いてみてよ」

 風信子が行動の指針を示す。

 たった五人の部活だけど、なんかいい感じになって来たと思う。

 さっそくノリスケがメールを打った……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・88『お店のオーラ』

2022-10-08 06:17:16 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

88『お店のオーラ』小菊 



 ほんの子どものころ、うちはパブをやっていた。

 それで、今でもお店はそのまま残っていて、応接間代わりにしたり、時には、あたしたちの遊び場や、たま~には勉強部屋になったりもする。

 それでも、家族やご近所の人たちが使っているだけでは、現役当時の賑わいはない。

 お店そのものは、お祖父ちゃんのこだわりで、昔のマンマ。

 マンマなんだけど、えと……たとえばね、お客さんが出入りしていると痕跡が残るのよね。シートのレザーのテカり具合、棚に納められたグラスや食器の佇まい、テーブルやカウンターの微かなシミや汚れや傷、そういうものが違うのよ。

 シミも汚れも傷も歳をとる。二十年前のそれと夕べ付いたそれでは、微妙に違う。

 なによりも空気が違う。

 空気清浄機があるとはいえ、営業していたころは、タバコやお酒のニオイ、香水とか加齢臭とか、シャンプーとかコロンとか、お客さんが運んできた外の空気のニオイとかがする。
 
 要するに、生きているお店のオーラ。閉店してからは、そのオーラが無い。

 え……?

 学校からまっすぐ帰り、お店のドア開けて戸惑った。

 お店に営業中のオーラがあるのだ。

「お祖父ちゃん、今日、人が集まったりした?」

「え、そうかい」

 ……お祖父ちゃんは、なんか隠してる。

 お店に大勢の人が集まるのは、町会とか神社のお祭りとかで、たまにあるんだけど、その感じでもない。

 でもまあ、大人の事情ということもあるんだろうから詮索はしない。

 二階の自分の部屋に戻ってエアコンを点ける。

 制服のブラウス脱いでハンガーにかける。ほんとは洗濯したいんだけど、昨日のを洗濯籠に入れるの忘れていたので致し方ない。

 着替えとタオル持ってお風呂場にシャワー浴びに行く。

 シャワ-浴びていると、お店ではない玄関の開く音がして、廊下をドタドタとお店の方に。

 足音で腐れ童貞だと知れる。

 それも、なにか重い荷物を持っている気配。

―― あいつ、なに企んでるんだ? ――

 先週までは、帰宅後のシャワーでシャンプーまではしなかったけど、ここんとこのムシムシでシャンプーすることにしている。

 シャワーの音に紛れて、微かにざわめきがしたような気がする。

 濡れた髪をガシガシ拭きながら廊下に出る。

「小菊、こっちこっち!」

 二階へ戻ろうとしたらお母さんに呼び止められる。

「え、なに?」
「いいからいいから!」

「なによ……」

 お店と廊下を隔てるドアを開ける。

 パパパパパーーーーン!!

「きゃ!」

 音と閃光に思わず目をつぶった。

 恐る恐る目を開けるとクラッカーの中身がチラホラ落ちていくところで……お店はご近所の人で一杯!

 祝 突破新人賞受賞! 妻鹿菊乃!

 横断幕が張られ、あちこちでビールの栓を抜く音、風信子ちゃんにエスコートされてお店の真ん中へ。

「よし、胴上げよ!」

 町会長夫人が黄色い声を上げて、あっという間に担がれる。

 あ、あ、ちょっと、胴上げもいいけど、オッサンたちは加わらないでよ、ちょっと、どこ触って……。

 その間に、腐れ童貞は、段ボールに入ったトツゲキ6月号を配り始めた。手伝っているのは、ノリスケ、シグマ先輩、それに増田さんまで!

 あ、ありがたいんだけど、これは……キャ!

 ドスン!

 胴上げに力が入りすぎ、天上にぶつかってしまった!

