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(BL小説)風のゆくえには~1999年7の月

2015年08月18日 10時15分49秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切

R18にならない程度にイチャイチャさせよう第3弾。
終わった直後にベッドの中でうだうだイチャイチャしてる話。

登場人物
渋谷慶 ……医大6年生。身長164cm。天使のような美形。でも性格は男らしい。
桜井浩介……高校教師3年目。身長177cm。表、普通。裏、病んでる。

二人は高校時代からの親友兼恋人同士。
浩介は慶の大学に近いアパートで一人暮らししており、半同棲状態。
1999年7月31日(日付的には8月1日)の深夜の話。浩介視点で。


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 セックスした直後、慶がぽや~っとしている時がある。その時の慶は本当にかわいい。たまらない。

 いや、慶はいつでもかわいいし、かっこいいし、それでいて、してる最中は別人のように色っぽくて切なげ……だけれども、直後の無防備な慶は格別なのだ。

 でも、毎回そうなるわけではない。ケロッとして「風呂入るぞ!」とか言うときもある。
 今までの経験からいって、すごく疲れていた場合や、ジラしてジラしていかせた場合(でもやりすぎると怒りだすため加減が難しい)に、ぽやーっとなる傾向があると思われる。

 今日は、疲れているところを少々乱暴気味にことを進めた上、ジラしていかせた。
 そうしたら、予想以上に、ぽや~っと放心状態になってくれて……。

(たまらない…………)
 心の中でつぶやく。
 そっとその白い裸体を抱き寄せると、慶がおでこをきゅきゅっとおれの肩にこすりつけた。か、かわいすぎる………。

「慶………」
「ん………」

 愛しすぎて、どうしたらいいのかわからない。柔らかい髪をそっと撫でて、白い額に口づける。
 ポヤっとした慶を堪能したくて、無言のまま腰を抱いて頭をなでたりしていたのだが、

「…………あ」
 テーブルの上に置いた慶の携帯が鳴り出した。メールだ。

「慶、メールだよ」
「ん~いい。ほっとけ」
「でも………」

 今、夜中の12時を少し過ぎたところ。こんな遅くにメールしてくるなんて、相当仲が良い相手なんだろうか。今メールを見ようとしないのはおれに知られたくない相手だからなんだろうか……。
 嫉妬心に支配されて苦しくなってくる。慶は友人が多い。いちいち気にしていたら身が持たない。それは分かっているのだけれど……。

 携帯がまた鳴りだした。もう一通きたようだ。

「慶、見ないの……?」
「ん~……誰?」
「誰って………」

 慶は面倒くさそうにタオルケットにくるまり、ペチペチとおれの腕を叩くと、

「見てくれ」
「え」

 見ていいの?

「面倒くせー。読んでくんねえ?」
「う、うん」

 うわ………う、嬉しい。メール読んでいいなんて、何も隠し事ないってことだよね。

「ちょっと待ってね……」
 内心の喜びを押し隠して、テーブルに手を伸ばして携帯を取る。

「あ………南ちゃんだ」
 ほっとする。慶の一つ年下の妹、南ちゃんからだった。

「南? なんだって?」
「えーとね………『1999年7の月、無事に終わったね』だって」
「1999年7の月……? あ~~そういやそうだな」

 慶がおれの腕にぴったり頬をくっつけて、携帯を覗き込んでくる。その様子がかわいすぎて襲いたくなってしまう。でもダメだダメだ。慶は疲れている。二回目は無理だろう。衝動をおさえるため、会話に集中する。

「それってノストラダムスの大予言?」
「そうそう。1999年7の月に恐怖の大王がおりてくるだろうってやつ。小学生の頃すっげー流行ったじゃん」
「ああ……そうだね」

 ふっと小学校時代の記憶がよみがえって、手足が冷たくなる。
 あの時おれは………恐怖の大王がおりてくるなら、今すぐおりてきて世界を壊してくれ、と本気で願っていた。こんな世界なくなってしまえばいい、と………。

「…………」
 苦しい。過呼吸が起こりそうだ。とっさに慶を抱きよせる。慶の体温。慶の匂い。大きく息を吸う。大丈夫、大丈夫。今のおれには慶がいるから大丈夫……。

「……浩介? どうした?」
「………どうもしないよ」

 見上げた慶の額にキスをする。すぐに呼吸が落ちついてくる。大好きな慶……。
 何も言わずに背中に手を回してくれた慶をもう一度強く抱きしめてから、再び携帯を持ち上げる。

「もう一通はね……『どう過ごしてる?私は予想通り』だって」
「あー……」

 おれの腕枕の上で、慶も携帯を見上げて、あーと唸った。

「そんな話したなあ……」
「なんの話?」
「んーーーー」

 慶はおれから携帯を取り上げると、何か短く打ち、送信してから、ポイッと枕元に携帯を放った。

「小学生の時、二人でこの予言の話をしたことがあるんだよ」
「予言の話?」
「自分たちは予言の時にどう過ごしてるかってさ。当時は25歳なんてまだまだ先だと思ってたんだけどなあ」

 本当に。25歳なんてずっとずっとずっと先のことだと思っていた。
 小学生の慶と南ちゃん、かわいかっただろうなあ。

「南は、自分はもう嫁に行ってて、旦那と一緒にいるだろうって予想したんだよ」
「わあ、すごい。確かに予想通りだね」

 南ちゃんは先月結婚したばかりなのだ。

「慶は? なんて予想したの?」
「あー……まあ、なんだ。まあ、いいじゃねえか」
「え?」

 なんだ?
 慶はタオルケットを顔まで引き上げて、目だけ出すと、

「まあ……野郎と裸でベッドにいるってことは1ミクロンも思いつかなかったけどな」
「そりゃあそうだね」

 おれだってそうだ。もっと早く地球破壊しろ、なんて願っていた。
 こんな……こんな幸せな時間を過ごしているなんて、1ミクロンも想像しなかった。

「もしかして、慶も、結婚して奥さんと一緒にいるって予想してたの?」
「いや?」

 さわさわと慶がおれの脇腹のあたりを触ってくる。くすぐったい。

「じゃあ、なに?」
「んーあー」

 慶は言いたくないようで、誤魔化すようにヘソのあたりをグルグル触ってくる。くすぐったいって。
 そうこうしているうちにまた携帯が鳴りだした。今度はメールじゃない。慶が面倒くさそうに携帯を取った。

「………なんだよ?」
 相手は南ちゃんのようだ。

「んなことでイチイチ電話かけてくんなよ」
 慶の眉間にシワが寄っている。何を言われてるんだろう?

「ああ? いいけど……余計なこと言うなよ?」
 慶が仏頂面のまま、おれに携帯を渡してきた。

「南がお前と話したいって」
「え」

 言うと、慶はおれに背を向けて、タオルケットに小さく包まった。慶は丸まって眠ることが多い。猫みたいでかわいい。

「もしもし?」
『お兄ちゃんがなんてメールしてきたか気になるでしょ?どうせお兄ちゃん教えてくれないんでしょ?』

 南ちゃん、何の挨拶もなく唐突に言ってきた。

 メールももちろん気になるけど、予想の中身が先に気になる。
 その心中を読んだかのように、南ちゃんが、あら? と言った。

『もしかして、お兄ちゃん、何も話してない?』
「う、うん……」

 あいかわらずなんでもお見通し南ちゃん。

『あのね、私達が小学生のときに、ノストラダムスの大予言って流行ったでしょ?』
「うん………」
『それで私達、予言の日がきたときに自分たちが何をしてるか予想したのよ』
「うんうん」

 その中身を教えてほしい。

『お兄ちゃんの予想はね』
「うん」

 ドキドキする。

『大好きな人と一緒にいる』
「え………」
『なんかかわいいでしょ?』
「うん………」

 そ、それで………

『それでさっきメールで……』

 南ちゃん、言いかけたのに、なぜかやめてしまった。電話の向こうで何か話しかけられている。旦那さんだろうか。

『あ、ごめん、浩介さん。また今度会った時に話すわ』
「え」

 ツーツーツー……
 無情にも電話は切られてしまった………。み、南ちゃん……。

(大好きな人と一緒にいる……)

 慶は南ちゃんになんてメールしたんだろう……

「………」
 背中を向けている慶……眠っているんだろうか……

「………」
 誘惑に負けて、コッソリと慶の送信したメールを呼び出す。そして…………

「!」
 息が、止まるかと思った。

 大好きな人と一緒にいる、と予想した小学生の慶。25歳の慶が書いたメールには…………

『予想的中』

 予想、的中、だって。

「慶………」
 後ろから、ぎゅうっと抱きしめる。柔らかい髪に顔を埋める。大好きな大好きな大好きな慶………

「………電話終わったのか?」
「うん」
「南、なんだって?」
「…………」

 もぞもぞと慶がおれの指に指を絡めてつないでくれる。ああ………幸せだ。

「話してる途中で切れちゃった。旦那さんに呼ばれたみたいで」
「そっか」

 指を軽くくわえられる。柔らかい唇………。ただでさえ固くなっているものがますます固くなってくる。さっき終わったばかりだというのに、我ながら困ってしまう。慶が魅力的過ぎるのがいけないんだ。気をそらすためになんとか話を続ける。

「ノストラダムスの大予言って、あれだけ大騒ぎしたのに何も起きなかったね」
「いや? 今頃、外では恐怖の大王が大暴れしてるかもしんねえぞ?」
「あはは。そうだね。でも………」

 でも、もし、そうだとしても………

「もし、そうだとしても………いいや、おれ。慶が一緒にいてくれるなら」
「そうだな……」

 慶はくるりと体をこちらに向けると、いきなりおれの首にパクっと食いついた。な、なに?

「慶?」
「んじゃ、恐怖の大王に地球壊される前にもう一回やっとくか」
「えええっでも………っ」

 慶の繊細な指がつーっと下におりてくる。

「ちょ……っ、待って………っ」
「さっきからガチガチになってるくせに何が待って、だよ」
「…………」
 
 バレてたのか。なるべく当たらないようにしてたのに。

「でも、慶、疲れてるんじゃ……」
「疲れてるから、今度はゆっくりな」
「………ん」

 ゆっくりと唇を重ねる。足を絡ませる。
 大好きな人に大好きと思ってもらえる幸せ、一緒にいられる喜びをかみしめながら、予言の最後の夜は過ぎていく。



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以上、風のゆくえには年表を見ていて、いきなり書きたくなったノストラダムスの大予言の話でした。

1999年7月なので、iモードメールがはじまってまだ半年とかそんなもんです。
慶と南はまだショートメールでやりとりしてます。

しかし……こんな一人一台携帯を持つ時代がくるとはねえ。しかも今やメールじゃなくてラインが主流だったりして……。
昔、ポケベルが出た時ですら、すっげー!!って感動したのになあ…。

ちなみに、浩介と慶はポケベルは持ってませんでした。浩介はPHSが出てすぐに買いましたが。(携帯は高くて手が出せなかったの)
って、今の若い子、PHS知らんよね^^;

1999年7月31日、私は「今日で地球終了ー!」とか言いながら仲間内で飲んでました。ちょうど土曜日だったんだよね。
携帯は持ってたけど、メールはできなかったから、ポケットボードを買ったのがこのちょっと前じゃなかったかなあ。
って、ポケットボードなんて、もっと知らんってね^^;

なんて記憶をよみがえらせつつ……
そんな過去話をちょいちょい書いていきたいと思っております。

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クリックしてくださった方、本当に本当にありがとうございます!
画面に向かって拝んでおります。ありがたやありがたや……と。本当にありがとうございます!

こんなに長々と書かないで(今回も、短く短くと思いつつ5000字越してますし……)、
細切れで更新すればいいのかなあ、とも思うのですが、
私の中で、やはり、一回の更新でそれなりの完結がないと……というのがありまして……
連続ドラマフリークだからかもしれません。

そんなわけで、更新頻度をあげることもできないのですが、今後ともお見捨てなきよう、よろしくお願いいたします!!


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