2020年4月8日
新型コロナウィルスのために本年度の、熊本県立農業大学校の入学式・研修部の新規就農支援研修生の開講が出来るかどうか二転三転しましたが、十分なる対策をとったうえで予定どうり4月10日の挙行が決まりました。
ところで新規就農支援研修生の学舎となる自啓館(ジケイカン)の左右の石垣は、2016年4月の熊本地震の被災で、何カ所もズレを起こしており、グラグラ状態は、危険性を孕んでいました。
このままではいけないと、写真左側を3月に修復しました。
新しい研修生が来る前の工事に没頭出来る猶予は、今日8日にするしかありません。
(ブログに載せる魂胆と関係なく)
石垣に番号を振り写真に残しておかないと、混じってしまい大変な苦労をすることになります。
1・2・3・13番がずれており、特に3番の上を踏むとグラグラ!
2番の下の大きな隙間には、草がはびこっていました。
4・13・14・15・18番の飛び出し。
13番は2と3番を乗せたまま、5cmも飛び出ています。
ここは研修生がいつも通るところです。
14・15番はちょっとこねると、飛び出します。
7・8・10・12・18・19番のズレと飛び出し。
7番には良く腰掛けていた石ですが、これもグラグラです。
18・19番の隙間から、中の詰め物のグリ石が飛び出しています。
こうやって、全体の状況を把握して、出戻り?やり直しのない手直しの手順や作戦を考えます。
手始めは、天端石(てんば・いし)の上の芝を綺麗にはぎ取ること。
後でまた塞ぎますので、スコップで切れ目を入れて、順番に並べて置きます。
19番までナンバーリングしたものの、結局ばらしたのは21個になりました。
前回の2倍です・・・午前10時から始めたので、今日中に一人で終わり切れるか心配でした。
一番上の石を外側に並べ、2番目を内側に置きました。
逆でも良いのですが、元気のあるうち、足下が自由な時は遠くへ運びやすいのでこうなります。
重ねても良いですが、倒れたら危ないです。
全部外すと『もう、後戻り出来ない!やるしかない!』と、自分を発憤させます。
修復の築き始めは、端っこの下からになります。
今回は、一番下の根石から2段目の1番の天端石(てんばいし)です。
使ってある石は、凝灰岩切石の四角錐ですので、面(ツラ)が垂直に近いと、必ず錐の尖りの下に敷石が必要となります。
(丁度、枕の厚みで頭の角度を調整する様に)
この敷石の大きさにより面の角度を調整します。
一般的には、石垣の詰め物の石をグリ石と言っていますが、錐の尖りの先に、引っ込み防止のための受け石は胴飼(どうがい)、隣の石との△の空間を埋める目止め石は、艫飼(ともがい)、総称して飼石(かいいし)と言われています。
※艫(とも)とは、船尾の事ですが、石にどうして飼うが遣われるのか?飼は蓋をする、祭事を司るの意味がありますので、ガッチリ固定するの意味があると勝手に解釈しています。
どの石も役割を持っており、いわゆる、 詰めが甘い と、時間とともに動き出し、面はよがみ緩んで石垣は崩壊します。
だから、ハンマーで叩けない狭い隙間は、樫の木の棒を仲介し突き詰めます。
ですが、これも感無しに叩いていると、せっかく合わせた面がゆがんだりするので、いつも面を見ながらの作業です。
本来なら、崩して出た石と土を元に戻すことで足りるのですが、また全然足りなくなりました。
(今更どこの業者が請け負ったのか分かりませんが、修復すると仕事の質が分かります)
仕方なく余計な時間を使って、石探しと人力で石運びをして、集めてきました。
丸石とハツリ石の『ぐり石』では、丸石の方が良く詰まり落ち着きます。
平たい石は横ずれがありますが、丸石は縦にも横にも動きません。
※素人は、日本のお城とかの石垣は、どうして万里の長城みたいな煉瓦状の積みやすい矩形・四角の石にしないのか?と疑問を持つのですが、地震と降雨量の多い日本では、錐の方が異種物(土や砂利)の噛み合いで摩擦が増し滑りにくく、排水もし易い造りだそうです。
熊本城の武者返しの様なオーバーハング的曲線は、四角錐の奥の下の詰め物の調整があればこそ面(ツラ)角を可変出来る工夫なのです。
