2020年8月上旬(盛夏)
『知らないふりしても、誰も責めない。放置していても自分が言われることはない!』
職場の石垣のユガミなんてそんなものでしょう。
じゃ、何故自分がその修復をするのか?
『バカだからでしょう!このクソ暑い時に、仕事でもないのに外で泥にまみれて汗流すなんて、バカでなければ出来ません。』
そんな自問自答をしながら『俺がやらなきゃ誰がやる?これは俺の熊本地震復旧ボランティアだ!』
約40年ほど昔に流行った、松任谷由実の『稲妻の少女』を歌いながら『何のたしにもならないことに、ムキになれる あなたがいちばん好き~』と気合いを入れ取り掛かりました。
1日目:1カ所目
ここ症状は、1個だけの飛び出し!
両端が動けない配置で挟まれている石垣が地震でガブリを受けると、中央のどこか弱いところの石が飛び出します。
4~5cmの飛び出しで、石の上でジャンプすると、ズルっと落ちる状態です。
これを危険・見苦しいと感じるかですね。
バールでコジ上げ外し、中の詰め物(栗石:グリイシ)を取り除きます。
石を戻し、面(ツラ)を合わせるように調整します。
切石の石垣は、四角錐ですので、面(ツラ)を垂直に近くしたいならば、必ず錐の尖りの下に敷石が必要です。
隣の石との間を埋める目止め石(胴飼(どうがい)、艫飼(ともがい)の石)の隙間を埋める土が必要で、それらを詰めながら面を合わせます。
挟まれたたった1個の場合、両脇の石が動かせないので、かえって窮屈な調整作業になります。
なんとか綺麗に元に戻りました。
ここは準備運動的に1個で済みました。
掃除をして、何事もなかったかのように戻します。
他人はビフォーを知らないのでおそらく誰も気づきません。
仕上げは水を打ち、栗石、土を落ち着かせます。
バケツで組んでくるのも大変!
1日目:2カ所目
すぐ隣の箇所で、ここは脹らみとズレです。
石が大きくなり気合いを入れないとケガをしますので、真摯に取り組みます。
先ずは端っこの角、天端石(テンパ石とかテンバ石)
石垣の角には力が集まるので、設置面積が大きく四角い重たい石が使われます。
60~80kgにもなるので、とても抱えきれません。
中の石はピンキリですが、15~40kg位が使われています。
面倒ですがチェーンブロックをかけて下に下ろしました。
真下は作業の邪魔になるので、離して退避させます。
刷り動かすだけでも”フーッ”となり、額の汗は眼鏡のレンズに溜まります。
次いで左側3個の辺の石を外しました。
元に戻す位置をとりあえず平らにし、石を戻します。
面を合わせる手順は同じです。
ただ一度掘り出した栗石はランダムにスコップで跳ね上げていますので、二度と同じ場所には戻せません。
違う栗石を使い、面を合わせる調整と動かない様に突き詰める作業が一番時間を食います。
3~5cmの飛び出しを、元の位置に戻し面を合わせます。
『おやっ~?』栗石を排出していると、変な卵の様な塊が出てきました!
殻は柔らかく、大きさはチャボの卵大です。
後日、蛇の卵と分かりましたが、大きさからしてアオダイショウと思われますが、土中の狭い隙間にどうやって入ったのか不明です。
全部破れていて、無事に生れ出ている様です。
天端石にまたワイヤーを掛けて吊り上げます。
水平に吊っていたつもりが、ズリズリと偏り始めました。
『危ない!』これが足に落ちたら、複雑骨折間違いなし!
