死闘の末、歴史が動きました。昨日行われた叡王戦第5局は、伊藤匠七段が藤井叡王に勝ち、3勝2敗で叡王を奪取しました。伊藤七段ははじめてのタイトル獲得。藤井竜王・名人は七冠に後退しました。
伊藤さんは快挙を成し遂げました。無敵の藤井さんを番勝負で初めて下したのですから。タイトル10期分の価値はあります。こないだの第3局の勝ち方を見て、伊藤さんを10年に1人の逸材から数十年に1人、ひょっとしたら100年に1人の逸材に上方修正しましたが、第5局も、将棋の内容は違えど、藤井得意の角換わりを堂々と受け止め、終盤での逆転勝ちは共通しています。
10代の頃に比べると終盤に陰りが見える藤井さんとはいえ、例えれば球速165キロが160キロに落ちただけで、まだまだ快速球であることに変わりはありません。その藤井さんを上回る終盤力を持つ棋士が現れるとは。まして同い年。かつての羽生・森内のライバル関係を思い起こす人もいるようです。
「藤井さんが自分をここまで引き上げてくれた」。記者会見での伊藤さんの言葉が印象的です。
一方、敗れた藤井七冠。早熟の天才であるがゆえに、同学年の伊藤叡王に差を詰められていましたが、ついに実力的に並ばれた可能性は高いです。しかしまだ21才。早めに敗北を味わってよかったかもしれません。伊藤匠という明確なライバルが現れたことも藤井さんにとってプラスに働くと思いたいです。才能的には大天才であり、どん底にあった将棋界に現れた救世主ですから、これをきっかけに、また新たな藤井将棋を見たいものです。
何がともあれ伊藤さん、初タイトル獲得おめでとうございます。そして、藤井・伊藤という新時代のゴールデンカード、楽しみです。