この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

問題はそこじゃない。

2017-01-18 20:31:31 | 政治・経済・時事
 生活保護受給者の自立支援を担当する神奈川県小田原市の複数の職員が、「保護なめんな」「不正を罰する」などと、受給者を威圧するような文言をプリントしたジャンパーを着て各世帯を訪問していたそうです(こちら)。

 そのことを報じるミクシィニュースでは職員を擁護する意見が目立ちました。以下抜粋。
>不正需給は排除する。って当然のことやん?
>え?なんで?不正してない人から見たら何もビビることないじゃん。てか生活保護なんて最後の最後の手段なんだからそれくらいの覚悟もって申請するのが当たり前じゃないの?
>保護を食い物にするクズを糾弾するものでしょ?何が悪いの?
>やめる必要ない。支持する。ベンツ乗って豪華な家に住んでるチートが許せないからでしょ?
 切りがないので止めます。
 何て言うか、問題のジャンパーを着て訪問していた職員も、その職員を擁護する人たちも考えが浅いとしか言いようがないです。

 生活保護の不正受給が許されるか否かについては議論の余地はないです。
 許されるわけがない。それは絶対的な正義と言ってよいですよ。

 しかし、生活保護の不正受給は許さないという文言が書かれたジャンパーを着て職員が各世帯を訪問していいかということは、それとはまったく別の問題なんですよね。そこを職員も職員を擁護する人たちも履き違えています。

 スーパーマーケットに置き換えて考えてみましょう。
 スーパーの入り口付近にはたいがい「万引きは犯罪です。警察に通報します。」といった文言が書かれたポスターが貼られています。それは別に珍しい光景ではありません。
 しかしスーパーの店員が全員「万引きは犯罪です。警察に通報します。」と書かれたジャンパーを着ていたらどうですか?嫌ですよね?少なくとも自分はそんな威圧的なスーパーは利用したくないですね。例え万引きをするつもりがなくても、です。

 今、スーパーマーケットを例に出して考えてみましたが、ぶっちゃけ民間の企業であればどういう営業スタイルであっても構わないと思います。
 店員が「万引きは犯罪です。警察に通報します。」と書かれたジャンパーを着ているスーパーマーケットがあろうが、ラーメンより先に高菜を食べたら店から追い出されるラーメン屋があろうが、構わないことです。
 なぜなら私たちには気に入らない店は利用しないという選択肢が与えられているからです。不快な思いをした店は二度と利用しなければいいだけの話です。

 しかし公的機関となればそういうわけにはいきません。
 職員の態度が威圧的だったから、隣りの市の役所に行こう、なんてわけにはいかないですから。

 繰り返しますが、生活保護の不正受給自体は許されることではありません。
 しかし、重要なのは、正しく生活保護を受ける権利のある人が、そのジャンパーに書かれてある文言を目にしたらどう思うか、です。
 不正してない人から見たら何もビビることない、なんてのん気なことを言ってる人もいますが、想像力がなさ過ぎます。
 親子三人で暮らしていて生活が苦しく、恥を忍んで生活保護を受けることにした母親が、その文言を目にして、やっぱり生活保護を受けるのは止めようと思ったとしても不思議はないですよね。その結果、親子が餓死したら?
 ジャンパーを着てその家を訪問した職員は墓前でどう詫びるつもりなんでしょうか?悪いのは自分じゃない、生活保護を不正に受給する奴らが悪いんだとでも言うつもりなんでしょうか?

 世の中、本当に想像力が欠如した奴が多すぎます。
 問題はそこじゃない、って柄にもなくつい言いたくなります。
コメント (13)
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