今日は日直で出ている。受診数は少なく、救急車の搬入もなかった。72歳男性が10日前から足がふらつくという訴えで受診した。仕事は大工さんでまだ現役だった。きょうも仕事場まで行ったが、車から降りる時にふらついたという。普通に歩いて診察室に入ってきた。難聴はあるが、普通に会話できる。頭痛も嘔気もないという。両下肢を拳上してもらうと左右差なく上げた。座位からの起立もすばやくできた。
受診時、37.6度の発熱があった。タバコ20本/日、アルコールは日本酒5合/日。咳・痰はないというが、人間ドックで肝機能障害を指摘されたそうだ。アルコール性肝障害だろう。聴診すると、左下肺にラ音(coarse crackles)が聴取された。COPDの方が肺炎になって、熱があってふらつくのだろうと思った。
ふらつきなので、まず頭部CTを撮影することにした。撮影すると、右側に慢性硬膜下血腫を認めた。改めて、頭部打撲の既往を確認すると、覚えていないというが、アルコール多飲と大工さんという仕事から大いにあり得ると思われた。頭痛は、嘔気はと訊き直してもないという。CTの台でも乗ったまま両下肢を上げてもらうと、あっさり上げた。両側上肢も左右差はない。CT室まで看護師さんと一緒に歩かせてしまったが、出る時はストレッチャーを持ってきてそのまま救急室に入れた。
家族にCTの結果を説明して、脳外科のある地域の基幹病院に連絡した。こころよく引き受けていただいて、救急車で搬送した。胸部X線と胸部CTも撮影したが、肺炎はなかった。