ライトノベルセレクト・285
[うっかりテレビを見ていたら……]
うっかりテレビを見ていたら、宝塚音楽学校の卒業式をやっていた。
仁志(ひとし)は、世間は卒業シーズンなんだと、しみじみ思った。
自分自身三日前に卒業式があったばかりで、それ以来のらろくらりでやってきた。
今日も起きたのは、昼のワイドショーの終わりごろだった。
「なにか、おもしろいテレビでもやってねえかな……」
そう思って新聞を裏返しにして、テレビの番組欄を見て愕然とした。
今日は、3月の2日……だって!?
あまり几帳面とも言えない高校生だったが、日付や曜日を間違えたことはない。
卒業式以来、あまりにノラクラしていたので、起きる時間も寝る時間もいいかげんになり、生まれて初めて日にちの感覚を忘れてしまったのだ。
「オレ、卒業したのは、二月の27日だったよな。で、今は3月の2日……いつの間に5日もたってしまったんだ!?」
首を回して、カレンダーを見て納得した。
「そうか、二月は28日までしかなかったんだ!」
仁志は立ち上がって絨毯の端に足を引っかけて倒れてしまった。はずみで親父が海外出張で買ってきたアフリカの神さまの置物を倒した。で、ほんの一時間ほど気を失ってしまった。
気を失う寸前に思い出した。
「こいつはな、死ぬか生きるかの状況に自分を追い込んで、願い事を叶えるんだ」
バカな話だと思ったが、瞬間仁志は思った。
――今が、生きるか死ぬかだ。お願いだ、日付を一日戻してくれ!――
気が付くと、テレビは3月1日の天気予報をやっていた。
「今なら間に合う」
仁志はパソコンを立ち上げ、ネット通販のウェブを開いた。におい紫羅蘭(においあらせいとう)が3月2日の誕生花であることを発見。直送便を選択して、三美の住所を入力した。
三美は、バレンタインに義理チョコをくれた。義理であってもチョコはチョコ、バレンタインのチョコである。
「オレ、必ずお返しすから。ホワイトデーなんかじゃなくて、三美の誕生日、3月2日に」
「え、どうして、あたしの誕生日……?」
「あ……一学期、三美オレの斜め前だったじゃん。それで保健の健康チェック表書いてる時に見えちゃったんだ」
「それで……?」
「あ……遅生まれだから、小さいとき苦労したんじゃないかなって、オ、オレも2月生まれだし」
「そうなんだ。ちょっと嬉しいな」
三美は、瞬間の笑顔がとってもいい。もちろん普段から可愛いけど。
そんな会話があって、三美のメルアドと住所をゲットした。ただし、誕生日に何か送らなければ記録した住所も消え、メルアドも着信拒否にされる。
三美も、義理チョコとはいえ、闇雲に配っているわけではない。それまでの関わりでなにかしら縁の有った男の子に配っている。たまたま、その一人が掴まらなかったので、教室を見渡した。で、思い出した。仁志は一度掃除当番を替わってくれたことがある。
「仁志、有り難いけどなんのつもり?」
姉の清美が、におい紫羅蘭の鉢を持ってリビングへやってきた。
「え、なんで姉ちゃんに!?」
におい紫羅蘭は、3月4日の朝に姉に届いた。
頭のタンコブを押えて、仁志は考えた。
確かに気は失ったけど、死ぬかもとは思ったけど、タンコブだけですんだ。アフリカの神さまの置物がニヤリと笑ったような気がした。
当然三美の住所も消えていたし、メールもブロックされていた。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ち:クララ ハイジを待ちながら:星に願いを:すみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』 (税込み799円=本体740円+税)
ラノベの形を借りた高校演劇入門書! 転校生が苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!
