ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

青年は悲しく笑った

2018-09-21 19:37:07 | 
色のない空だった
歩いて通り過ぎようとすると
右手に死の海が小さく広がっていた
僕の目の前には丸く赤いボタンがある
注意書きには「ボタンを押すだけで人命が救えます」とある

僕はボタンを押した
多くの人がそうするように
するとUFOキャッチャーのように若い男が死の海から救われた
僕の気分は晴れやかだった

何年かのち、やせ細った青年が僕に話しかけてきた
「その節はお世話になりました」
青年が悲しく笑う
立ち去った後姿が生存に疲れた老人のようだった
コメント
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