内科の若い先生が、担当している73歳男性の糖尿病治療で苦慮していた。そもそもは今年の1月に咳で内科新患を受診した。担当は大学病院腫瘍内科からの応援医師だった(診療は内科一般の新患)。胸部CTで前縦隔に腫瘤があり、肝臓にも腫瘤があった。外科で前縦隔腫瘤を生検するとl、胸腺扁平上皮癌だった。
基幹病院腫瘍内科に紹介となり、化学療法を受けたが、効果がなく治療は中止となった。疾患として別にあるのか、治療の影響か、肺に間質性肺炎の所見が出現して、全身に皮疹も出現した。プレドニンが開始されて、もともとの糖尿病が悪化して、インスリン強化療法を要するようにもなった。一人暮らしのため、治療継続で当院に転院してきた。
血糖が200~300mg/dl台で、売店で買ってきた好きなように食べている。注意しても認知力の低下があり、うまくいかない。インスリン自己注射の指導をしてみたものの、病棟看護師さんに自己注射は無理と判断された。いろいろ食べているので、血糖測定をするとHi(血糖600以上)になったりする。内服薬の自己管理も難しい。プレドニンを中断されると(現在15mg/日)、それだけでも大変なことになりそうだ。
これなら癌治療をしない方がましだったと思われたが、仕方がない。何とか外来治療に持っていきたいが、具体的には難しい。高齢者の糖尿病治療では、血糖コントロールよりも急性代謝失調と低血糖防止を目標にするというのがあるが、そこまでにもならない。1週間に1回のGLP-1受容体作動薬とトレシーバを2~3日に1回くらい外来で看護師さんが注射することを考えたが、外来に来るかどうかも(それも頻回に)わからない。
病棟の看護師さんはずっと入院継続になるのを危惧しているが、どうもそうなりそうな気がする。若い先生には、この患者さんの血糖コントロールができれば、どんな糖尿病でもコントロールできると励ました(?)が。