2020年9月6日
先日、栗園で見つけた《ナタガマ:鉈鎌》です。
親父の忘れ物が収穫作業中、落ち葉の中から見つかりました。
約2年間(当時93歳)放置されていて、すっかり刃身は錆だらけ、柄は朽ち果てようとしています。
年は取りたくないモノです!
予告 ”経験したことがない規模の台風10号” の対策も終えた日曜日。
夕方になりやっと、この鎌のレストアの時間が取れました。
今は、時より強い風が吹き、雨がぱらつく程度です。
さっそく、研ぎです。
砥石は、専用の水桶に荒砥から仕上げ砥まで2種以上を揃え、いつでもすぐに研げる様に常時浸しています。
包丁と違い、鎌は湾曲した刃ですので、普通の設置型の砥石より、手に持つ幅の狭い砥石が凹面をまんべんなく研ぐことが出来ます。
30分位かけて荒砥から中砥まで研ぎました。
(仕上げ砥ぎは、最後にします。)
錆は時間が経てば、金属の深いところまで凹くぼみを作って浸食しますが、幸い刃こぼれする浸食まではいってませんでした。
次は柄づくりです。
薪ストーブの燃料の、雑木中から3年物の乾燥樫を見つけ、これで柄を作ることにしました。
多少曲がっていますが、真っ直ぐでなくても良い部分を選べば、使い勝手の良い柄になります。
先ずはナイフで柄で、出っ張った枝のコブをそぎ落とします。
次は、カンナで平面にしますが、もともと曲がっているので、平ら(直線的)な所だけ削りました。
口金をはめます。
実は口金には、両端で径が大きい方と、小さい方がありますので、大きい径側を必ず突っ込みます。
錆の汚れが付いた所がキツイ所ですので、そこをカンナかけします。
だんだんと入るようになりました。
ディスクグラインダーのサンドペーパーで柄を滑らかに仕上げます。
次は、『柄込み』が入るための、柄込み縦割りです。
『柄込み』は、包丁やナイフでいえば、柄に入り刀身を支える『なかご』になります。
これがしっかり固定されていないと、使っている時に刃がグラグラして使い物になりません。
面倒ですが、鋸引きで柄込み縦割りをします。
裏表真っ直ぐ、棒の真ん中を鋸引きするのは意外と難しいです。
もう一つの難所は、『柄込み』は刀身側が厚く、先が薄いのでやっかいです。
帯状のサンドペーパーを挟み入れて、厚みのある方を削っても良いですが、鋸のアサリを利用して削ることにしました。
※アサリについて
横引きの鋸の刃※をよく見ると、一本一本の刃が互い違いに少し開いています。
※鋸には、板を縦に引く縦引きと、年輪を横断する横引きがあり、刃の造りが違います。
これは、幅広く切り出して鋸の刀身の厚さの摩擦を少なくするための先人の工夫です。
具体的には、写真のように刃の向きを入れ替えて、鋸を寝せてアサリの出っ張りで肉厚の部分(刀身に近い方)の厚さをヤスリを掛けるように削り求めます。
超二等辺三角形の柄込みがこれで密着出来ました。
さて、もう一度刃を引き抜いて、今度は『目釘穴:メクギアナ』の穴あけです。
柄にどこまで突っ込んだ時、目釘穴がどこに来るか、印を付けます。
5mmのドリルで穿孔します。
たった直径3cm位の棒ですが、ボール盤で固定するならともかく、フリーハンドで真っ直ぐ向こう側に穿孔するのは、これも意外と難しいです。
2つの穴といも、向こうまで綺麗に見通せます。
目釘には、真鍮製の棒や管を使っています。
管は値段が安いし、これくらいの力が係る所なら大丈夫です。
金切り鋸で、両端3~4mm位が出る様に切ります。
アンビル(金床)の上でポンチを管に打ち込み、カエリ(ピンの抜け防止の開き)のために縁を開きます。
金槌で『カエリ』形を整えて、目釘止めの完成です。
これで、ぐらつくことはありません。
真鍮は、優しく叩き伸ばすと左の様に切れ目なく広がりますが、ちょっと強く叩き過ぎると右の様に割れが入ります。
もし、柄が折れて取り換える時には、5mmのドリルで穴の手前だけでも穿孔すると、カエリが削れ飛び無くなりますので、突き出して管が抜けます。
これが管の便利なところです。
完成です!
肉厚のナタガマが蘇りました。
こんな曲がった柄は一般の商品にはありませんが、経験的にこの微妙な角度が、打ち込み角度に都合良く、グリップもしっかりして抜け防止にもなります。
さあ、もう山の中で独りぼっちにさせないぞ!
今度は僕が大事に使ってあげるから、もう一度頑張って!
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