なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺炎でした

2020年02月19日 | Weblog

 昨日の午後に整形外科のリウマチ外来があり(担当は大学病院整形外科から)、関節リウマチで通院している89歳女性はのことで相談があった。

 ブシラミン・NSAID・ステロイド少量(プレドニン2mg/日)で治療されているが、関節痛は軽度に続いていて、炎症反応軽度上昇も続いていた。

 

 5日前に転倒して、その後股関節痛で動けないと訴えて、2週間前の2月4日に救急搬入された。救急当番の外科医が対応して、両側股関節は人工関節置換術後だが、新規の骨折はなかった。

 炎症反応が高値(CRP16.8mg.dl)だった。整形外科医(常勤医)に連絡がいったが、骨折がないことからNSAID坐薬が処方されて帰宅となっていた。

 昨日はリウマチ外来の予約日で受診した。毎回血液検査が入っていて、CRP1.3mg/dlと普段と同程度だった。関節痛も訴えはいつも通りだが、救急搬入時のCRP高値が気になったらしく、胸腹部CT(骨条件)を撮影していた。

 すると両側肺の背側に浸潤影を認めたので、内科に相談したという経緯だった。2月4日搬入時の胸部単純X線を見ると(CTは骨折疑いで腰部~大腿部のみ)、両側肺に浸潤影を認めた。その時から肺炎はあったことになる。1月30日に転倒したというのも、その後に動けなくなったというのも、打撲やリウマチ症状だけではなく、肺炎の影響もあったのだろう。

 体温低めの方なので救急搬入時の37.0℃も、発熱があったととらえられる。身体の動きも普段通りに戻っているし、検査値も改善しているので、今さら抗菌薬投与も不要だろう。

 89歳と高齢で少量とはいえプレドニンも内服しているが、自力で肺炎を治したので意外に丈夫だね、という経過だった。救急搬入時に内科に連絡が来れば、入院してセフトリアキソンやスルバシリン(ABPC/SBT)が投与されたはず?。

 

 

 

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閉鎖孔ヘルニア

2020年02月18日 | Weblog

 月曜日の午前中に内科再来を診ていると、救急当番だった内科の若い先生から連絡がきた。

 88歳女性が4日前から食事摂取できなくなって、救急搬入されていた。嘔吐もあった。血液検査で腎障害(おそらく腎前性腎不全、血清クレアチニン6mg/dl台。)があり、CTで腸閉塞の像があるが、どうしましょうかということだった。

 救急室に見にいくと、やせた女性がストレッチャーに寝ていた。右下腹部に痛みがあるが、ヘルニアを示唆する腫瘤はなかった。やせた高齢女性だと閉鎖孔ヘルニアが疑われる。

 CTを見ると右大腿骨頚部骨折後でアーチファクトがあるが、閉鎖筋に外側に腸管があり、まさしく閉鎖孔ヘルニアだった。緊急手術になるはずだ。

 隣町の診療所に高血圧症などで通院しているので、連絡して直近の検査結果があれば送ってもらうよう伝えた。外科の当番の先生に連絡してもらった。

 

 午後に緊急手術が行われた。術後も人工呼吸管理、昇圧薬投与とかなり厳しい状況のようだ。

 

 

 

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講演会に行ってきた

2020年02月17日 | Weblog

 土曜日は県医師会の医学講座(講演会)があった。潰瘍性大腸炎とパーキンソン病の講演だった。

 

 潰瘍性大腸炎

 5-ASA製剤のペンタサは時間依存性(小腸から放出)、アサコール(リアルダも)はpH依存性(大腸に到達して放出)。(前者は遠位大腸では到達量が少ない、後者は大腸でも放出されず排出されることも、という欠点がある)

 5-ASA製剤の効果は容量依存性だが、副作用は容量によらず同じだそうだ。5-ASA製剤は、1)長期の寛解維持に有用、2)大腸癌のリスクを低下させる、3)病変の進展を抑制する。

 5-ASA製剤(メサラジン)不耐症が約2%であり、投与2週間で突然の発熱・腹痛・下痢が出現する。

 中等症以上ではステロイド治療の対象で、中等症ではプレソニゾロン30~40mg/日経口、重症ではプレドニゾロン40~80mg/日点滴静注。難治性では、抗TNF-α製剤や免役調整剤の適応となる。

 潰瘍性大腸炎は、以前は5-ASA製剤で治療できる症例だけ少し診ていたが、最近まったく診ていない。治療も複雑になっているので、もう自分で診ることはないだろう。

 昔々の研修医の時に1例、現在の病院に来てからすぐのころに1例、急性劇症型があった。前者は消化器内科と外科で治療にあたったが、結局亡くなった。その後大学に入局してすぐに、到底一般病院で扱える症例ではなかったと思った。後者は大学病院消化器内科に連絡して搬送した。ちょうど5月の連休の時期で、数日当院でハラハラしながらベット待ちをしていた覚えがある。当時は抗TNF-α製剤の治療はまだ始まっていなかった。

 軽症例以外は、消化器内科の中でも炎症性腸疾患に慣れた先生に任せるべきだと思う。地域の基幹病院消化器内科で炎症性腸疾患を診ていた先生が開業されると聞いたが、後任はどうなるのだろうか。

 

 パーキンソン病

 パーキンソン病は中脳の黒質が変性することでドパミンが欠乏する。黒質から基底核(線条体)への経路では運動症状が起こり、前頭葉への経路(報酬系)では不安・うつ・無気力・認知機能低下が起こる。

 パーキンソン病とレビー小体型認知症は、神経細胞の病理像は同じであり、レビー小体病としてまとめられる。パーキンソン病は運動障害から起こり、レビー小体型認知症は認知障害から起きる。

 剖検例の研究では、パーキンソン病で中脳の黒質に見られる病理像は延髄から始まり、次第に脳幹部を上行していくそうだ。

 神経細胞内にレビー小体を認め、その中にα-シヌクレインが蓄積している。つまりパーキンソン病は、アルツハイマー型認知症でアミロイドβが蓄積するような、「蛋白たまり病」である。

 パーキンソン病の治療は基本的にはレボドパのみ。他の薬剤はレボドパの補助として使用する。レボドパ自体の半減期が2時間と短く、また黒質の神経細胞の脱落により投与されたレボドパをためておけないので、レボドパの作用時間は短かくなる。

 レボドパの有効時間が短くなり、症状の悪化(wearing-off)が起きる。投与回数を増加(1日8回まで=2時間おきに内服)させて対応する。過量になると今度はdyskinesiaが起きる。

 レボドパは空腸でしか吸収されないので、徐放剤化ができない。

 レボドパの効果を持続させるための治療。1)小腸持続注入療法(すでに行われている)。胃瘻から空腸までチューブを入れて、レボドパを持続的に注入する。2)徐放錠(開発中)。カプセル内に大きさの異なる顆粒を混合して持続した効果を発揮させる。日本では同一成分同一価格の縛りがあり、特許の薬も通常のレボドパ(100mgで30円と安い)と同一価格になるため、(儲からないので)販売できない。3)持続皮下注療法(開発中)。皮下注の局所感染などの問題が生じる。

 iPS細胞で黒質細胞を作製するなども行われているが、外部から注入しやすい部位に埋め込むことになる。中脳の黒質に細胞を注入することは(深部すぎて)できない。細胞を作製して注入しても、黒質のように他の神経系との関係で分泌量の調整を受けない細胞を入れるので、症状の改善は難しいだろうということだ。

 レボドパの治療を待つことに意味はないので、早期にレボドパで治療を開始する。レボドパは300~400mg/日までで、400mgを越えると副作用が出るので他剤を組み合わせる。

 パーキンソン病ガイドラインの作成委員の先生なので迫力があった。当方の問題でぼんやりわかったくらいだが。

 

 以前勤務していた病院の院長先生も来ていた。テニスが趣味で、70歳代後半のはずだが、まだまだ元気だ。公立病院を定年退職した後は個人病院の院長先生をされている。いったい生涯どれほど稼がれるのだろうか。

 

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うつにみえる

2020年02月16日 | Weblog

 水曜日に地域の基幹病院呼吸器内科から90歳男性が転院してきた。

 3年前に消化器内科で総胆管結石の内視鏡治療を受けている。その時に早期胃癌Ⅱaを指摘されていた。内視鏡治療(ESD)を提案されたが、拒否していた。

 2年前には腹部大動脈瘤に対して、大学病院血管外科でステント留置の治療を受けていた。昨年の11月に右上葉肺癌を指摘され、気管支鏡検査は拒否したので画像診断だけだったが、ほぼ100%肺癌とされて、12月にがんセンターで放射線治療を受けていた。

 今年の1月24日に食欲不振・嘔気嘔吐で入院したとある。消化器症状だが、直近が呼吸器内科の扱いだったので、呼吸器内科入院になったらしい。もっとも上部消化管内視鏡検査も拒否していたので、消化器内科でもどうしようもない。

 入院後も食欲不振と腹痛(発作的に相当痛がったらしい)が続いた。おそらく胃癌の症状だろうと家族に説明された。癌の緩和治療としてステロイド(デカドロン8mg/日)が開始されて、少し食欲が出たかもしれないとあった。

 対処法として、そのまま食欲不振が続いた場合、経管栄養はしない、高カロリー輸液は保留ということで、末梢静脈からの点滴500ml1本を継続していた。

 

 貼付されてきたCT画像を確認した。胃に進行癌らしい腫瘤は認めない。肺癌の放射線照射部位は瘢痕になっていた。

 腹部は平坦・軟で圧痛・腫瘤はない。CT上は腹痛をきたすような疾患を認めない。患者さんは認知症はないようだが、印象としてはうつ状態(と思いこみ)のようにみえる。発作的な腹痛は見舞いに来た家族が帰ろうとした時にあったという。

 家族の話では、近所に占い師のような人がいて、手術などをしてはいないと言われて、それを信じているという。占いというよりは、お告げを伝えるというような怪しいものらしい。こちらも三輪さんのように、あなたは食事をとれるようになるだろうと、厳かに言い続けるといいのだろうか。

 とりあえず末梢の点滴を500ml2本で経過をみることにした。デカドロンは癌終末期で予後3か月以内でなければ使用しないので、漸減中止することにした。よくわからない腹痛もあり、抗うつ薬はサインバルタ20mgから開始した。

 先方の病院の食事は粥食で気に入らなかったというので、小盛りの普通食にした。少しずつ食べているが、どうなるか。

 

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緊急透析

2020年02月15日 | Weblog

 先週の木曜日に、地域の基幹病院内科から79歳女性がリハビリ目的で転院してきた。

 慢性腎不全(腎硬化症)で外来に通院していて、昨年末に尿路感染症を契機に慢性腎不全急性増悪となり、入院したそうだ。1週間透析を行って、自尿が出てある程度安定したという。

 自宅退院予定だったが、胆嚢結石・急性胆嚢炎で手術(ラパ胆)となり、その後転倒して胸椎圧迫骨折を来たしていた。自宅退院は難しいので、リハビリ転院をお願いしたいという依頼だった。

 ただ血清クレアチニン6~7mg/dl台で推移して、両側胸水(心嚢液も)と軽度の浮腫がある。リハビリとともに、当院外科に透析シャント造設も依頼していた。

 DPC的にどうなのかと思ったが、(積極的にではないが)外科医は引き受けるということだった。当初は2週間くらいみてからシャント造設と言っていたが、来てみると早急な造設が必要と判断された。今週の月曜日にシャント造設が予定されて、転院翌日の金曜日の段階で外科転科となった。

 そして月曜日には透析が必要な病状となり、内頚静脈からカテーテルが挿入されて週3回の透析が開始された。2週間くらい透析をした上で、シャント造設が予定されるらしい。

 あまり病状を検討しないで転院を引き受けて、外科医と透析担当医に迷惑をかけたという結果になってしまった。先方でのカテーテルによる透析を継続したままで当院転院の方が好ましかった。それにしても太い透析用のカテーテルをみごとに入れるものだ。

 

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MSA-C

2020年02月14日 | Weblog

 月曜日から木曜日まで71歳女性が初めてのレスパイト入院をしていた。2014年から大学病院脳神経内科に、多系統委縮症(MSA-C)で通院している。2016年から当院で週1回リハビリを行っていた。(MSA-C:multiple system atrophy with predominant cerebellar ataxia)

 数年前(10年くらい前?)に多系統委縮症という病名を聞いた時は、何だかわからなかった。オリーブ橋小脳委縮症という病名で習った世代で、とうてい神経内科は無理だと自覚させられる分野だった。

 多系統委縮症は、脊髄小脳変性症のうちの孤発性(遺伝しない)の疾患で、小脳症状が目立つMSA-Cと、パーキンソニズムが目立つMSA-Pがある。(MSA-P:multiple system atrophy with predominant parkinsonism) いずれも自律神経症状を伴うので、Shy-Drager症候群という概念は欧米ではなくなったそうだ(日本ではまだある?)。

 小脳失調があり、個室内のトイレに行くにも看護師さん2人の介助が必要だった。廃用性筋委縮もあり、痩せている。今回は介護している夫が確定申告をする関係でのレスパイト入院だった。

 大学病院の処方は、TRH誘導体タルチレリン(セレジスト)とドロキシドパ(ドプス)。食事は嚥下調整食4(全粥刻み食トロミ付き)を摂食できている。病状が進めば、誤嚥性肺炎で入院したり、嚥下障害で内視鏡的胃瘻造設を依頼されることがあるかもしれない。

 話し方は断綴性言語scanning speechで、とぎれとぎれであり、それに声の大きさ・高さも変化する。これがそうかと思いながら会話していた。お話好きで笑顔で話してくれる。

 

 

 

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ヒトメタニューモウイルス感染症

2020年02月13日 | Weblog

 先週の木曜日に98歳女性が発熱で内科新患を受診した。施設に入所していて、発熱があるので病院を受診させるようにと家族に連絡がいったのだった。

 内科の若い先生(内科専攻医)が診察して、どうしましょうかと相談された。患者さん自身は食欲もあり、元気だった。インフルエンザ迅速試験、尿中肺炎球菌抗原は陰性だった。白血球6400・CRP4.6と炎症反応が軽度に上昇していた。胸部X線、さらに胸部CTも施行していた。右肺に淡い陰影があるようなないような、という微妙な所見だった。

 年齢的には入院が無難だが、入院は希望されなかった。抗菌薬内服で慎重に経過をみて、改善しない時はその時点で入院とした。

 翌日になって、咳・痰が増えて、38℃の発熱も続いていたので、普通に入院になった。若い先生は迅速試験を全部提出して(レジオネラ、マイコプラズマ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス)、そのうちヒトメタニューモウイルスが陽性になった。

 これは有意なのか。治療はないので、点滴と二次性細菌性肺炎予防に抗菌薬(セフトリアキソン)を投与して経過をみることにした。胸部CTで軽度の気管支肺炎があるかもしれないので、抗菌薬は外せない。

 翌日には解熱して、順調な経過だった。もともと食欲は低下していないが、しっかり食べている。経過から見ると、細菌性気管支肺炎に抗菌薬が効いたようにも見えるし、ウイルス感染が時間経過でよくなったようにも見える。

 県内にはヒトメタニューモウイルス(とRSウイルス)を熱心に検査されている呼吸器内科の先生がいて、統計をとって発表している。

 高齢者でも孫がRSウイルス感染症に罹患している、あるいはそれまでなかった喘息様症状を呈する時には、RSウイルス迅速検査を提出していた。案外陽性に出た。

 今後は高齢者でも呼吸器症状が目立つ時には、RSウイルス・ヒトメタニューモウイルスを検査すべきなのだろうか。文献としても、内科向けの医学雑誌・医学書にはこれらの記載があまりないので、小児科のを当るしかないが。

 

 

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帯状疱疹

2020年02月12日 | Weblog

 先週の金曜日に、前日の当直だった若い循環器科に早朝に受診した80歳女性の診察を依頼された。

 糖尿病・高血圧症などで当方の内科外来に通院している。心気症・うつ傾向のある方で、様々な訴えでの予約外受診が多く、外来看護師さんにはお馴染みだった。10年経過して、予約外受診は大分減少している。

