大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ムッチャンのイレギュラーマガジン《わたしのAKB48Komplex》

2015-03-19 15:53:43 | イレギュラーマガジン
ムッチャンのイレギュラーマガジン
《わたしのAKB48Komplex》



 AKB48コンプレックスと読みます。

 コンプレックスと言うと、日本ではイコール劣等感(劣等コンプレックス)と訳されることが多いのですが、心理学的には、それ以外に愛着、対抗心、嫌悪、葛藤などを含みます。
 わたしの場合は、ファン意識とは違った親近感を感じるという意味でコンプレックスという言葉を使っています。

 AKB48は2005年の12月8日に秋葉原で誕生というか開業しました。

 12月8日というのは歴史上、いろんなことが起こっている日で、大東亜戦争の太平洋戦争の部が始まった日であるほか、お釈迦様が悟りをひらいた日、ジョン・レノンが殺された日、ソ連が崩壊した日……いろんなことがあった特異日であります。

 わたしの親近感というのは、鬱病で休職中のころで、テレビもろくに見ず、外にもほとんど出ず、カウンセラーと精神科の医者としか会話が成立しなかった時期にあたります。そんな社会から自己隔離したような状態でも「会いたかった~♪」は記憶に残っていました。こんな鬱病のオッサンの頭にも入ってくるのですから、AKBの浸透力は大したものです。

 最初は高橋みなみと高山みなみの区別がつきませんでした。高山みなみは『魔女の宅配便』のキキの声をやった声優さんで、その後は、今にいたるまで『名探偵コナン』のコナンの声を演ってらっしゃいます。
 通称はタカミナなので、いまだに正式に思い出すと「橋」だったか「山」だったかで迷います。
 主要な選抜メンバーは、名前を覚えたころに卒業していくので、いま顔と名前が一致するのは両手の数もありません。

 ちなみにオシメンは宮澤佐江です。

 数回見て顔と名前を覚えた、わたしとしては珍しい子です。ほとんど笑顔を絶やすことがなく、人が見て居なくても、いろんなことに気が付いて、自分でやれ、普段表にしゃしゃり出ることは無くとも、自然にみんなから信頼を得られるような子だと思いました。教師時代の勘が、そう思わせました。
 少し元気になってからテレビやパソコンを見るようになり、図らずもそうであることを確認しました。

 AKBは、この12月に結成10周年を迎えます。めでたいことであります。

 この10年間で、わたしは通算三年の休職をやり、結果55の年に早期退職をして今に至っています。55で辞めると退職金が一割増えますが、時の知事の一言で、退職金は一割カットとなり、プラマイゼロという釈然としない退職でした。
 退職後は、出版社と契約しネットマガジンに連載を持ったり、売れない本を出したり。なんとも進歩の無い毎日でした。
 比べてAKBは、その昔、小林一三が宝塚を作って以来の文化革命を成し遂げました。
 Jポップで複数で構成されるユニットと言えば、ザピーナッツからピンクレディー、キャンディーズにいたるまで(古いなあ~)2人から3人と相場は決まっていました。モー娘、おニャン子などの例外はありますが、ここまでポップス文化の在り様を変えたのは宝塚以来でしょう。

 これは、わたしの一人合点なのですが、軽音やチアリーディング、ダンス部の隆盛と関連があると思います。
 女の子だって団体になればすごいんだから! で、あります。女子会という言葉が定着してきたのもAKBの発展と軌を一にしています。女子会という言葉の発案者は笑笑の大神輝博氏であるが(2010年に流行語大賞)AKBの文化がなければ、ここまで普通名詞にはなっていないでしょう。

