内科学会とのジョイントプログラムで高林克日己先生の「リウマチ診療の進歩」を聴いた。2010年のACR/EULARの関節リウマチ分類基準は4つの項目、すなわち1)腫脹なたは圧痛のある関節数 2)血清学的因子(RF・抗CCP抗体) 3)滑膜炎の持続期間(6週間未満か以上) 4)急性期反応物質(CRP・ESR)のうち、6点以上で関節リウマチと診断を確定する。関節数だけでは橙でも5点にしかならない、など良くできていると言われた。
進行性・予後不良例は、1)抗CCP抗体が100以上 2)MRIで骨びらん 3)炎症性変化が強い(CRP・MMP-3)。最初の2年で一気に進行する(window of Opportunity)ため、治療は早ければ早いほど良い。診断したらすぐにDMARDs(メトトレキサートMTX)を使用して、3か月経過して改善すればMTXを継続し、改善しなければバイオ(生物学的製剤)を使用する。
MTXはがRAのアンカドラッグで、禁忌がなければMTXで治療を開始する(MTXは葉酸代謝阻害薬で、大量に使用すれば抗癌剤)。妊婦・授乳時には使用できない、また高齢者には注意して使用する。8Cap・16mgまで使用できるが、多くの人はそこまでの量は副作用で無理。(今日の治療指針では通常は、3~4Cap/日から開始。副作用を確認して増量。ただし高齢者・軽度腎障害では2~3Cap/日から。) 24~48時間後にフォリアミンを併用する。葉酸を多く摂取(サプリメント・青汁・海藻類・サザエ)していると、効果がなくなってしまう。MTXの副作用は、1)間質性肺炎(MTX量と無関係) 2)口内炎・舌炎(フォリアミンで予防) 3)急激は白血球減少(高齢者・感冒に注意)。
MTXで効果不十分な時は、生物学的製剤を使用する。TNF阻害薬として、レミケード(インフリキシマブ)・エンブレル(エタネルセプト)・ヒュミラ(アダリムマブ)。これらは、1)早期治療するほど効果が高い 2)骨が修復される 3)MTXと併用した方が効果が高い 4)改善すれば休止もできる。ただし、1)値段が高い(4万/月)2)重症の肺感染症をきたす 3)悪性腫瘍合併では使用できない 4)原因に対する根本的治療ではない。大阪大学で開発した、抗IL-6受容体のアクテムラ(トシリズマブ)が一番有効である。ただし、感染症併発が多く、CRPなど炎症反応が上昇しない・発熱がないなど感染症の発症に気づきにくいので、専門医が使用する。高齢者には不向き。
症状がない(腫脹・圧痛)、炎症反応(CRP・ESR)が陰性化した場合は、休薬できる。しかし、休薬できるのは2/3で、そのうち1/2/が1年で再燃するので、休薬継続できるのは1/3だけになる。
生物学的製剤が使用できない時は、MTXに古典的なDMARDs(リマチル・アザルフィジンEN)を併用する(DMARD3剤併用療法)。ステロイドはプレドニン3mg/日以下の少量にとどめる。NSAIDsはステロイドを併用で消化性潰瘍をきたす。
検査は、MRIで骨びらんを見る。関節エコーはドップラーで血流シグナルの有無を見る。視診・触診でわからない病変を検出できる。治療はTreat to Target(T2T)で、臨床的寛解(症状を抑える)から構造的寛解(骨破壊を抑える)、機能的寛解(普通の生活かできる)をめざす。
フォロ-中の注意は、1)腱断裂(早期手術) 2)単関節腫脹(穿刺排膿) 3)発熱(MTX中止) 4)呼吸困難(MTXで間質性肺炎、生物学的製剤でカリニ肺炎) 5)疼痛(炎症か変形・強直か) 6)手指の腫れ・炎症反応上昇(専門医へ) 7)終末期(NTM,るいそう)。
ワークショップは、「ポケットエコー」と「診断エラー」に出た。ポケットエコーは看護師さんも使えるようにしようというもので、まずは膀胱エコーから始めるという話だった。ポケットエコー「MIRUCO」は16万円。
診断エラーの要因は、単なる医師の疲れなどもあるが、患者に対する陰性感情(陽性感情も注意)、他者の得た病歴や診察への過度の依存(病名付きの申し送りをそのまま信じる、専門医が一度診ている)、早期閉鎖(病名を決めつけてしまう)、アンカリング効果・確証バイアス(一度病名をつけてしまうと、合わないことも合っていると思い込む)などがある。帰りに、徳田安春先生の「見逃してはならない疾患の除外ポイント The診断エラー学」医学書院を購入した。