ネット通販ではアマゾン(完売)や楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。送料無料。送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
[うっかりテレビを見ていたら……]
うっかりテレビを見ていたら、宝塚音楽学校の卒業式をやっていた。
仁志(ひとし)は、世間は卒業シーズンなんだと、しみじみ思った。
自分自身三日前に卒業式があったばかりで、それ以来のらろくらりでやってきた。
今日も起きたのは、昼のワイドショーの終わりごろだった。
「なにか、おもしろいテレビでもやってねえかな……」
そう思って新聞を裏返しにして、テレビの番組欄を見て愕然とした。
今日は、3月の2日……だって!?
あまり几帳面とも言えない高校生だったが、日付や曜日を間違えたことはない。
卒業式以来、あまりにノラクラしていたので、起きる時間も寝る時間もいいかげんになり、生まれて初めて日にちの感覚を忘れてしまったのだ。
「オレ、卒業したのは、二月の27日だったよな。で、今は3月の2日……いつの間に5日もたってしまったんだ!?」
首を回して、カレンダーを見て納得した。
「そうか、二月は28日までしかなかったんだ!」
仁志は立ち上がって絨毯の端に足を引っかけて倒れてしまった。はずみで親父が海外出張で買ってきたアフリカの神さまの置物を倒した。で、ほんの一時間ほど気を失ってしまった。
気を失う寸前に思い出した。
「こいつはな、死ぬか生きるかの状況に自分を追い込んで、願い事を叶えるんだ」
バカな話だと思ったが、瞬間仁志は思った。
――今が、生きるか死ぬかだ。お願いだ、日付を一日戻してくれ!――
気が付くと、テレビは3月1日の天気予報をやっていた。
「今なら間に合う」
仁志はパソコンを立ち上げ、ネット通販のウェブを開いた。におい紫羅蘭(においあらせいとう)が3月2日の誕生花であることを発見。直送便を選択して、三美の住所を入力した。
三美は、バレンタインに義理チョコをくれた。義理であってもチョコはチョコ、バレンタインのチョコである。
「オレ、必ずお返しすから。ホワイトデーなんかじゃなくて、三美の誕生日、3月2日に」
「え、どうして、あたしの誕生日……?」
「あ……一学期、三美オレの斜め前だったじゃん。それで保健の健康チェック表書いてる時に見えちゃったんだ」
「それで……?」
「あ……遅生まれだから、小さいとき苦労したんじゃないかなって、オ、オレも2月生まれだし」
「そうなんだ。ちょっと嬉しいな」
三美は、瞬間の笑顔がとってもいい。もちろん普段から可愛いけど。
そんな会話があって、三美のメルアドと住所をゲットした。ただし、誕生日に何か送らなければ記録した住所も消え、メルアドも着信拒否にされる。
三美も、義理チョコとはいえ、闇雲に配っているわけではない。それまでの関わりでなにかしら縁の有った男の子に配っている。たまたま、その一人が掴まらなかったので、教室を見渡した。で、思い出した。仁志は一度掃除当番を替わってくれたことがある。
「仁志、有り難いけどなんのつもり?」
姉の清美が、におい紫羅蘭の鉢を持ってリビングへやってきた。
「え、なんで姉ちゃんに!?」
におい紫羅蘭は、3月4日の朝に姉に届いた。
頭のタンコブを押えて、仁志は考えた。
確かに気は失ったけど、死ぬかもとは思ったけど、タンコブだけですんだ。アフリカの神さまの置物がニヤリと笑ったような気がした。
当然三美の住所も消えていたし、メールもブロックされていた。
『ノラ バーチャルからの旅立ち』ノラ バーチャルからの旅立ち:クララ ハイジを待ちながら:星に願いを:すみれの花さくころの4編入り(税込1080円)
『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』 (税込み799円=本体740円+税)
ラノベの形を借りた高校演劇入門書! 転校生が苦難を乗り越えていっぱしの演劇部員になるまでをドラマにしました。店頭では売切れはじめています。ネット通販で少し残っています。タイトルをコピーして検索してください。また、星雲書房に直接注文していただくのが確実かと思います。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説と戯曲集!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型高校演劇入門ノベルシリーズと戯曲!
ネット通販ではアマゾン(完売)や楽天があります。青雲書房に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。送料無料。送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351