この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

ジョッキー。

2005-03-07 23:06:01 | 読書
松樹剛史著『ジョッキー』(集英社文庫)を読みました。
よいです。非常に気に入りました。
タイトルが示す通り競馬のジョッキーが主人公の物語です。
ジョッキーとしての腕の割に、乗り馬に恵まれず、生活費にさえ困窮する日々を送っている中島八弥の前に将来を有望視される新馬が現れるのだが・・・。
はっきりいってお話はこれ以上ないというくらい王道です。
王道とは何かというとそれはつまり、(工夫はあっても)ひねりがないということ。
主人公の八弥を始め、彼の後輩であるお坊ちゃんジョッキー大路、八夜に恋心を抱く女子アナの会沢、面倒見のよい厩務員の千葉、そして敵役といえる馬主の伊能、みなステレオタイプです。
はっきりいってどこかで見たことのあるようなキャラクターばかり。
でもですね、それでいいと思うんですよ。お話にひねりがないのも登場人物がステレオタイプばかりなのも決して悪いことではない。
むしろステレオタイプな人物ばかりを配し、物語を作るというのは非常な困難を伴うと思います。
なぜなら読み手は王道であるがために展開が読めてしまうからです。
展開が読めてしまうお話なんてつまらないと思うでしょう?
いえ、決してそう決まっているわけではありません。
事実自分は最後の天皇賞のレースで、こうなるだろうなぁとは予測しえても、それでもレースシーンはハラハラし、決着がついてほっと安堵の息を漏らしました。
そして大いに充足感を与えられました。
読み終わってまた、自分のお気に入りのシーンのところを読み返しました。
たぶんこれからも何度も読み返すでしょう。
繰り返します。『ジョッキー』は工夫はあってもひねりがあるお話ではありません。登場人物も典型的といってよいです。
しかしながら満ち足りた感動に飢えている方に非常にお薦めです。




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする