ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

婆さん

2025-01-10 12:54:18 | 
正月、僕は母方の婆さんを思い出した
婆さんは1キロほど離れたところに暮らしていた
僕が2才のある日、ポットを誤って動かしたらしく
熱湯を手にこぼし、大泣きしたそうだ
婆さんは大慌てで、1キロの道を走ってきたらしい

今では右手の甲にあるアザは
目を凝らさないとわからない程だが
子供の頃はもっとくっきりしていた
婆さんがアザを見るたびに
「あんなところまで走れたんだから、若かったんだよな」
と笑いながら言った

少し成長した僕が婆さんにかけられた言葉がある
「人に悪いことをされても、悪いことはするなよ」
その抑揚まではっきりと覚えている
学がない哲学者のようだった

今でもたまに思い出すが
なかなか理解が出来ない
優しくも厳しい明治女の言葉だった
数十年経っても結論の出ない言葉を置き去りにして
婆さんは旅立った
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする