正月、僕は母方の婆さんを思い出した
婆さんは1キロほど離れたところに暮らしていた
僕が2才のある日、ポットを誤って動かしたらしく
熱湯を手にこぼし、大泣きしたそうだ
婆さんは大慌てで、1キロの道を走ってきたらしい
今では右手の甲にあるアザは
目を凝らさないとわからない程だが
子供の頃はもっとくっきりしていた
婆さんがアザを見るたびに
「あんなところまで走れたんだから、若かったんだよな」
と笑いながら言った
少し成長した僕が婆さんにかけられた言葉がある
「人に悪いことをされても、悪いことはするなよ」
その抑揚まではっきりと覚えている
学がない哲学者のようだった
今でもたまに思い出すが
なかなか理解が出来ない
優しくも厳しい明治女の言葉だった
数十年経っても結論の出ない言葉を置き去りにして
婆さんは旅立った
婆さんは1キロほど離れたところに暮らしていた
僕が2才のある日、ポットを誤って動かしたらしく
熱湯を手にこぼし、大泣きしたそうだ
婆さんは大慌てで、1キロの道を走ってきたらしい
今では右手の甲にあるアザは
目を凝らさないとわからない程だが
子供の頃はもっとくっきりしていた
婆さんがアザを見るたびに
「あんなところまで走れたんだから、若かったんだよな」
と笑いながら言った
少し成長した僕が婆さんにかけられた言葉がある
「人に悪いことをされても、悪いことはするなよ」
その抑揚まではっきりと覚えている
学がない哲学者のようだった
今でもたまに思い出すが
なかなか理解が出来ない
優しくも厳しい明治女の言葉だった
数十年経っても結論の出ない言葉を置き去りにして
婆さんは旅立った