Goo・ちょき・パーで、なに作ろう!

定年退職してしまいましたが、再任用でまだまだ老後の蓄えをしなくてはなりません。それでも悔いのない人生にしたいと思います。

手づくりナタ③(柄(取っ手)・鞘(さや)づくり完成編)

2017年02月25日 22時44分51秒 | Weblog
2016年12月4日(土)

写真の記録を見たら、母の危篤の電話が鳴る前日の事でした。
『明日とも知らず~』暢気にこんな事して居たんですね。

さて、刃物づくりは、刃物だけでは終わらないのがやっかい?楽しみでもあります。

それは、(柄(ツカ=取っ手)と鞘(さや)づくりです。
どちらもこれ無しには、刃物は危ない取り扱いとなります。
肝心の鍛造よりも先に取り組みました。
ストックの3年乾燥の樫の枝から適当なモノをツカに使う事にしました。



ナイフとカンナで樹皮を剥いで白い肌を出します。
まだ鍛造に入る前の鋼材に乗せて、長さのイメージを確認。



市販の商品では絶対出来無いのが、使い手(自分)の手の形にフィットする事出来ない事です。
グリップの馴染みというのは、力一杯振りかざすモノほど重要です。
ツカを握ってみて、鉛筆で、指の型取りと、
手のひらのふくらみむ(筋肉の盛り上がり)部分、丘(きゅう)の当たる所に、ココ ○ ココ ○ と印していきます。
自分の丘は、『金星丘と木星丘が盛り上がっているから、そこには窪ませよう!凹』とか考えながら、フィット感を描き込みます



その線引き・印に従って、グラインダーで削っていきます。
もちろん印は消えますので、何度も握っては削って、ジャストフットにしていきます。
丘だけでなく、指と指の間は仕切ってくれる 凸 があると、刃物を振りかざしても、手抜け(刃物が遠心力で飛んでいく事)が無くなります。
特に、ツカの端っこ(柄頭:ツカガシラ:野球バットのグリップエンド)は盛り上がるように膨らませると、右手の小指丘(金星丘と水星丘)(空手チョップの時に刃にする、膨らんだ部分)が引っかかり、手抜けが皆無になります。
※最初から、その様な材料を選ぶようにしています。



さて、刃物では柄に入って見えない金属部分を 茎:クキ と書いて『なかご:中子』と言いますが、この刃物の場合どの様に柄に入れる(埋める)かは考えるところです。
ちなみに、方法は「中子」「本通し」「背通し」の3つのパターンがありますが、茎が全く見えない、 中子 はとてもその穴を彫れません。
本通し は、中子と柄が同じ形と広さで、金属の中子を2枚の板で挟むやり方のため、論外です。
残りは、 背通し ですが、見た目に上に金属が見え、その内にサビも出るのも嫌!と、『 腹通し して、茎の幅の材で溝を埋め金蔵が見えないようにし、中子もどき 』にする事にしました。

樫は固いので、1mmのドリルで案内穴を空けますが、背まで通さないよう深さを調整しています。




次に、4mmのドリルで斜め彫りし、案内溝状態にしていきます。



次に6mmのトリマで、直線的に同じ深さで、綺麗な溝を彫ります。
『こんな電動トリマ持っているなら、最初から、コレ使えば!』と聞こえてきますが、これも失敗経験からです。
平面の板や柱ならともかく、ガイドゲージも取り付けられない、細く丸い棒状を誘導溝無しに溝を彫るのは難しいのです。




さて、うまく入るでしょうか?



www~どうも、6.2mmくらいありそうです。
正直、茎の鍛造にはあまり気を配って叩いていませんでした。
厚さが6.0~6.5mmの間で凸凹のある下手な鍛造でした。(泣)
微調整はやはり彫刻刀による手作業です。




ツカの腹側(持った時の下面)から見たところです。
『ジャストフィット!♪』綺麗に入りました。




2017年2月上旬

母の葬式~四十九日と慌ただしく過ぎ去り、それまで放置していた作業を再開しました。
前回のブログで紹介した、中研ぎ段階では紙も切れるようになり、危なくなってきたので、ツカの完成を急ぎました
中子は溝に入りますが、固定しないとグラグラです。



口金を取り付けますが、市販の口金は丸いので、柄の形状の楕円に潰します。
その形・大きさに削ります。これもうっかり手を切る危ない作業です。




填めてみて、口金がキツイ所には、黒い塗装が着きますので、そこを少しずつ削り、緩すぎず固すぎずのジャストフィットに仕上げます。




次に、『目釘穴:メクギアナ』を、4mmドリルで空けますが、茎も焼き入れしているので、固い!

バイス(万力)に挟んで、安全穿孔。
日本刀の目釘穴は普通1箇所ですが、これには2箇所を空けました。




目釘穴に4mmの真鍮棒を釘として打ち込み、金切りノコで切り落とします。



『 腹通し して、茎の幅の材で溝を埋め、中子もどき 』の具体的方法です。
材に選んだのは、孟宗竹です。
これを溝の幅に削り、口金下まで入る長さで、埋め木にします。




接着剤は、A液とB液を混ぜるセメダインです。
よ~く練り合わせたところで。




溝にも塗り込み、埋め木、目釘にも塗り接着します。



出っ張った部分を大まかに削って、放置しました。



後日、サンドペーパーを消しゴムに巻き、柄の磨きに合わせて、真鍮の目釘棒も綺麗に平面化しまじた。



2017年2月中旬


日本刀の鞘(サヤ)は、2枚のホウノ木板等を刀身の厚さ・長さで溝を切り、貼り合わせて作られています。
そんなホウノ木は持ちませんので、7mm位の1枚板を2枚準備しました。



型取りをしていますが、三本も線が!
1番内側が刀身の型取り線。次が挟み板の接着部分。
一番外は、挟み板の切り出し線です。



ジグソーで、ジャンジャン切り出し。



木工ボンドを挟み板に塗り、クリップで挟んだ所。
刀身の形に綺麗に型取りすれば、入るかというとそうではなく、反りがあるから実際の抜き差しには、『アソビ』がないと、突っかかったり、引っかかったりとうまくいきません。
接着前に、何度も刀身を抜き差ししてみて、挟み板を調整し、改めて線引きし、その位置で接着です。
また、今日は片面だけします。
やってみると分かるのですが、ヌルヌル接着剤は、圧力が係るとジワーッと動きます。これが3枚一度にすると修正が効きません。



3日置いて、もう片面を接着し、また3日間放置。
やっと鞘の切り出しです。




ベルトサンダーを引っ張り出し、サンドペーパーも粗・中・仕上げと、3種類準備しました。



人力では、大変な作業ですが、ベルトサンダーは便利です。



角も丸く仕上げます。



例によって、鞘を持つ左手のマイ丘に合わせて、鞘の握りを削りました。
『ジャストフィット♪』



塗装は迷いました。
『白木の鞘を活かして、透明ニスにするか~?それとも、山中で落としても見つかりやすいように、真っ赤にするか?でも、直ぐに汚れるからナア~』・・・・・・
と迷った揚げ句、こんな結末となりました。



前回のブログ:ユズ伐りの実戦で、刃こぼれはしましたが、これで全て完成です。



4ヶ月もかかって、やっと完成しました。
いつも長いブログを最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

決して”危ない奴”ではありませんので、ご安心下さい。

手作りナタ②(焼き入れ・仕上げ研ぎ編)

手作りナタ①(鍛造編)


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手作りナタ②(焼き入れ・仕上げ研ぎ編)

2017年02月19日 22時35分21秒 | Weblog

2017年1月中旬

さあ、やっと焼き入れ前の研ぎが終わった。

鎬(しのぎ)部分は、焼き入れ後にはもう研がない~酸化鉄のままにしておきたいので、今の内にと仕上げ研ぎまで鏡面仕上げ~

一方、刃の部分は焼き入れ前だから、切れる刃にはしていない。
中研ぎ段階でストップし、焼き入れのタイミングを待っていた。




焼き入れ前の水桶準備~
長モノなので、園芸の土桶を利用した。

樹脂製なので、熱い鉄を投げ込めば、底に穴が空くかも?と敷居を置いた。



焼き入れに備えて、フイゴの改良をした。
掃除機のくねくねホースをブロワーと、フイゴの鉄パイプに繋いだ。
これでブロワーを邪魔にならない所に自由に動かせる。

 

炭を熾し、ブロワーのフイゴでガンガン焼いていく。



下の写真のように、鉄やステンレスを焼くと、綺麗な虹色が出る事がある。
これは、酸化皮膜に水に含まれる微量の鉄、銅等のイオンが水の蒸発によって金属の表面に付着して虹色に見せている現象で、これを過ぎると黒い酸化鉄に包まれてしまう。




ちなみに、黒い酸化皮膜はさびにくいコーティングとなり、この酸化皮膜はキズがついてしまっても、空気に触れると、金属表面が空気中の酸素と化合して、再び皮膜が再生され、防錆の働きを取り戻す優れものです。 



鍛造と違うので、目標温度は900℃。
実は、ここで携帯カメラが熱により、エラー・・・ストップした。
カメラが冷え復旧するまで、炭に突っ込み、まんべんなく焼いた。

いよいよ、焼き入れ~ヤットコで摘み、一気に投入!
『シャーッ・・ジョブ・・ジョブッ』と一面水蒸気が立ち上がりメガネも曇る。


 

ところで、 『焼入れ』 とは 鉄(鋼)を焼いて高温にしていくと、金属構造はオーステナイトに組成が変化します。
そしてこれを水や油で急激に冷やすと、鉄は炭素を強制固溶した組織となり、マルテンサイト変態)と呼ばれる、非常に硬い性質に変化します。
焼き入れがうまく出来ていないのは、不完全焼入れ甘焼き と言われ・・・。
さあ、うまく マルテンサイト変態 になっているか?



実はこの後、焼き戻し作業をしています。
焼き戻しとは、金属に粘り(靭性:ジンセイ)を与える処理で、150~250℃で行う 低温焼戻し と、400~680 ℃で行う 高温焼戻し がありますが、温度計も無いので、低温はかえって難しいので、500℃位での高温焼戻しをしました。



ホントはここで養生として熱い灰とかに埋めて、ゆっくり冷やさなければならないけど、それも出来ない。

時間がないのもあって、直ぐに粗研ぎです。
でも、研ぐのは刃部分だけです。
鎬部分の酸化皮膜を研がないように注意して、ひたすら切れる刃まで研ぎ落とします。




鍛造の時には必死で叩いていますので、平たいようですが、ハンマーの波打ちが残っています。
それを研ぎ落として、平面・鏡面にする訳ですから、へんな打ち方をしていると、研ぎで苦労します。
一生懸命研いでいると、砥石に触れている指の感覚を忘れてしまいます。

そしてこんな感じで、出血して初めて気付きます。
砥石での擦り傷は、刃物のキズより長く数日間、ヒリヒリと痛みます。

 

鍛冶屋通いの頃は、なかなか刃が付かず、あんまり大変なので、師匠に聴いた事があります

私:『焼き入れの前のまだ柔らかい時に、あらかじめ刃を尖らせておけば、粗砥も楽になるんじゃないですか

師匠:『あのねチミ(君)粗砥段階で、そんな楽をしようなんて考える事が、だいたい根性がハイッとらん

私:『いや、そんな、そ、そ、素朴な疑問です

師匠:『焼き入れされる、鉄の気持ちになってごらん 1000℃も焼けたのが、常温の水に投げ込まれ、一気に冷やされるの 焼けたガラスに水かけた事ある
パチパチッて割れるど あんな感じで、尖った刃を焼き入れすると、欠けたり、小さな目に見えないヒビが入るの チミに分かるかな

私:『ハイ良く分かりました

口答えの多い見習いと、師匠の、そんな会話を思い出しながら研ぎました。




スマホに接写用レンズをはめて、刃を撮影してみました。
なかなかピントが合わず良く分かりませんが、段々と鋭い刃になっていきます。



2017年2月上旬

実は、1~2月の寒風の中、冷たい水で、粗砥工程をトータル10時間くらい研いでいました。
その間、とうとうインフルエンザA型で寝込んでしまいました。
それだけ鍛造で凸凹になった面を平面・鏡面にするのはたいへんな事です。

今日は、いよいよ中研ぎに進みました。
先ずは、砥石面をフラットに研ぎます。中砥石は粗砥で、仕上げ砥石は中砥石で研ぎます。



刃はもう切れる刃になっていますので、タオルを巻いての研ぎです。
うっかり横滑りすると、ザックリと手が切れます。



縦研ぎ、横研ぎを交えて、鏡面と刃を付けていきます。



良く見ると、白い刀身に黒い部分があります。
これが凹の部分で、ハンマーで強く打ちすぎて凹んだ部分です。
この凹の底面まで研がないと平面・鏡面になりません。



なかなか凹が取れないと、また粗砥に戻る事もしばしば~
この苦労?を知って、日本刀を観賞すると、刀鍛冶や研ぎ師の匠の神業が本当に良く分かります。



中研ぎも数日間に渡って、指がかなわなってもバカみたいに研ぎました。



実はこの間、取っ手(柄:ツカ)も作って、はめました。
もう危なくて、握ってられないからです。
※次のブログで紹介予定。

妻の居ない所で、夜な夜な光にかざし、研ぎムラを見つけます(笑)
酸化皮膜研ぎ落とし防止の、ガムテープが目障りです。




いよいよ、仕上げ研ぎに進みました。
仕上げ研ぎは、なんとも言い難いのですが、暖簾に手押し~みたいで抵抗が無くあまり好きな工程ではありません。
が、しかし、明らかに鏡面になっていくのは快感です。



切っ先の研ぎは、これまた難しいです。



小刀くらいの短刀なら角度の調整も見えるのですが、こんな長モノになると持つのも大変で難しいです。



仕上げ研ぎは、何十時間も研ぎません。
刀身の鏡面と、包丁研ぎと同じく、カエシの確認と切れる刃の仕上げです。
新聞紙はなんの事無く、ティッシュペーパーも引けば切れますから、試し切りをしたくなるものです。




チャンスが来ました。
柚子を加工する母が居なくなったので、半分伐る事にしました。



直径2cmくらいの枝は難なく一刀両断出来ました。
5cmになると、刀身の厚みもあり、無理でした。



切れ味を試す~と言うより、ナタが目的ですので、これが本命の使い方です。
トゲトゲのユズの枝を長刀身を活かして、バッサバッサと伐りました。




結果:切っ先付近の一番力が掛かる刃が、歪んでいました。
   欠けるではなく、歪むとは靭性のありすぎ?

反省:原因は、焼き入れのマルテンサイト変態が不十分だったのか?
  (焼き入れ温度が低かった?焼き戻しのし過ぎで、オーステナイトに戻った?
   それとも、焼き戻し後の養生時間を取らなかったから?もしかして、鋼とあったものの、粗悪な鋼?もしかして、スマホのカメラ復旧とか待っていたから・・・もしかして・・・)

疑問はつきないが、美術鑑賞品じゃなく実用のナタだから、使えてナンボと、刃物らしくスパッと割り切った!

鍛造の技術を忘れないためにも、良い教材となりました。



次回は、柄と鞘の作成を紹介します。

手作りナタ①鍛造編

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