しゅうちゃんは昨日の夕方に帰ってしまった。新幹線に乗って。遠い遠い北国へ。
もっと居たらいいんじゃない?としつこく繰り返す僕に、「ダメだ!仕事が忙しいんだ!ミュージカルのオーディションがあるからダメだ!」と、ほんとだか嘘だかわかんない笑えないジョークみたいなことを言っていた。
おとといの話。
新宿歌舞伎町を出てちょっと寄り道をして、電車に乗って嵐山に帰ってきた。
実のところ、しゅうちゃんは怖かったらしい。何が怖かったって、嵐山の僕の家がくそボロだったらどうしようって。半分くらい本気で、テントに住んでいると思っていたらしい。半分以上本気で、崩れかけた廃墟に住んでいると思っていたらしい。
実のところ、だから歌舞伎町のサウナに泊まろうと言ったらしい。そんなボロ屋に泊まりたくないと思っていたらしい。
なんてヤツだ。
ボロ屋だったとしてもいいじゃないか。自分だって、10年前まで、みんなに「昭和の貧乏長屋」と呼ばれるあばら家に住んでいたじゃないか。と、声を大にして言いたい。
それはそれは、ひどくボロい家だった。「今日は廊下の床がズボッと抜けて、足が抜けなくなっちゃってさぁ」とか言っていたじゃないか。家の壁に、家の塀じゃなくて家の壁にペンキで「バカ!」って書かれた。とか言っていたじゃないか。おれ、今だから言うけど、しゅうちゃんの家のトイレには、怖くて入れなかったもんね。
嵐山駅から、ジムニーちゃんを停めてある駅のそばのヤオコーの駐車場まで二人で歩いた。
近道をしようと思ったら道を間違えてちょっとだけ遠回りになってしまった。しゅうちゃんは、下り道なのにゼーゼーハーハー言いながら、遠いじゃねーか!とか、どこが徒歩5分なんだ!とか、絶対道を間違えてるだろ!とか文句を垂れている。うるさい奴だなぁ。
道を間違えたので、通ったことのない道を通る。道端に、今は誰も住んでいない平屋のオンボロ屋敷群の横を通りかかった。もうそれはそれはひどい状態で、軒の屋根が瓦の乗った野地ごと、軒並み落ちている。便所から突き出たカラカラ回る煙突が倒れかかって隣家に突き刺さっている。窓は割れ、壁は剥がれ・・・完全な廃墟。
しゅうちゃんは、その家並みの横を通り過ぎながらこう言った。
「おっ、ここ、おれが住んでいたところみたいだな」
ははは。うけた。
もっと居たらいいんじゃない?としつこく繰り返す僕に、「ダメだ!仕事が忙しいんだ!ミュージカルのオーディションがあるからダメだ!」と、ほんとだか嘘だかわかんない笑えないジョークみたいなことを言っていた。
おとといの話。
新宿歌舞伎町を出てちょっと寄り道をして、電車に乗って嵐山に帰ってきた。
実のところ、しゅうちゃんは怖かったらしい。何が怖かったって、嵐山の僕の家がくそボロだったらどうしようって。半分くらい本気で、テントに住んでいると思っていたらしい。半分以上本気で、崩れかけた廃墟に住んでいると思っていたらしい。
実のところ、だから歌舞伎町のサウナに泊まろうと言ったらしい。そんなボロ屋に泊まりたくないと思っていたらしい。
なんてヤツだ。
ボロ屋だったとしてもいいじゃないか。自分だって、10年前まで、みんなに「昭和の貧乏長屋」と呼ばれるあばら家に住んでいたじゃないか。と、声を大にして言いたい。
それはそれは、ひどくボロい家だった。「今日は廊下の床がズボッと抜けて、足が抜けなくなっちゃってさぁ」とか言っていたじゃないか。家の壁に、家の塀じゃなくて家の壁にペンキで「バカ!」って書かれた。とか言っていたじゃないか。おれ、今だから言うけど、しゅうちゃんの家のトイレには、怖くて入れなかったもんね。
嵐山駅から、ジムニーちゃんを停めてある駅のそばのヤオコーの駐車場まで二人で歩いた。
近道をしようと思ったら道を間違えてちょっとだけ遠回りになってしまった。しゅうちゃんは、下り道なのにゼーゼーハーハー言いながら、遠いじゃねーか!とか、どこが徒歩5分なんだ!とか、絶対道を間違えてるだろ!とか文句を垂れている。うるさい奴だなぁ。
道を間違えたので、通ったことのない道を通る。道端に、今は誰も住んでいない平屋のオンボロ屋敷群の横を通りかかった。もうそれはそれはひどい状態で、軒の屋根が瓦の乗った野地ごと、軒並み落ちている。便所から突き出たカラカラ回る煙突が倒れかかって隣家に突き刺さっている。窓は割れ、壁は剥がれ・・・完全な廃墟。
しゅうちゃんは、その家並みの横を通り過ぎながらこう言った。
「おっ、ここ、おれが住んでいたところみたいだな」
ははは。うけた。