ガソリンエンジン分解組み立ての2日目です。
今日から組み立てに入りますが、一日経ちバラバラになった部品を見ると、『絶対自分一人では組み立てしきらんバイ!』と不安になります。
でも大丈夫、T先生の指示どうりにやれば大丈夫です。
ピストンの構造説明:シリンダー内を往復するピストンには3つのピストンリングと、連結棒があり、ピストンの往復運動をクランク軸に伝え、円運動に変えています。
連結棒のピストン側を連結棒小端部(コンロッドスモールエンド)、クランク側結合部分を連結棒大端部(コンロッドビッグエンド)と言います。
この機種の場合、ピストンリングは上からコンプレッションリング(圧縮行程で気密性を保つ)が2つ、オイルリング(エンジンオイルをシリンダーに均等に油膜を作り、余分な油をかき落とす)が一つで、3つのリングがはめられています。
リングに注油をします。
さらにピストンを横断面で見ると、まん丸の円柱ではなく僅かに楕円形です。
理由はピストンピン(連結棒と繋ぐ)部は肉厚なので、エンジンが熱くなると他の肉薄部分より膨張が相対的に大きくなるので、予め短径の比率にしてあります。
温まると膨張し真円になる仕組みです。その差をノギスで測定しているところです。
シリンダーにピストンを収めますが先ずは、ピストンリングコンプレッサーを使わないでピストンをはめるやり方です。
やってみるとわかるのですが、ピストンリングの形はちょっとだけ切れ目の入ったC型で、気密のためピストンの径よりもやや大きく開いています。それを無理して叩き込むと双方に傷が入ります。
また指で狭めて3つのリング入れるのは難しく、3つのリングをたとえ指力ではめたとしても、はまった途端にスポンとクランク軸に向かって落ちてしまいます。
そのため、ピストンリングコンプレッサーという、板バネを巻いた器具がちゃんとあるのですね!(簡易なリングガイドも有り)
注意点は、ピストンリングの切れ目はピストンヘッドに刻印してある△または〇印を避けた位置で、120度(3リングの場合)ずつずらし気密性を高めます。
その調整をした後、四角のエルボーレンチでピストンリングとともに、ピストンの径まで絞り締めます。
クランク軸をはめたら、連結棒からシリンダー内に差し入れ、ピストンリングコンプレッサーの板バネの上の小口をプラスチックハンマーで軽く叩き平面に揃えます。その後プラスチックハンマーの柄でコンコンと軽くピストンヘッドを叩きながら・・・・
もう片手は、下りてくる連結棒(連結棒大端部(コンロッドビッグエンド))を受け止め、クランクピンに誘導すると、スムーズにピストンが定位置に落ち着きます。
連結棒大端部(コンロッドビッグエンド)の軸受けメタルとキャップの取り付けのために、トルクレンチを規定の10N・m(ニュートン・メーター)にセットします。※10N・mは、従来使用の単位、1kgfの換算となります。
分解の時と同じように、バランスウェイトを移動しすき間を作り、トルクレンチが10N・mでカチッというところ(カチ音)まで締めつけます。
カムシャフトを付ける前に、タペットをはめますが、長年使っているエンジンの場合、クセが付いているので左右こだわって元の位置に取り付けるそうです。
タペットとは、吸排気バルブに、間接的にカムからの力を伝える伝動棒で、カムと接する面は平たい円形で、カムの頂点が確実に伝わる形になっています。
次はカムシャフトを取り付けますが、カムの向き(頂点)は180度で対峙させてあり、吸排気のタイミングを逆にしてあります。
また雑学ですが、歯車が斜めに切ってあるのは、静音のためです。
水平に切った歯車はお互いが平面で当たりますが、高速回転の歯車だと衝突音がものすごくなります。
ところが斜めに切ることで点での連続噛み合いとなり、静かな歯車になります。
もう一つ!注意しないとわからないのですが、大きなカム軸歯車の下のシャフトに、ポチッと出た小さな丸い弁があります。 (上の写真、親指の左側の豆)
これは減圧レバー(デコンプ)です。
始動の時にいきなり圧縮圧力が高いと、セルモーターの負荷やリコイルスターターのヒモ引きが非常に重くなります。
そこで、始動時の低速の時には、わざとガス漏れで減圧をします。
そしてバランスウェイトや、フライホイール(はずみ車)が回転エネルギーを持った時に、(遠心力を利用して)弁が閉じて圧力を高める仕組みになっています。
また、その弁を動かす仕組みは、大きなカム軸歯車の腹部にあり、回転の遠心力が付くと、弁を引っ込め穴を閉じる仕組みになっています。
さて歯車をかみ合わせる時には、位置に注意です。
写真のように、実はギアに印があり、双方を必ず合わせます。
4サイクルエンジンですので、吸気→圧縮→爆発→排気をするのに、ピストンは4行程(4ストローク((ピストンが)下がって吸気→上がって圧縮→爆発で下がって→上がって排気)=2往復)動きます。
これはクランクシャフト2回転で吸気と排気を1回動かせば良いことになり、ギア比も1対2の18歯:36歯になっています。
このL字に曲がった金具は、調速機(ガバナシャフト)です。
原動機で動くトラクターやコンバインの場合、耕す深さや稲・麦をかませる量により、エンジンへの負荷は変化しますが、作業者はその度にスロットルレバー(アクセル)を調整したりしません。
スロットルレバーで作業により定められたエンジンの一定の回転数(3,000回転とか)を、負荷に対応して一定に保つ便利な装置が調速機(ガバナシャフト)です。
遠心式の場合、クランクケースカバー(ベアリングカバー)に付いている、写真の白いギア部の金具(ガバナギヤアセンブリ)が変化しガバナシャフトを動かします。
例えば負荷が減少して回転速度が上がろうとすると、ガバナウェイト(スライダー)が開きガバナシャフトを動かし、気化器の絞り弁を閉じ回転を落とします。
一方、負荷が大きくなると回転速度が下がるので、ガバナウェイト(スライダー)が閉じガバナシャフトは逆に動き、気化器の絞り弁を開いて回転を上げようとします。
便利な機能ですが、人を挟んでもエンジンは負荷が増したと反応し、黒煙を上げてますます回転を上げます。
キースイッチを切ってもエンジンは止まらないのが自動車と違い恐ろしい仕組みです。
安全講習会では毎回言っていますが、専用のエンジン停止ボタン(チョーク式等)を家族全員で周知しておく必要がここにあります。
クランクケースカバーをはめる前に、接触面に液状ガスケット(液体シール)を指で塗ります。
ギアへの注油をして、クランクケースカバーをはめる時には、ガバナスライダーをガバナギヤアセンブリ内に入れた状態で、ガバナシャフトに挿入し、カッチッと音がすることを確かめます。
プラスチックハンマーでクランクケースカバー周囲を均等に軽く叩きながら、きっちりはめます。
最初はエクステンションバーで手回しで対角線的に均等に締め、次にトルクレンチを使って規定の20N・m(ニュートン・メーター)で本締めします。
フライホイルの取り付けを前に、クランプでガッチリとエンジンブロックを作業台に固定します。
フライホイルの取り付けは外した時の逆ですが、クランクシャフト軸の切込み溝凹に【半月キー】を、奥を低く軽く叩きこんでおきます。
フライホイールをゆっくり差込み、軸中央の穴の凹の切込み溝に、【半月キー】の凸がきれいに入るように注意します。
これで、緩むことなく確実に一緒に回転することができます。
リコイルプーリ―は合いマークを合わせ、フライホイールナットを手締めします。
写真の黄色のストッパーをフライホイール外周の切欠き部に確実に取り付けます。
トルクレンチを規定の60N・m(ニュートン・メーター)にセットし、カチ音がするまで締め付けます。
スパークプラグの清掃です。
ワイヤーブラシで煤を落とし、数本のワイヤー束で中心電極の周りの溝も綺麗にします。仕上げは、洗浄スプレーで綺麗にします。
シリンダーヘッドの清掃です。これも灯油の中でワイヤーブラシで煤等を落とし、仕上げは洗浄スプレーです。
吸気弁、排気弁の清掃です。
これも灯油の中でワイヤーブラシで煤を落とし、仕上げは洗浄スプレーです。
見てのとおり、やや大きさが違います。大きい方(右側)が吸気弁、小さい方が排気弁です。
ダイナモ(発電機)の取り付けです。
フライホイルには強力な磁石が付いていますが、この回転と接してダイナモのコイルとの間に電磁誘導電流が発生します。
直流発電機をダイナモと言い、交流発電機をオルタネータと言います。
近年のトラクタは消費電力が多くなっているため、低速でも発電量の多い交流発電機(オルタネータ)が多いようです。
ダイナモと磁石のすき間は、0.2mmですが、ダイナモの取り付けでは、フライホイルの強力な磁力引き寄せられてすぐにくっついてしまい、ボルトの穴がずれてしまい作業が出来ません。
0.2mmと言えば、ハガキの厚みがピッタリなので、帯状にカットしたハガキを挟み、ボルトの穴を合わせて固定します。
固定したらハガキを外しスムーズな回転を確認します。
この後、点火プラグに本体金属部から金属棒を使って誘導しプラグのネジ部等に付け、フライホイルを手回ししてのスパークを確認します。
(なお、0.1mmを飛ぶ電圧は1,000ボルトで、プラグは0.6mm程の隙間ですから、感電には気を付けます。)
ノギスの使い方も勉強しました。
ノギスは本尺先端に内径を測るクチバシ(写真上)と、挟んで径を測るジョウと、奥行き・深さを測るデプスバーで構成されています。
それに本尺目盛りを滑るスライダのバーニヤ目盛りを組み合わせて、0.01mmまで測定出来ます。
実習として、この機種が何CCの排気量かを測定して計算してもらいました。
計算式は、円柱の体積を求めると同じで、半径×半径×3.14×ストローク(高さ)です。
ストロークは、ピストンの上死点と下死点の長さで、デプスバーで測ります。
7人の学生に黒板に書きだしてもらいましたが、ちょっとした目盛りの読み方で計算結果がみんな違ってきました。
2日目はここまでです。
次回は、最終3日目を紹介しますので、お楽しみに!
熊本県立農業大学校2年機械応用・ガソリンエンジン分解組み立て!1日目
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