これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

カレーライスが待っている

2023年06月11日 21時38分22秒 | エッセイ
 専業主夫である夫が一泊で出かけることになった。
「家のことができないけど、大丈夫かな」
「いいよ、いいよ。行っておいで」
 どうも、大学時代の仲間と何年かに一度、会合を持つことになっているらしい。普段は友達らしき人と接触もなく、スーパーやドラッグストアにしか行かないから、たまには刺激を受けた方がボケ防止になるだろう。
 しかし、その間の風呂掃除や洗濯物、食事の支度はどうしたらよいものか。一日や二日ぐらいは何とか頑張ろうと思っていたら、娘がやるという。
「ちょうど仕事も休みだし。夕飯も作るよ」
「わあい、ありがとう」
 5月、6月はそれなりに忙しく、仕事に専念できる環境があれば助かる。
「カレーでいいかな」
 娘の提案に二つ返事で了承した。ルンルン。
 その日はお昼ごろまで平和だったが、午後になってからいろいろなことが起きた。
「笹木先生、ちょっといいですか」
「何かありました?」
 まず、20代の教員から保護者対応について相談を受けた。ある教科の成績をめぐって不満があったらしい。話を聞いて、しかるべきアドバイスをする。
「ああ困った。会議室が空いていない」
 次に、校長先生からヘルプがあった。外部の方を呼んで協議会をしようとしたら、すでに部屋を取られていたという。笑いをこらえて、その場にいた先生と一緒に空き教室を探す。予約簿を見ながら、数学科の先生が言った。
「多目的室が空いてますよ」
「じゃあ、そこにするぅ~」
 こちらも解決した。でも何か落ち着かない。
 席に着くや否や、機械警備の警報が激しく鳴りだした。
「ナニ、どこで鳴ってるの?」
 パネルを見ると体育館らしい。警戒を解除せず、部活を始めたのかもしれない。現場に向かい、侵入者でないことを確認する。
「はあはあ」
 戻ってきたら会議が待っている。ああでもない、こうでもないと意見が交錯し、終わったときには6時を回っていた。「ちょっと遅くなる」というLINEをしようとして、娘がカレーを作ってくれることを思い出した。
「やばい。遅くなれない」
 急いで帰りの支度をした。パソコンの電源を落とし、洗った弁当箱を巾着袋に収納し、バッグにしまう。コーヒーカップを片づけて、机のカギも閉めないと。
 そのとき、週に一度勤務するスクールカウンセラーの先生が職員室に入ってきた。「うわあ」と焦ったが、私ではなく他の先生のところに向かっていった。「よしよし」と小さく息を吐き、荷物を持って出口を目指す。帰らなくては! 追手がかかっているわけでもないのに駅まで走り、引き止められないように用心した。
 電車に乗ってしまえばこっちのもの。特に遅延もなく、19:30には家に着いた。
「おかえり! ご飯できてるよ」
「やったぁ!」
 予告通り、目玉焼きの載ったカレーが登場した。牛肉もたっぷり入っている。



 副菜として、ラタトゥイユも用意されていた。



 ゴマ油が香ばしく、和風のテイストに仕上がっているではないか。
 さらに、ベーコン、白菜、大根おろしのさっぱりしたスープがありがたい。



 どれもこれも、一生懸命作ったことがわかる、ていねいな仕上がりになっていた。
「美味しい、美味しい」
 自分のために手を掛けてもらうと、一日の疲れが飛んでいく。
 幸せを感じた夕食であった。
「ただいま」
 翌日、夫が帰ってきた。これで炊事や掃除、洗濯の心配はない。
 日頃から家族に感謝せねばと、あらためて思った。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
カレーライス (ヤッギー)
2023-06-12 09:39:08
お嬢さんは先生に似てお料理が上手ですね。カレーとかラタトゥイユが美味しそうです。

お仕事が忙しかった分、大好きなご飯はほっとしますね。
返信する
好きこそ (砂希)
2023-06-12 18:51:53
>ヤッギーさん

娘は料理作りが好きみたいです。
いずれはヤッギーさんレベルを目指すかも?
自家製のラタトゥイユは初でした。
市販のものより軽くて食べやすかったです。
夕食バンザイ(笑)
返信する
頼もしい (白玉)
2023-06-16 16:33:38
主(婦)夫だってお出かけしたいもの。
家族がフォローしてくれるのは、うれしいですね。
忙しい日、帰宅したら豪華カレーディナーが!
私もいつか、そんな日が来てほしい♪
返信する
いつかは (砂希)
2023-06-16 22:14:08
>白玉さん

夫が出かけるなんて、とても珍しいことなんです。
家から出るのが億劫らしく、いつも引きこもっています。
年に1~2回はこういう機会があるといいですね。
娘は一人暮らしを経験してたくましくなりました。
息子君たち、実はできるのでは?
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