 今年中にはタカミナも卒業とか、AKBも大きな曲がり角に来ていると思います。

 誤解されるかもしれませんが、AKBは倭人の見本のようです。倭人は小柄という意味以外に、人の指示によく従い集団行動が優れているという意味があります。ヨコアリや東京ドームでのライブなどを見て居ると、そういう倭人的な良さを感じます。旧日本軍の兵たちもそうで、剽悍で命知らずな戦闘をやるので、アメリカ軍などは、万歳突撃をバカにしながらも恐れてもいました。
「今度戦争をやるなら、アメリカの将軍、ドイツの部隊長、日本の兵隊」でやれば世界最強」などと言われました。

 この一二年で、創立期のメンバーの大半が卒業するでしょう。団体だったらうまくいったものが卒業してピンになって必ず成功するとは限りません。

 比べて、わたしは退職以来……鬱発症以来、仕事の上でも精神的にもピンでした。パッとしない10年でした。
 比べてみるのもおこがましいのですが、AKBの卒業生には、まだ70年に近い時間があるということです。
「男子三日見ざれば括目して見よ」という言葉があります。女子は三日見なければ別の生き物です。

 わたしの残り時間は20年をきったでしょう。十年一日のごとしが二回来たら、わたしはいなくなります。先日十年間担当医だったH先生が退任されました。今度は50過ぎの年下のドクターです。
 精神的には平衡を保っているつもりなのですが、外出をしない、眠剤がないと眠れない、レキソタンという向精神薬がないとやる気が出ない……などは立派な鬱だそうで、それでは、そろそろ薬の時間なので、これにて後免こうむります。


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高校ライトノベル・立ち読み『はるか ワケあり転校生の7カ月』

2015-03-19 10:10:49 | 小説
立ち読み
はるか  ワケあり転校生の7カ月』
        


 昨年の7月に発売した、『はるか ワケあり転校生の7カ月』の第一章の冒頭です。書店では売切れ始めていますので、書店で予約、ネット通販、または後記の出版社に直接お申し付けください。アマゾンは高い中古しか出ていません。楽天、TSUTAYAなどがお求めいただけやすいようです。 


『第一章 ホンワカはるかの再出発』

「ごめん。後で、必ずメールするから!」
 できたての親友由香に約束し、Y駅に走り、環状線に飛び乗った。

 電車の中で息を整える……桜宮を過ぎ、大川を渡ると、すぐに天満。真下が天神橋筋(てんじんばっすじ)商店街。日本一長い商店街で端っこが見えない。お父さんの好きな紙ヒコーキ用語で視界没(しかいぼつ)という。大阪に来て、お母さんがパートに出たお店が南森町というところにある。
「あ……」
 一瞬視界に入った洋品屋さん。胸に白い紙ヒコーキ付き群青のポロシャツがチラリ。

 お父さんに似合う……と、ほとんど走りながら思った。

 通り過ぎてしまうところだった。商店街から、視界没、群青のポロシャツ……そして、はさみ鋏でちょんぎったように無くなった東京での生活。そんなことが頭の中でカットバックする。スマホの「ココデ右ニマガリマス」も、大通りもわたしの意識から消え、あのマサカドクンが目の前に現れて、やっと気づいた。
「こんにちは……ハア、ハア、ハア」
 再び息を整えながら、準備中の店に入る。
「お、はるかちゃん……やな?」
 これがマスター……がっしりした上半身がカウンターの中で、ロバート・ミッチャム(親の趣味でわりと洋画とかにもくわしい)の顔をのっけて振り返る。ただしチョンマゲ!
「母がお世話になっています。ご……坂東はるかです。マスターさんですか?」
「まあ、お座り」
「あ、はいっ!」
 すると、奥のトイレからジャーゴボゴボと音をさせて、お母さんが出てきた。
「あ、はるか。思ったより早かったじゃない」
「初日だもん。でも中味は濃かった!」と、立ちかける。
「タキさん。トイレ掃除は、おわり。あとやることあります?」
「ないない、トモちゃんも落ち着こか」
 タキさん、トモちゃん……初日から、もうお友だちかよ。
「お母さん、これから教科書と制服いくんだよね……!」と、ドアに向かう。
「え、ああ、あれね……」
 あ、また忘れたってか……!? ドアに挟まれそうになって止まる。
「あれ、行かなくってもいいことになった」
「え、どういうこと(まさか、また学校替われってんじゃないでしょうね)!?」
「送ってもらうことにしたから。今夜には家に着くわ」
「だったら、言ってよ。わたし友だちのお誘い断ってきたんだからね!」
「あら、もう友だちできちゃったの!?」
「さすが、トモちゃんの娘やなあ」
「原稿の締め切り迫ってるからさあ……」
「まあ、昼飯にしよ。はるかちゃんも、口さみしいやろから、これでも食べとき。それから、オレのことはタキさんでええからな」
 タキさんは、サンドイッチを作って、オレンジジュ-スといっしょに出してくれた。
 そして、タキトモコンビの前には、毛糸にしたら手袋一個と、セーター一着分くらいのパスタが置かれていた。想像してみて、セーター一着ほどいた毛糸の量のパスタを!!

