注:具体的性表現を含みます
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「桜井先生はちゃんとゴムつけてる?」
「………は?」
突然聞かれて、素で聞きかえしてしまった。
今日はバスケ部の夏合宿最終日。
あと数分で就寝時間だというのに、OBが遊びに来ているせいか男部屋が妙に盛り上がっているため、注意をしにきたのだけれど……
「君たち、なんの話してんの……」
「避妊は男の義務って話だよ。大事な話でしょ?」
昨年までキャプテンだった大野君。背も高くて顔も良くて女の扱いにも慣れているため、在学中も非常にモテて、しょっちゅう違う女の子と歩いているところを見かけた。
「先生、高校の時から付き合ってる彼女がいるんだよね?」
「あー……まあ……」
正確には彼女ではなく彼氏です。なんて言うわけにはいかず、大野君の質問に適当に肯く。
「高校の時、買うの緊張しなかった?」
「んー……高校の時は買ったことないからなあ」
「え!」
思わず普通に答えてしまって、あ、と思ったけれど遅かった。
大野君たちOB含め、現役高校男子まで話に食いついてきてしまった。一年生はへばって全員もう寝ているので助かった。こないだまで中学生だった子に聞かせる話じゃないだろ、と思ったりして……。
「じゃ、生で……」
「あ、ううん。高校の時はしなかったから」
「えー………」
疑いの目を向けてくる男子たち……。なんだかなあ……。
「本当に、全然、何もしなかったんですか?」
「えーと……」
ぐるぐるぐるっと7年ほど前の記憶を呼び起こす。何もしなかったって、いや……
「入れること以外のことはしてたかな……と」
「おおっ」
どよどよっとどよめきがおこる。
なんだろうなあ。この高校生男子のノリって昔から変わらない。おれが高校の時の合宿の夜もこんな感じだった。
「よく我慢できたね。オレ絶対無理」
「うーん。コンドームだって、正しくつけないと避妊に失敗することもあるしね。入れないことが絶対の避妊だよ」
「じゃあ、いつからちゃんとするように?」
「大学入ってから。高校生じゃ何も責任とれないけど、まあ大学生なら……って思って」
なんて、適当なことを言ってみる。やろうとしたけど痛そうでできなかった、っていうのが本当のところなんだけど、ここは先生らしく言ってもいいだろう。なんてね。
「でもさ、ゴムするタイミングって難しいよな」
「なー」
OBの子達がうんうんと言い合っている。知った風の大野君が「だ、か、ら」と高校生に指を突き刺した。
「だから今のうちから練習しとけって言ってんだよ。もたもたしてたらかっこ悪いだろ」
「そりゃあ……」
「で、今、桜井先生も言った通り、正しくつけないと意味ないんだからな」
「正しくって……」
高校生たちが興味津々におれを振り返る。
「正しくって、どうやって?」
「え」
「ほら、先生」
大野君がポイッと一つ、コンドームを投げ渡してくる。
「みんなに教えてやってよ」
「え………」
うーん………困った。
「最近してないから忘れちゃったなあ……」
「え、最近ご無沙汰なの?」
ニヤニヤした大野君に、いやいやと首を振る。
「そういうわけじゃないんだけど」
「え! それはさっ」
今度は現キャプテンの柳沢君が食い込んでくる。
「歳も歳だし、結婚を視野にいれて生でしてるってこと?」
「いやいや。だいたい歳も歳って、そんな歳じゃないよ」
「じゃあ、何?」
「何って……」
メンバー全員に注目される中、肩をすくめてみせる。
「いつも付けてもらってるから、おれ、自分では付けないんだよね」
「…………」
「…………」
10秒ほどの沈黙のあと……
「なんだとー!」
「くっそー!うらやましすぎる!」
「オレ、今初めて桜井先生のこと尊敬したー」
一斉に口々に叫んだ男子達。
わあわあぎゃあぎゃあ盛り上がりすぎて、
「男子うるさい! って、桜井先生まで何やってるんですか!」
女子部の顧問の先生に怒られた。
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と、いう話をしたところ、
「お前、子供相手になんの話してんだよ……」
心底呆れたように慶に言われた。
「いやあ、つい本当のことを。ちょっとした自慢話?」
「………アホだな」
慶の冷たーい目。ゾクゾクする。この冷たい目が、あと数分後には熱を帯びた切ない光に変わると思うと更にたまらない。
慶がコンドームの袋をプラプラと指でつまみながら、
「で? 付け方のコツを教えろって?」
「うんうん」
現在、している真っ最中。
慶が騎上位になるというので、それならゴムつけて、と言うついでにバスケ部の話をしたのだ。そうしたら慶が渋々コンドームを出してきた。
今までに何度か中で射精してしまったことがある。そのほとんどが騎上位の時。
慶は「別に中で出してもいいのに」と言ってくれるんだけど、そうすると後から全部出さないといけなくて慶が大変そうで……。
そりゃ、中出しの気持ち良さといったら筆舌に尽くしがたいものがあるから、できるものならしたい。けれども、慶が大変なのはやっぱり避けたい。そういうわけで、かなり高級といえるコンドームを購入して常備している。
寝そべったおれの腿の上に座った状態で、慶の指がゆっくりとおれのものをしごいてくる。天使のように美しい慶にジッと見られながらしごかれると、恥ずかしいくらいすぐに固く大きくなってしまう。
慶が真面目な顔をして言う。
「まあ、まず、本勃ちの状態でつけるということが第一条件」
「………っ」
先走りのぬるぬるを細い人差し指になぞられ、ビクビクっと震えてしまう。
「半勃ちでつけると途中で取れるからな」
「うん……」
そう、それで前に取れてしまったことがある。考えてみたら、慶が付けてくれるようになったのは、それ以降のことだ。
「あとは……ゴムは乾くと破れやすくなるからサッサとつけること」
「……………」
「袋から取り出すときも破らないように気を付けて」
器用に袋を破いて取り出したものを、亀頭にポンとのせられる。
「ここで注意しないといけないのが、この精子溜まりに空気が入らないように潰すこと」
「………」
なんだか……実験めいてきたな……。
「毛を挟みこまないように避けてから、下までおろす」
「………」
するするとあっという間に透明な膜に覆われたおれのもの……。
はい。できあがり、といって慶が肯いた。
「で、お前は大丈夫だけど、包茎の奴は一回上に戻してからもう一度下に下げた方がいいらしいぞ」
「…………うーん」
思わずうなってしまうと、慶が眉間にシワを寄せた。
「何だよ?」
「………なんか違う」
「は?」
ますます眉を寄せた慶に、口をとがらせてみせる。
「なんか……事務的すぎ。色気がない。ムードがない」
「…………なんだそりゃ」
あ、今、鼻で笑った。鼻で笑ったなー!
