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閃き

変化も気付く事も無い平凡な毎日の中にきっと閃きがあるはず。閃きを求めた記憶

和算の侍

2016-11-02 20:48:57 | 閃き
和算というのは文字通り日本独自の算術のことで、取り組む者を算術家と呼んだ

算術の基となる学問は中国から渡ってきていたが、鎖国政策の江戸時代では外国の学問が一切入って来ていない為に独自の発展をしていった

円理といわれる円周率に関する研究は十六世紀の終わり頃から始まっており、かのニュートンでさえ小数点以下14桁までしか計算していないのに和算によって42桁まで正確に計算している

そんな時代で円理に取り組む算術家武部賢弘(たけべかたひろ)を始めとする六人の主人公が描かれた「和算の侍」を読んだ(鳴海風著)


平和な江戸時代には正確な暦の再考や集められた年貢の管理、面積の計算、測量による地図の作成など計算が必要な仕事が沢山あり、算術家が勘定方の重職に就くことも珍しくない

算術家にとっては計算はまさに戦場と同じ、命を賭して真理(公式の確立)を求めて研究に取り組んだ

計算にはそろばんと紙のみが使われ、地道な計算を繰り返して行くしか方法は無い

そんな状況で何故和算が発展していったのかといえば、それは遺題継承という独自の仕組みであったという

算術家甲が書籍を発行した時、回答をつけないで問題を掲載しておく

それを早く正確に説いた算術家乙が回答を本にし同様に回答をつけないで問題を掲載する

これを繰り返すことで和算はどんどん高度になって行くのである


算術家の研究は年単位の歳月を要する場合がほとんどであり、生涯をかけて一人で取り組んでいた

天才児と呼ばれる頃から勉強を始めても、人生の長さから言えば限りがある

死ぬ前にもう一度研究に取り組みたいという欲求にかられ、最後の戦いに挑むのである

先日仕事でご一緒した御年75歳になる技術者の口から出た言葉もまさに同じであった

算術家の姿は現在の技術者そのものであると感じた


日本人の能力は素晴らしい


コメント
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