昨年の秋
自らの診療を終えた後、コロナ患者の自宅を回り、診療する医師をテレビが取りあげていた。
それは深夜にまで及び
「どうしてそこまでやるのか」と問われれば
「医師としてではなく、人間として、ひとりの人間としてとにかく助けたいんです。理屈じゃないんです」と語った顔には大量の汗と共に、涙が浮かんでいた。
それから数ヶ月が過ぎ、彼は死んだ。
散弾銃に撃たれ、即死だった。
容疑者は訪問介護の患者の息子
常人なら危険を察知し、この家族を見捨てていただろう。
しかし、彼は違った
自分の命より他人の命が大切なのだ
世の中が不条理であることは知っている
善人ほど早死にすることも
それでも、彼には例外になって欲しかった
埼玉のふじみ野に
人を救うために命を焼き付けした医師が存たことを
忘れやすい自らのために
いまここに刻む