 ここで怒っても仕方ないので説明。目の前で、アッケラカンとパソコンを叩いている坂東友子。つまり、わたしの母は、つい一週間前に離婚したばっか。離婚の理由は、長年夫婦の間に蓄積されてきたもので一言で言えるようなもんじゃない。でも、離婚に踏み切れた訳はこのパソコン。わたしが、まだお腹の中にいたころに暇にまかせて書いた小説モドキが、ちょっとした文学賞をとっちゃって、以来、この人は作家のはしくれ。
「ハシっこのほうで、クレかかってるんだよね」
 そう言って、怖い目で見られたことがある。だって、本書きたって年に二百万くらいしか収入がない。最初はよかった。お父さんはIT関連の会社を経営していて、お家だって成城にあって、住み込みのお手伝いさんなんかもいた。
 でも、わたしが五歳のときに会社潰れて、お父さんは実家の印刷会社の専務……っても、従業員三人の町工場。で、そのへんからお母さんの二百万が、我が家にとって無視できない収入源になってきて、あとは、世間によくある夫婦のギスギス。
 かくして夫婦の限界は、先週臨界点を超えてしまい決裂。
「よーく分かったわ。はるか、明日この家出るから、寝る前に用意しときなさい」
 二人の最後の夫婦げんかは、明日の天気予報を確認するように粛々と終わっていた。わたしも子どもじゃないから、ヤバイなあ……くらいの認識はあった。でも、こんな簡単に飛躍するとは思っていなかった。そして、まさか大阪までパートに来るとはね……。

 作家というのは意表をつくものなんですなあ……って、タキさんもなんか書いてる!?
「ああ、これか……おっちゃんも、お母さんと同業……かな」
「タキさんは、映画評論だもん。ちょっと畑がちがう……」
 カシャカシャカシャと、ブラインドタッチ。
「せやけど……それだけでは食えんという点ではいっしょやなあ……」
シャカ、シャカ……と、老眼鏡に、原稿用紙……なんというアナログ!
「おれは、どうも電算機ちゅうもんは性に合わんのでなあ」
 ロバート・ミッチャムはポニーテールってか、チョンマゲをきりりと締め直した。店を見回すと、壁のあちこちに映画のポスターやら、タキさん自筆のコメント。
「……ところで、はるか、学校はどないやった? もう友だちはできたみたいやけど……」
 百年の付き合いのような気安さで、タキさんが聞いた。
「うーん……ボロっちくって暗い。でも人間はおもしろそう。今日会ったかぎりではね」
「どんな風にボロっちかった?」
 原稿用紙を繰りながら、横目でタキさん。
「了見の狭い年寄り。ほら、こめかみに血管浮かせて、苦虫つぶしたみたいな」
「ハハハ、ええ表現や。たしか真田山やったな?」
「あ、わたし演劇部に連れてかれちゃった」
「え、はるか、演劇部に入んの!?」

 お母さんが、目をむいて聞いてきた。

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