「だって大切なことだよ!」
「うるせえなあ」
またまた呆れたように慶が言う。
「そんなのやることやるときゃ関係ねえだろ」
「関係あるよ! ほら、せっかくゴムつけてくれたのに、萎えてきちゃったじゃん!」
「ああ?」
慶がジッと見てくる。
すると、むくむくと復活してきてしまった……。正直すぎるおれの息子……。
「萎えてねえじゃん」
「そーれーはー慶が……んんんっ」
いきなり唇を重ねられ、文句の続きは言えなかった。
舌が乱暴に押し入ってくる。口内をかき回され、唇を吸われ、思わず声が出てしまう。
「慶……っ、あ……っ」
慶の腰がおりてくる。おれのものの上に確実に。ゆっくりとからめ取られる。そしておれたちは一つになる……。いつもながら、すぐに快楽の頂点に連れていってくれそうな締め付け。苦しいほどだ。快楽と苦痛は似ている。
慶の手がおれの手を強く握ってくれる。
「ゴチャゴチャうるせーんだよ。お前は」
「だって………っ」
言葉とは裏腹に、おれを見下ろす慶の瞳に、愛おしさの光が灯っている。瞳が「好きだよ」と言ってくれている。
「浩介」
「………っ」
ぎゅっと心臓が握られたようになる。おれの名前を呼んでくれるその声に愛があふれている。愛しすぎて体が破れそうだ。
細かく腰を揺り動かしはじめながら、慶がボソッと言う。
「やっぱ、生でやりてえなあ」
「……だめだよ」
誘惑にかられそうになるのを押しとどめる。
「慶、あとで、大変、に……」
「わかってるけど……」
動きをとめた慶。切なげに瞳が揺れている。
「もっと近くでお前を感じたい」
「慶……」
ああ……おれはなんて幸せなんだろう。
ゆっくりと体を起こす。繋がったまま、その美しい額に口づける。
「近くに、いるよ?」
「たりない」
せがむように、慶の唇が求めてくる。
「全然、たりない」
「ん……」
そして……唾液が滴り落ちるほど激しく、舌を絡め、吸い尽くす。苦しいほどに。まるで唇が快楽の頂点に向かわせてくれるかのように、重ね合い、求め合う。自然と腰も動いてくる。
求められる充実感に頭が破裂しそうになったところで、
「あ……っ」
緩やかに頂点に達してしまった。慶の中にドクンドクンと放出されていく。
「浩介……っ」
同時にぎゅうっと背中にしがみつかれた。腹に生温かいものが伝ってくる。
「あ……いっちゃった」
「慶……」
いっちゃった、って! 普段は言わない可愛い言い方に、きゅんとなる。慶、キスと後ろの刺激だけでいけたんだ。嬉しい。
「慶、大好き」
「ん」
かわいい慶の頬にキスをしてから、ゆっくりと引き抜く。
コンドーム、無事に役割を果たしてくれたようだ。
「漏れてない。慶先生、完璧です」
「だろ」
慶が柔らかく笑う。
「これが正しいコンドームのつけ方だ。覚えとけ」
「それは……キス付きってこと?」
「そういうこと」
軽く頬にキスされる。幸せすぎる。
「もう一回やろーぜー」
「だから慶、その誘い方どうなの……。ムードってものが………」
「分かった分かった。今度は生でな。外出しすればいいだろ」
「本当は外出しも危険なんだよ。先走りとか出ちゃってるし、それに……」
「分かった分かった」
「んんん」
再び唇を重ねられ、流される。
ゴム一枚挟んでいてもいなくても何も変わらない。慶の一番近くにはおれがいる。
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以上でやめときます^_^;こいつらキリがない^_^;
前回暗かったので、明るい話をと思ったら、なんだかアホらしいお話しになってしまいました。
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