白雲去来

蜷川正大の日々是口実

卯の花腐(うのはなたくし)

2019-05-24 11:07:07 | 日記
五月二十一日(火)大雨。

早朝から横浜は台風並みの雨と風。わが陋屋は、風雨が強いと雨漏りがする。この雨漏りと言うのは厄介で、乾いてしまうと何処から雨が漏っているのか分からない。誰のエピソードかは失念したが、奥さんが、旦那に、「寝室に雨が漏っているから修理を頼んで下さい」と言うと、「家は広いのだから雨の漏らない部屋で寝なさい」と言ったとか。生憎、我が家は、そんな余裕がない。この風雨がうらめしい。

朝食の後に、雨が酷いので、二人の子供を駅まで送って行った。こんな日は、うっかり出かけられない。大体、いつも雨の落ちてくる場所は同じなのだが、それでも油断は禁物である。「雨音はショパンの調べ」という好きな歌があるか、そんなロマンチックなものではない。タイトルだけで言うならば、「悲しき雨音」である。仕方がないので、事務所に行かずに酔狂亭でパソコンに向かう。やらなければならないことは山ほどあるのだが、ファイトが湧いてこない。テレビを点けると、気になるので、BOSEのコンポで、耳障りにならない程度に「ブルーノート」のオムニバスCDを聞きながら仕事に精を出す。

子供の頃に習った「夏は来ぬ」という歌がある。アホだった私は、その頃は、別段何の感慨も感じなかったが、大人になってから、そのメロディーや歌詞がとても素晴らしいと感じるようになった。特に今の季節には、その歌が、何度も頭の中でリフレーンする。

卯(う)の花の匂う垣根に 時鳥(ほととぎす)早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ。その卯の花とはウツギのことで、アジサイ科の落葉低木。茎が中空のため空木(うつき)の意味ともいわれ、卯月(旧暦四月)に咲く花の意とも言われる。ということを知ったのは、四十歳を過ぎてからのこと。「歳時記」によれば、陰暦四月の異名を「卯の花月」といい、このころに降る雨のことをいったもの。降り続く長雨が垣根の卯の花を腐らせてしまわないかとの意を含んだ言葉として「卯の花腐(うのはなたくし)」がある。

夜になって、雨が止んだ。家族が揃って今日の雨談義。夕食は、ポークピカタ、手羽餃子、焼売、筋子。二十度の「黒霧島」のロックを家族の目を気にしながら、恐る恐る、それでもしたたか飲んだ。

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