そんでもって、池袋の改札。
怪しい子供二人が改札を抜けていく。
普通だったら抜けていく。切符を出して抜けていく。まだ自動改札なんかじゃない。
駅員が言うことには、最初のヤツでピンときて、後ろのヤツを捕まえる、ということらしい。
つまり、エムが改札を通り抜けて、後に続く僕は、体格のいい駅員に腕をガッと掴まれたというわけ。そのまま駅員室へ直行。
・・・なんて不運なんだ・・・。
駅員室に連れて行かれた僕は、駅員から叱責混じりでこう言われる。
「仲間は逃げたな。仲間の居場所を白状しな」
バカな中学生とはいえ、オトコである。仲間を売るくらいなら潔い死を選ぶ。と、クリストファーウォーケンが言っていたような気がする。絶対に言わないぞ!と口を真一文字に結ぶ僕なのである。
しかし、こちらはコドモ、相手はオトナ。
子供の考えることなど、大人は全部お見通しなのである。非常に残念だが、それが現実だ。
「ほら、放送で呼び出すから仲間の名前を言え!早くしろ!クソガキ!」
というちょっと怖めの脅しに、クソガキはあっという間に陥落するのである。そう、クソガキは、簡単に仲間を売ってしまうのである。ごめんよ、クリストファーウォーケン。
僕は、しょんぼりしながら、ポツリとつぶやく。
「僕の仲間は・・・スギヤマコウイチ・・・です」
ほどなくして、駅構内に放送がかかる。
「・・・からお越しのスギヤマコウイチ様、スギヤマコウイチ様、至急駅員室までお越しください」
果たして、エムは来るのだろうか?そもそも、スギヤマコウイチという名を覚えているのだろうか?エムが来なかったら、僕はどうなってしまうのだろうか?
ドキドキしていた。
囚われの身でメロスの帰還を待つセリヌンティウスの心境は、こんな感じだったに違いない。
しばらくして、駅員室にヒョッコリと姿を現したもう一人のクソガキ。
「すいませーん、スギヤマコウイチでーす」
ホッとするやら、吹き出したくなるやら。どの面を下げて「スギヤマコウイチでーす」とか言えるのだろうか。
それから二人で、しこたま怒られて、ゲンコツをされて、もうしませんと約束をさせられて、大人料金を徴収されて、やっと解放された。
そんで、それから名画座に三本立て500円の映画を観に向かいながら、駅員に対する罵りを各々口にするのであった。
そんで、議論を交わすのである。
「来週はどうする?来週も子供運賃でいく?」
僕は今、エムに問いたい。
あの時、偽名を考えた意味ってあったのだろうか?と。結局普通に怒られたわけだし。
まぁ、なんにしても、中学生というのは、どこまでもバカなのである。バカすぎて楽しくなっちゃうのが、中学生なのである。
つづく。
怪しい子供二人が改札を抜けていく。
普通だったら抜けていく。切符を出して抜けていく。まだ自動改札なんかじゃない。
駅員が言うことには、最初のヤツでピンときて、後ろのヤツを捕まえる、ということらしい。
つまり、エムが改札を通り抜けて、後に続く僕は、体格のいい駅員に腕をガッと掴まれたというわけ。そのまま駅員室へ直行。
・・・なんて不運なんだ・・・。
駅員室に連れて行かれた僕は、駅員から叱責混じりでこう言われる。
「仲間は逃げたな。仲間の居場所を白状しな」
バカな中学生とはいえ、オトコである。仲間を売るくらいなら潔い死を選ぶ。と、クリストファーウォーケンが言っていたような気がする。絶対に言わないぞ!と口を真一文字に結ぶ僕なのである。
しかし、こちらはコドモ、相手はオトナ。
子供の考えることなど、大人は全部お見通しなのである。非常に残念だが、それが現実だ。
「ほら、放送で呼び出すから仲間の名前を言え!早くしろ!クソガキ!」
というちょっと怖めの脅しに、クソガキはあっという間に陥落するのである。そう、クソガキは、簡単に仲間を売ってしまうのである。ごめんよ、クリストファーウォーケン。
僕は、しょんぼりしながら、ポツリとつぶやく。
「僕の仲間は・・・スギヤマコウイチ・・・です」
ほどなくして、駅構内に放送がかかる。
「・・・からお越しのスギヤマコウイチ様、スギヤマコウイチ様、至急駅員室までお越しください」
果たして、エムは来るのだろうか?そもそも、スギヤマコウイチという名を覚えているのだろうか?エムが来なかったら、僕はどうなってしまうのだろうか?
ドキドキしていた。
囚われの身でメロスの帰還を待つセリヌンティウスの心境は、こんな感じだったに違いない。
しばらくして、駅員室にヒョッコリと姿を現したもう一人のクソガキ。
「すいませーん、スギヤマコウイチでーす」
ホッとするやら、吹き出したくなるやら。どの面を下げて「スギヤマコウイチでーす」とか言えるのだろうか。
それから二人で、しこたま怒られて、ゲンコツをされて、もうしませんと約束をさせられて、大人料金を徴収されて、やっと解放された。
そんで、それから名画座に三本立て500円の映画を観に向かいながら、駅員に対する罵りを各々口にするのであった。
そんで、議論を交わすのである。
「来週はどうする?来週も子供運賃でいく?」
僕は今、エムに問いたい。
あの時、偽名を考えた意味ってあったのだろうか?と。結局普通に怒られたわけだし。
まぁ、なんにしても、中学生というのは、どこまでもバカなのである。バカすぎて楽しくなっちゃうのが、中学生なのである。
つづく。