先々週の金曜日の夜間に高熱で88歳の男性が入院した。当直は外部の先生で、自宅に連絡が来た。胸部X線・CTで肺炎はなく、腹部症状や肝機能障害もなく、心エコーで疣贅はありませんということだった。循環器が専門で、血液培養2セットを提出していた。「尿路感染でしょうか」と言うと、「あっそうですね」と言われた。翌土曜日に日直で病院にいくので、尿培養の提出とセフトリアキソンの投与を1回分お願いした。
翌日には解熱傾向となり、翌々日は平熱となった。後日、尿培養で感受性良好な大腸菌が検出された。血液培養は陰性。抗菌薬は点滴静注から内服薬(ST合剤)に変更した。これで10日~2週間治療して退院としたいが、そう単純にはいかない。
認知症で内科医院から認知症薬(リバスタッチ)が処方されていた。家の中を杖歩行している程度だが、家族からはトイレまで歩けるようにしてから退院にして下さいと言われた。これはリハビリで入ってもらう。高齢だがなかなかの巨漢で、介助は大変そうだ
この方は糖尿病で治療を受けていたが、血糖コントロールはよくない。今回はHbA1cが9.2%で、昨年神経内科に顔面神経麻痺で紹介された時は9.8%だった。処方はDPP4阻害薬とSU薬のグリメピリドが6mg/日と最大量だった。かかりつけ医は糖尿病も詳しいが、認知症もあり、インスリンは無理と判断しているのだろう。毎食前の血糖を測定すると200台の前半から300になる。家族(孫だった)に来てもらって、家族が注射できるかどうか、看護師さんの注射手技を見せた。何とか1日1回ならできそうなので、持効型インスリンを開始した。「高齢糖尿病の認知機能とADL評価」によれは、目標8.5%未満でいいことになるが。
入院時のCTで見ると、膀胱壁が均等に肥厚している。自尿はあるが、残尿があるのだろう。PSAが24と上昇している。尿所見ははっきり混濁していたが、前立腺炎だった可能性もある。泌尿器科で評価してもらうが、88歳認知症ということで、尿路感染が治まってからのPSA再検になりそうだ。
この程度ならたいしたことではないと言われそうだが、高齢者はけっこう手間がかかる。