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

泣いてもωオメガ 笑ってもΣシグマ・87『パックをペチャンコにする』

2022-10-07 06:32:56 | 青春高校

泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

87『パックをペチャンコにする小菊 





 昼休みが長くなったような気がする。

 学食でランチを食べたあと、グラウンドを見下ろすベンチに腰掛けて、パックジュースをチビチビやるのが日課。

 どうかすると飲み切らないうちにチャイムが鳴っていた。

 それが、パックジュースを飲み切っても時間が余る。

 ジュルジュルルーーーーーーペコン

 飲み切ったパックジュースのストローをしつこく吸って、パックをペチャンコにする。

 お母さんは行儀が悪いというけど、子どものころからの癖でやめられない。

 

 癪だけど、腐れ童貞と同じ癖。

 

 ペチャンコにしたところでベンチ一つ向こうのゴミ箱に投げる。

 ストライクになると嬉しい。三回に一回は失敗し、立ち上がって拾い、ゴミ箱に捨てに行かなきゃならない。

 パックジュースは飲み切っておかないと、わずかに残ったジュースがペシっと飛んで制服やら顔に掛かったりする。

 でも、ペチャンコになるまで吸っとけばジュースの逆襲に遭うことはない。

「でも、かかってしまいますー(´;︵;`)」

 増田さんは、いつも失敗していた。失敗しても増田さんは、あたしの真似をした。

 ああ、そうだ。増田さんがいないから早く済んじゃうんだ。

 増田さんは、こともあろうにサブカル研に入ったらしい。

 腐れ童貞がシグマたちといっしょに作った同好会。サブカルチャーとか言いながらエロゲをやっていることはチラホラ噂にもなっている。

 ま、増田さんが自立して部活をやることはメデタイことなんだけど、あの増田さんが……という気持ちは拭えない。

 余った時間、あたしはこうしてグラウンドに居る生徒たちを見ている。

 観察と言うと大げさなんだけど、人を見ているのが好きだ。

 観光名所とか大自然の美しさにはそれほど興味は無い、景色がいいのにこしたことはないんだけど、人間が見えてこなければ値打ちは半分。

 グラウンドを見下ろす、この場所は屋上の次に眺めがいい。

 人を見るんだったら、渡り廊下からの中庭もいいんだけど、ちょっと閉鎖的な感じと、背後を人がゾロゾロ歩くのがね、ちょっとね。

 ヒューーーーー

 と音はしなかったけど、あたしの頭の上をペチャンコパックが飛んで、ベンチ一つ向こうのゴミ箱にストライクした。

 あたし以外に、あたしよりも遠くから飛ばす人がいるのでビックリした。

 アハハ、ビックリした?

 明るい声に首をひねると、ビバ先輩が涼宮ハルヒみたくスーパーマンポーズで立っている。

「和田先輩!?」

 わざと本名の方でビックリしておく。

「素直じゃないなあ、驚いた瞬間は瑠璃波美美波璃瑠だったはずだよ」

「一応敬意を払ったつもりです」

「そっか、ま、いいや」

 そう言うと、ビバ先輩は、あたしの横にどっかと座った。

「え、えと……」

「はい、これにサインしてくれる?」

 先輩は、あたしの顔の前に雑誌を差し出した。

 目の焦点を合わせてロゴを確認すると、トッパ6月号だ。

「本日発売のホヤホヤ、四時間目に抜け出して買ってきたばかり」

 そうなんだ、今日は突破新人賞のあたしの作品が6月号に掲載される日なんだ!

 でも、ビバ先輩は、わけは分からないけど、すでに『くたばれ腐れ童貞!』は読んでいる。

 それをわざわざ学校を抜け出してまで買ってきた。

 なんかある感じはしたけど、きちんと本を差し出されては、サインしないわけにはいかない。

「ども、ありがとうございます」

 サラサラとサインする。

「お~~書き慣れたサインだね~」

「アハハ、必死で練習しましたから(*´∀`*)」

 可愛いリアクションをしておく。

「よし、これで、わたしたちはライバルとして新しい局面に突入するのだよ、ひとひとまずまず」

 先輩は可愛くスキップしながら行ってしまった。

 あいかわらず目は笑っていなかった……。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
  • 百地美子 (シグマ)     高校二年
  • 妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
  • 妻鹿幸一           祖父
  • 妻鹿由紀夫          父
  • 鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
  • 風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
  • 柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
  • ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
  • ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
  • 木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
  • 増田汐(しほ)        小菊のクラスメート
  • ビバさん(和田友子)     高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
  •  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする