2020年4月20~22日
2019年4月、熊本県立農業大学校に新しい研修施設『研修交流館』が竣工しました。
県下でも珍しいCLT(クロス・ラミネーティド・ティンバー)工法で建てられたもので、県産材を直交積層接着した木造建築です。
宿泊施設も備えて居るので、管理のための鍵も増え、キーボックスも3つに増えました。
ところがいつまで経っても床に置いたままなので、『インパクトドライバーで壁に取り付けますよ。』と言ったら、想定外にストップがかかりました。
退職後再任用の立場をわきまえて、それ以上は言いませんでした。
床置きなので鍵を取るにもしゃがむか、腰をかがめるかしないと目的のカギが取り出せません。
さらに固定されていないので、重たいスチールドアをグラグラ・ガチャガチャさせながら開き、またグラグラ・ガチャガチャさせながら閉じる。
そんな不便を1年間通しました。
『あれから1年』(きみまろ風に)
人事異動で人も代わったので、今年こそ当たり前な『壁固定』を申し出ました。しかし、またストップがかかりました。
当然ですが、現役職員は皆年下。
『モノは便利に使って活きるモノ、たとえ新築でも見てくれ優先で人間が不便に甘んじるとは本末転倒!』と、喉元まで来ましたが、立場は変わらないので意見はしませんでした。
それどころか『大工・工作の得意な金光さんだったら、壁に穴を空けずにキーボックスを取り付けられるモノを作れば良いじゃないですか。ただし、見苦しいモノは置けませんよ!』と言われ、(俺を試す気か?)と思いながらも俄然闘志が湧いた訳です。
『作ってやろうじゃないか!』
しかし、いざ現実的に工作を考えると問題がありました。
作るモノがなんらかの(パーテーションみたいな)台にしても、設置可能なこの場所には、床用コンセント(アップコン)がワニの様に口を開け、電気コードまで吐いています
もう一つ、『見苦しいモノは置けませんよ!』と言われても、3つのキーボックスの総重量は約20kgにもなります。
それに耐えられる強度のある固い材となればそれなりに高い。
(暇な人間でも無いうえに、自腹を切って職場に貢献しなければならないのか?)とも思いながらも、材料探しを続けていました。
ホームセンターを物色するも、結局材料は実家で見つけました。
熊本地震で被災し、改築の廃材として切り出された『床柱』
それに、子どもたちが使っていた『二段ベッド』です。
しかし、集めた『固い・綺麗』の条件を満たす主な材料はこれだけです。
”今ある冷蔵庫の食材で何の料理が作れるか”の如く、『ある材料をどう組み合わせると、キーボックス棚が作れるか?』
きざむ前に、手持ちの材料を計測し、エクセル画面上で組み合わせをシミュレーションし検討しました。
条件①=キーボックスに空けてある取り付けネジ穴の位置は決まっているので、その裏側には横木がなければなりません。
条件②=キーボックス棚の背面は、二段ベッドの左右の柵を利用するが、幅76cmに足りない。中央を裏板で繋ぐとしても、2枚重ねで連結すると、その出っ張りの厚みが壁に当たり邪魔になる。
条件③=キーボックス棚はとても重く、前に倒れやすくなるので、転倒防止のストッパーが絶対必要。
条件を満たす設計と、加工方法を考え、図面を作りました。
3つのキーボックスは、こんな配置にすれば固定出来そうです。
設計が決まると、一気に切り刻みたいのですが、廃材の怖いところは、破壊的に乱暴に外されたために釘やネジ釘が隠れている『地雷』です!
