ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

病院の桜

2016-04-08 21:51:27 | 
いつもと同じ時間の

いつもの電車に乗り

いつものように立ったまま2駅

駅から少し歩き、僕は病院へ吸い込まれていく



18の時から目がアスファルトばかりを欲しがるようになった僕に、桜が上から呼びかけてくる

「早く見ないと、散っちゃうよ。今日が最後だよ」と

まだ桜は咲いていた

満開といってよかった



病院内は暗く沈んでいて

それでも、ぱっと電気はついたのだ

小さな子が手をいっぱいに広げて

ふわふわに膨らんだ空気を持ち運んで、母親にプレゼントする

その笑顔を見て、僕はいつものように缶コーヒーを飲みながら、少しだけ優しくなれた



帰り際、アスファルトはひらひらと淡く色づいていた

はっとして桜を見ると、変わらずに咲いていた

また来年、足元しか見ない僕には想像もつかない遥か未来

明日は花散らしの雨らしい

次にここに来る時はきっと葉桜
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