ワイヤーの抜けは一番危ないので、早めに足でブリ乗せる事にしました。
面がそろったら栗石の間に、小石や土を突き詰めます。
夕方になり、西日が燦燦と当たる様になりました。
体力的にも限界を感じましたので、土を叩き固めて天端石を覆う[築玉・つきだま]をして終わりにしました。
2日目
前回のL字型の繋がりの辺で、この根っこによる開きは誰の目にも『オヤー!』です。
石垣に木を生やすのが厳禁なのはこんな状態になるからです。
熊本城の石垣でも見られます。
鳥の糞により木が生えだすパターンが多いので、石垣の定期の草取り・木の除去は必須のメンテナンスです。
さてさて、作業前には症状を分析し、動かす石にはチョークで番号を振り、出戻りにならない手順を考えます。
根の張りによるズレもありますが、やはり地震での飛び出しも見られます。
下の段の数が多いと、その上の段は必ず外さなければならず、作業量にウンザリ感が先立ちます。
『石垣築作業は冬作業だ~!』
(でも、寒いと指先・足先がジンジンしてきます!)
ところが、余計な気遣いの要る作業箇所となりました。
スイカが生長しており、小さな着果が見られます。
たぶん去年の研修生が、窓から『プッ!』と種を飛ばしたに間違いありません。
このスイカ(品種はボンボン?)さえなければ、出てくる栗石や土をビャンビャンと跳ね上げ出来るのに、イラン気遣いが必要となりました。
さて、原因の木の株、根っこの掘り出しです。
結構深く根が入っています。
『その頃の職員は、なんしよったつかい!』と、ブツブツ言いながら引き抜いていきます。
大がかりとなってしまいました。
もう後戻りは出来ません。
研修生OBにとっては懐かしい窓辺でしょう。
『窓からスイカの種飛ばすな!』
さて、延々と一人の作業は続きます。
面を綺麗に合わせるには、石垣の詰め物の石である、グリ石の調整ですが、1個の切り石は四角錐ですので、錐の尖りの先には、奥に落ち込む引っ込み防止のための受け石である胴飼(どうがい)、隣の石との△の空間を埋める目止め石であれる艫飼(ともがい)、総称して飼石(かいいし)での調整です。
しかし、今回のような積みなおしでは、全く同じ位置には戻せません。
コンクリートブロックの直線辺の石垣なら出来ますが、人が切り出した石の接する断面は、必ず凹凸の辺です。
わずか5mmの凹凸の凸と凸が合えば、凹と凹の隙間が1cmにも2cmにもなります。
その様な時には、臨機応変で鏨(タガネ)を使い凸凸を斫って(ハツッテ)隙間を出来るだけなくします。
※これも個人的に買った道具です。あんた何屋さん?ドンダケ~!
奥の凸と凸が当たる場合もあり表面だけではありません。
そんな時にはこんな鏨を使います。
『奥を突いて~~!』と独り言を言いながら、斫るとまた石を抱えて合わせてみます。
それでも足りない時には、『もっと奥を突いて~、アアッ、そこー!良かっ~!』と独り言を言いながら、汗ダラダラ流しのキツサを紛らわします。
失礼しました( ´∀` )。
あと4個です。
夕方になり西日は極度となり地獄的環境となりました。
スイカを埋めない様に、栗石を殆ど足元に落としていますので、足元が悪く、足場はグラグラ、額はダラダラです。
撮影のたびに手袋脱ぐので、なかなかはかどらない!『今日中に終われない?』とイライラし始め撮影中止!
全部築き終わりました。
箒で掃いて綺麗にします。
面も綺麗に仕上がって、まずまずの出来です。
前回のバケツで懲りたので、30mホースを引っ張りました。
スイカの潅水も兼ねます。
天端石(てんばいし)や一番上の石は土で覆うのですが、土を叩き固めて石を覆う[築玉・つきだま]を締めます。
水をかけると、築玉の土はどんどん隙間に入っていきます。
キリが無いので、だいたいのところで止めます。
今回は全部で20個の石を動かし、延べ9時間位かかりました。
決して本来の仕事が無くて、暇人だからではありません。
切り石の石垣築は専門的技術職の分野なので、業者によりけりですが言われるがままなら20万円くらいかかる仕事でした。
研修生の学び舎、自啓館(ジケイカン)周りの石垣修復は、やっと半分まで出来ました。
年金が出るまでは、残りを修復を終える事が目標です。
以下、これまでの関連工事のブログです。
専門用語を遣い書いたのは、第2弾です。
第3弾は、facebook投稿のみです。
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