「プライマリケアの精神医学」中外医学社は、獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授・井原裕先生の著書。先週末に読んでいた。「うつ・不安・不眠を訴える患者さんには、ヘルシーな生活習慣を勧めさえすればよい」、ということが15の症例を通して書かれている。重症うつ病などを除いた非精神病圏の軽症~中等症のうつ・不安・不眠を対象にしている。
具体的には、1)睡眠の絶対量(7時間の睡眠をキープ)、2)睡眠相の安定化(寝るのが遅すぎない、早すぎない)、3)アルコール制限、4)適度の運動(毎日1時間の外出、週1回半日の外出)、5)適度の対人交流(人とお話する)。数量できないので、EBMにはならないが、常識を大事にされている。生活習慣の是正を行って、それでも改善が見られない時に、薬物療法を試みる(その場合でも、できるだけ頓用で使用)。
確かに高齢者の不眠は、よく聞くと就床が早すぎて(午後7時ごろ)午前2時に目が覚めるということがある。割に安易に睡眠薬を処方してしまうが、それまでずっと処方されていたから急にはやめられない。6~7時間しか眠れないので、早く寝ると早朝(夜中)に起きるのは当たり前とお話すると、案外納得されてもっと薬を追加してほしいとは言わなくなる。実は、付き添いで来ていた家族がもっと納得してくれる。睡眠薬でうまく眠れる方には、できれば半分で試してみてはと勧めるが、無理にそれ以上は踏み込まないようにしている。
巻末にはお勧めの精神医学の本が書いてあるが、昔なら読んできた笠原先生の本など、なじみのある本が入っていてちょっとうれしい。後期研修で内科外来に出る様になった若い先生にお勧めの本だ。