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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 19-2(侑奈視点)

2017年02月07日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘

 寺ちゃんとは、高校2年生で同じクラスになったことで知り合った。

 見た目はどちらかというと地味目、だけど明るくて人懐こくて、私のこともすぐに「侑奈」と呼びつけで呼んできた寺ちゃん。小柄でショートボブの、少し幼く見える女の子。

 相澤、泉、小野寺、と出席番号が続いていたので話すようになり、そして、ドラマの話で盛り上がったことをキッカケに仲良くなった。

 この半年以上、喧嘩もせず、ずっと仲良くしてきた。これからもそうだと疑いもしなかった。言い方は悪いけれど、この一年楽しく過ごすためのクラスの友達、程度の上辺だけの関係なので、喧嘩もしようがなかったともいえる。私には諒と泉がいるから、そんな深く付き合う友達なんて必要ない。

 だから、さっきのことには気が付かなかったことにしようと思った。このまま波風立てずに残りの2年生生活を送ればいい。そう、思ったのに……

「……どうして何も言わないの?」

 ずっと押し黙っていた寺ちゃんがたまりかねたようにそう言って、立ち止まった。ケーキの食べ放題のお店までは学校から歩いて25分くらいなので、4人でダラダラと歩いている最中のことだった。

「侑奈、今井先輩から聞いたんでしょ?写真のこと」
「…………」

 ああ、あの演劇部の元部長さん、今井って苗字だったな……とぼんやり思う。

「何も聞いてないよ?」
「嘘。今井先輩、私のこと見て慌ててたじゃん」
「…………」

 寺ちゃんのこわばった顔……
 あーあ……寺ちゃん、言わなきゃ知らないですんだのになあ……

「写真って、なんのことだ?」
「………貼り紙の」
「貼り紙?」
 
 諒も泉も、ハテ?と首をかしげた。やっぱり二人も忘れているらしい。

 でも、寺ちゃんは、芝居じみた感じにワッと手で顔を覆って、ごめんなさいごめんなさい、と言いはじめて……

「だから、なんなんだよ?」
「あの……っ」

 泉の問いかけに押され話しだした寺ちゃん。
 内容は、やはり聞きたくないようなものだった。


 美人で頭もいい侑奈。学校で一番モテる男が彼氏で、泉とも仲が良くて、すごくうらやましかった。
 文化祭の演劇部の発表の最中、舞台上から三人が並んで座っているのを見て、その仲を壊してやりたいって気持ちが抑えられなくなった。
 その夜、侑奈に電話した際、「これから知り合いの男の子がバイトしているカラオケボックスを見に行く」というのを聞いて、まだ他にも男がいるのかって腹が立った。そして、チャンスだとも思った。その人と一緒にいるところを写真に撮って利用しようと思った。それで急いでそのカラオケボックスに行ったら、ちょうど桜井先生の車に乗りこもうとしている写真が撮れて……

「それで今井先輩にメールして……」

 今井先輩からは時々「高瀬君、あの女と別れてくれないかな」ということを聞かされていたので、彼女に送れば何かしらのアクションをおこすに違いない、と思ったからだ。でも、まさか、あんな風に貼り紙にするなんて……。

「ごめんなさい……」

 シュンとうつむく寺ちゃんに対して、別に怒りとか悲しみとかは浮かばなかった。むしろ、寺ちゃんのそういう気持ちに気が付かなくて申し訳なかった……という気もした。

 そもそも、寺ちゃんは写真を撮って送っただけで、貼り紙作りには参加していない。それに貼り紙自体も特に実害があったわけでなく、むしろ今考えると、ボランティア教室に参加するきっかけになったので良かったとさえ思える。そこも大きいかもしれない。

「まー、あれだな? 恋する女の何とかってやつだな?」
「なにそれ」

 泉の知った風な言い方に笑ってしまう。泉もやはり寺ちゃんに対して思うことはないようだ。

「だってユーナのことが羨ましいって、結局、小野寺も諒のことが好きだったって話だろ? あーモテモテ君は罪作りだなー」
「……違うっ」

 泉が言うのを遮ってブンブン頭を振った寺ちゃん。

「……寺ちゃん?」
「違う、違う……っ」

 そして寺ちゃんは、唇をかみしめたまま、泉のことを見上げた。

「違う。私、諒君のことなんか好きじゃない……っ」
「え………」

 寺ちゃんの必死な顔。
 寺ちゃん、それ……まさか、もしかして……

「諒君なんか、だって!」
 全然分かっていない泉は、笑いながら諒を振り返ると、

「なんかって言われた!諒!お前、なんかって言われた!笑える!」
「優真」

 でも諒は、真面目な顔で眉を寄せて泉の腕を掴み、ぐっと自分の方に引っ張った。

「優真、ダメ。これ以上聞かないで。ほら、行こう」
「え? 何だよ?」
「いいから。早く」

 引きづられるように歩いていく泉。
 その後ろ姿に、寺ちゃんが叫んだ。

「私が好きなのは、泉だから!」

 寺ちゃんの顔は真っ赤で………、真剣で、それでいて、ちょっと恥ずかしがっているような表情をしていて……

(初めて見た)

 この子はこんな顔も持っているんだ、となぜか少し感動した。



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お読みくださりありがとうございました!
侑奈視点書き終われなかった……。まだ途中ですが、とりあえず書いたとこまで更新します~(^_^;)
続きは明後日、どうぞよろしくお願いいたします!

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コメント (2)
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