先月誤嚥性肺炎で入院した認知症の87歳男性は抗菌薬投与で治癒していた。何とか食事摂取できたが、家族は家庭での介護は困難なので、施設入所を希望された。老妻と息子(精神疾患らしい)との同居だった。すぐには施設入所できないが、仕方なく入所待ちで入院継続していた。昨日の昼食時に急に誤嚥して、酸素飽和度が急激に下がった。病棟の看護師さんが集まって、酸素吸入(10L/分)開始、喀痰の食物の吸引を行い、何とか90%以上になった。個室に移動させて点滴を開始しているうちに、やっと落ち着いた。やれやれ。今日家族(キーパーソンの長女)と相談したが、今回の誤嚥性肺炎が改善したら、また誤嚥する可能性が大いにあるが、それでも経口摂取をできる範囲で継続する方針となった。まず治癒しないと始まらないが。
施設に入所して胃瘻による経管栄養を受けていた88歳男性(脳梗塞後遺症で寝たりきり状態)は、栄養剤注入後に一気に嘔吐して、呼吸困難となったそうだ。当院に救急搬入されて、内科の若い先生が担当した。高流量の酸素でも酸素飽和度が90%ぎりぎりだった。胸部X線だけなので判断が難しいが、ARDSと判断されていた(両側肺野が真っ白に近い)。昨日主治医が大学病院に行って不在だった。家族から、相談があると言われたので話を聞いた。「とにかく苦しんでいるのを見るのは忍びない。悪化した時は無理な治療はしないことに以前から決めていた。早く楽にしてやりたい。」という希望だった。認知症の妻は同じ施設に入所していて、長男長女は同じ考えだという(昨日は長男が付き添っていた)。はいそうですか、と治療をやめるわけにはいかない。酸素吸入・点滴・抗菌薬・ステロイドなどはそのままにして、呼吸状態を見ながら、塩酸モルヒネをごく薄く(低濃度で)開始した(病名として急性心不全)。少し穏やかになって、声掛けすると目を開けた。適切なのかどうかわからないが、それで今日まで継続した。入院当初のいかにも苦しそうに顔をゆがめたり体を動かすことは少なくなった。残念ながら今日の検査値をみると、きびしそうだ。失語症があって、会話はできない。