初めて

2006年02月04日 | 介護日記 -
今日は、「武蔵境」という駅に初めて降り立った。
こんなに長く生きているのに、まだ降りたことのない駅ばかりだ。
「好奇心」と「不安」で、改札出た時から“ドキドキもん”で、きょろきょろしながら歩く。
「何事も、初体験はええなぁ~」
「こういう時間を過ごすのはええもんだ!」
「やっぱり、脳細胞がすっきりするなぁ」
そんな高揚感に満ちて、ゆらゆらと“自分の気分”に浸りきっていた。

同じ場所、同じ道、同じ駅、同じ人、同じ食べ物、同じ話・・・そういう日々ばかりでは、
刺激にも感動にも出会えない。

そんなじんわりとした余韻にひたっているところに、ヘルパーさんから連絡が入った。
「お父様がいないんですけれど・・・」
「お部屋が、すごいんですよ。いつもと違って、すごいんですよ」
いつも奇麗に整頓された部屋しか見たことのないヘルパーさんは、愕いて電話をしてきた。
父が排泄を失敗したのだと、瞬時に理解した私は、
「おそらく二階に上がって、休んでいると思います。二階に上がってみてください」
「いいですか?では、あがらせてもらいます」
それから、電話は途絶えた。
連絡がないので、“二階に居たのだろう”と思ったが・・・
“どうなったのだろう?”と心配で、「ひやひや」「ドキドキ」の時間を過ごした。
1時間半後、やっと詳しい事情がわかった。

申し訳ないことをした。
案の定、父は排泄を失敗して、衣服を脱ぎ捨て、全裸でこたつで寝ていたらしい。
帰宅すると、洗濯物は風呂場にまとめてあり、奇麗に床掃除は終わっていた。
ヘルパーさんが、お掃除をしてくれていたのだ。
今日、担当していただいたヘルパーさんはベテランの方で、おそらく“てきぱき”と
父の着替えを終えて、掃除も食事も“同時進行”でやってくださったのだろうと思う。
直接、何度か個人携帯に電話をしたが・・・つながらず・・・
結局ほとんどの作業を“やっていただいてしまった”。
私は楽をしてしまったが、初めてお手間をかけてしまったことに対して、申し訳なくて
ちょっと居心地が悪い。別に隠す必要もないし、隠していたわけでもないのだが・・・
“ついに、知られてしまったなぁ”という思いもあり、複雑な心情である。

私にしてみれば毎朝の作業内容でもあり、珍しいことではないのだが、
ヘルパーさんにしてみれば「初めてのこと」である。
やはり、「愕いてしまっただろうなぁ」と思っていると・・・
「いつもは、ちゃんとしているし、初めてだったので・・・びっくりしました」
その言葉を聞いて、“やっぱり?!そうですよねぇ”と心の中でつぶやいた・・・。

そして、
「本当にどうもすみません」「お手数をおかけしました」
私の口からは、この言葉しか出てこなかった。
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