良く観察して、折れて見えないモノまで、黒っぽい色の変化で見つけて抜き取っておかないと、丸鋸やノミの刃をいっぺんにダメにします。
後は図面や現物に従って、バンバン切って刻んでいきます。
床柱利用の土台や他の部材の切断が出来たところで、イメージだけの重ね合わせです。
条件②の、出っ張りを作らない連結方法
は面倒ですが、『千切り(チギリ):バタフライジョイント』(これは正確には、片羽)しかありません。
先ず受け板側の メス台形 を罫書きました。
罫書いた線で、鋸引きします。
綺麗にカット出来ると、柱側の オス台形 は、下手に計りながら罫書くよりも、『メス』に合わせて象る方が臨機応変対応で正確です。
オス台形を切り出し、ノミでキツイ所を削ったらキッチリはまり、連結されます。
左側が出来たら、次は右側。
ハメたり、外したりを何度か繰り返し、コンコンたたき込んでいた時です。
『ペシッ』と音を立てて欠けてしまいました。
落胆しても仕方ありません。
材料はこれしか無いことから、気を取り直し、長いコーススレッド(ネジ釘)で連結させました。
さて、次は
条件①=横木の取り付けです。
が、材料は合板で裏面に貼られたベニア板の接着が取剥がれて捲れ、みっともない材料です。
でも、これしかない
仕方なく、ベロンベロンの薄いベニア板を剥ぐ事にしました。
さらに、丁寧にカンナをかけると。
どうでしょう、『一皮剥けばなんとやら』
綺麗な白木の面が出てきました。
ここも、『千切り(チギリ):バタフライジョイント』で連結することにしました。
メス台形を切り抜きます。
裏返した板の表面は、似たような色です。
メスで象り、オスを罫書きします。
オスを切り出して、ノミで微調整して連結しました。
床柱利用の土台です。
床用コンセント(アップコン)に当たる部分を、幅11cm、高さ6cmカットします。
この様なときには、ノミの幅に何本も丸鋸で切り込みを入れ、ノミを入れると。
変な方向に先割れせずに綺麗に掻き取ることが出来ます。
断面を綺麗に削いで、凹凸を無くします。
土台が出来たので、いよいよ組み立てです。
コーススレッドでネジ止めして、全部材を繋ぎ組み立てます。
『大工・工作の得意な金光さんだったら、・・・・・見苦しいモノは置けませんよ!』
が、まだ耳に残っていますので、仕上げ塗装前の、との粉(コ)による凸凹埋めまで丁寧にしました。
普通は、水に溶いて凸凹を埋め、濡れタオルで拭き取って平面仕上げをするのですが、連結部分の隙間埋めと接着も兼ねて、木工ボンドを加えることにしました。
ただし、この方法の難点は、乾ききらない内に凸凹を埋め、余計な との粉 を拭き取らないと、かえって凸凹の面になることです。
そのタイミングを見計らって、タオルで拭き取ります。
2020年4月22日 早朝
いよいよ仕上げの塗装です。
使い掛けの焦げ茶色のスプレー缶しか持たなかったために、果たして2度塗り出来るか心配でした。
余計な所を塗る余裕は無いので、キーボックスの大きさにカレンダーを切り、養生を兼ねて貼り付け節約しました。
幸い表面は二度塗り、裏面は1.5度塗りで足りました。
午後になるとすっかり塗料は乾き、職場に持ち込み、3つのキーボックスを固定しました。
カギ束も4カ所掛けられます。
床用コンセント(アップコン)も綺麗に収まりました。
キーボックスを開いた所です。
同時に3つの扉を開けることはありませんが、倒れることはありません。
転倒防止の足はちゃんと正確に90度で取り付けたハズなのに、キーボックスの重みのせいでしょうか。
1cm位足先が上がってしまいます
とりあえず段ボールを敷いてぐらつかない様にしました。
後日トップの板と壁の間に、突っ張りの枕を入れようと思います。
職場のみんなも喜んでくれました
『だったらなぜもっと早く・・・あれから1年』(きみまろ風に)
これで、しゃがむ・腰をかがめるの窮屈な姿勢と、重たいスチールドアのグラグラ・ガチャガチャのイライラから解放されます。
最後にもう一度
『モノは便利に使って活きるモノ、たとえ新築でも見てくれ優先で人間が不便に甘んじるとは本末転倒3年経てば良いのか?5年経てば良いのか?改善するなら今でしょ』
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