13番の角石を据えました。
角の石は《算木積み:さんぎづみ》で、多段になると底面も平たい四角の石が算木(そろばんの発明以前に使われていた棒の縦・横に組み合わせて計算する道具)的組まれていますが、圧力が集中する角なのでここには大きく重たい石が使われます。
さて、14番の石を据えなければなりませんが、形・大きさをよく見て、突っ込める空間を目測します。
外した所にそのまま綺麗に入ることは100%無いので、奥の石を取り出して広げないと収まりません。
奥の石を取ると、積み木崩し的に上の石や土がどさーっと崩れ落ちます。
14番が綺麗に収まりました。
3番の算木積みの石、これが大きく重たいので、チェーンブロックの出番です。
2mの単管3本を自在クランプで繋ぎ三脚にし、チェーンブロック2個で持ち上げます。
難しいのは、ワイヤーの結い方で、重みがかかってもほどけないかけ方をします。
重たい石の下にバールを突っ込み隙間をこじ開けて、そこに通して結びます。
吊った石は、単管3本の真下に垂直にぶら下がりますが、元の位置の真上だと作業の邪魔になるので、わざと手前に吊り出し・吊り下げておきます。
据えるときには、前にぶってチェーンを緩め、とりあえず1ケ所でも下の石に接する吊るした状態に下すと、小さな力で動きますので、細かい調整がし易くなります。
面合わせが出来たら、バールを突っ込み、下敷きのワイヤーを外します。
この時も、指を挟みやすいので慎重に外します。
また面がずれるので、バールを使って調整します。
淡々と汗を流しながら、黙々と作業をするのみです。
ここでやっと半分くらい進みました。フーッ!
胴飼(どうがい)、艫飼(ともがい)の石を、しっかりと突き詰めます。
また石が足りなくなったので、手箕(テミ)に入れてまた運んで来ました。
さて、最後の面は19→18→12番と進めました。
上の段で、もし角の7番→8→9番と始めたら、12番が入らない時には、最後の右の石まで全部動かすことになりかねません。
8番を最後に入れましたが、入りきれず約1cm飛び出しました。
7番の面は既に決まっているので、8番の縦辺で一番に7番・9番に触れる突起部分をハツッて調整します。
やっと全部の石が築けましたが、これで完成ではありません。
天端石(てんばいし)の上の芝を元に戻すのですが、その前に[築玉・つきだま]をします。
土を叩き固めて天端石を覆うのです。
住宅や畑の築玉なら今回のやり方で良いのですが、水を溜める水田の場合は大変な苦労が要ります。
いわゆる石垣の畦から漏水が起きると、水は溜まらないしだんだんと穴が大きくなり石垣は崩壊します。
表土から下の約30cm(鍬底層)までの、今回やった胴飼(どうがい)、艫飼(ともがい)のグリ石を全て、粘土か赤土で固めなければなりません。地下の部分の漏水防止の為に固めた粘土や赤土を『鋼土(はがねど)』と言い、人が歩く畦の土盛りを『畦玉(あぜだま)』と言っています。
この構造を知ってて、全国各地の棚田の石垣を見ると、先人の石工(農民)の工夫や苦労が震えるほど分かるのです。
そんな事を考えながら、面の広い木槌で叩き固めました。
戻す芝の厚みも考えると、これくらいで良いでしょう。
芝を全部戻しました。
でもまだこれで終わりではありません。
一応それぞれの面の完成度を見てみましょう。
今回、最初に手がけた面・・・良し。
正面の長い面で、見栄を張って使ったのか大きな石ばかりでした。
最後の面、やはり最後の石のピース・8番が一番神経を遣いました。
最後の仕事とは、ここは水がある場所なので、芝に水を打ち、地固めして、土に汚れた石やアスファルトを綺麗に洗うことです。
う~ん、綺麗に仕上がった!
午前10時から午後4時まで昼飯カミカミで、やっと終えることが出来ました。
これで、4月10日の新規就農研修生を安心して出迎えることが出来ます。
参考に、先月の
石垣築き第1弾!
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