 一人暮らしで老人ホームなどの入所が好ましいかった。一度見学に行って決まりかけた施設を断ってしまったので、かかわった姉が怒ってしまい、その後はかかわらなくなっていた。

 2日前の先週水曜日から左側腹部から背部にかけての痛みがあった。間欠的な電撃痛のようで、帯状疱疹は認めないが、神経痛様だった。当直医が施行したCTで異常はなく、血液検査でも炎症反応上昇はなかった。痛くて食欲もない、入院させてほしいというので、入院にした。当院らしいゆるい入院だった。

 土日も変わりがな、発疹も出なかった。希望で湿布を貼付していたが、月曜にちょっと赤くなって痒いと言っていた。そして今日は痛みが良くなったので、退院と希望していると看護師さんから報告があった。年金が入るらしい。

 今日診察すると、左側腹部から臀部・大腿部にかけて帯状疱疹を認めた。痛痒いことは痛痒いらしいが、退院希望は変わらないので、痛みとしては軽減しているのだろう。

 月曜日から発疹が出始めていたのだろう。昨日が休日でなければ、昨日気付いたかもしれない。わかった以上は、抗ウイルス薬(ファムビル)を開始するので、1週間入院継続してもらうことにした。

 月曜日に発疹が出たので、疼痛が出始めてから5日目で出たことになる。もっと上の方(Th10-12)に出るかと予想していたが、実際はもっと下(L1-2)だった。

 

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「感染症学セミナー」

2020年02月11日 | Weblog

 11日に臨床微生物学会の第22回感染症学セミナー(東京、慶応義塾大学)に行ってきた。昨年10月13日の開催予定が台風19号通過の影響で中止となって、代替開催になる。

 テーマは「迫りくる海外からの感染症~オリンピックイヤーを迎える前に知っておきたいこと~」だった。通常の「海外からの感染症」で準備されたが、今はとにかく新型コロナウイルスの話を聴きたいという雰囲気だった。

 今回、忽那先生の「輸入感染症 A to Z」第2版を再読した。

 

12:35-13:15
日本を取り巻く海外からの感染症:特徴と鑑別のキモ
国立国際医療研究センター国際感染症センター 忽那賢志

 概論の後に、新型コロナウイルス感染症の症例を出された。疑い患者に対する時の個人用防護具(PPE:personal protective equipment)についての質問があり、国際感染症センターでは、第一類感染症の時のフルPPE(宇宙服のようなスタイル)ではなく、手袋・ガウン・N95マスク・フェイスシールドで行うそうだ。抗HIV薬を使用したことも訊かれていたが、まだ何ともいえないようだ。新型コロナウイルスは主に下気道にいるので、検体は喀痰培養がよい。どうしてもとれなければ、咽頭スワブになる。

13:15-13:45
海外からの感染症に必要な微生物検査
都立大塚病院臨床検査科 鈴木智一

13:45-14:15
ワクチンで予防出来る海外からの感染症
日比谷クリニック 相野田祐介

 1)まずは定期接種のワクチン接種が完了しているか、2)次に渡航に必須なまたは必要なワクチンを接種しているか、3)最後にその他の感染症予防はできているか、を確認する。

 マスギャザリングで懸念されるワクチンで予防可能な感染症は、麻疹・風疹・ムンプス・水痘・髄膜炎菌・インフルエンザ・その他。医療従事者が獲得しておくべき免疫は、麻疹・風疹・ムンプス・水痘で、髄膜炎菌ワクチンもすべき(ただし高額2万~2.5万)。

 日本環境感染症学会の「ワクチンガイドライン」が参考になる。

14:15-14:30
休憩

14:30-15:10
ケースカンファレンス1
東京大学医科学研究所附属病院感染免疫内科 池内和彦

パキスタン渡航後の23歳男性(父パキスタン人・母日本人)の発熱」

 XDR-Salmonella typhi(超多剤耐性)腸チフス。CTRX耐性でMEPMが感受性あり。MEPMで治療開始したが、血球貪食症候群を併発してAZMを併用して何とか回復。パキスタンでアウトブレイク。

15:10-15:50
ケースカンファレンス2
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 森野英里子

「両肺尖部に空洞を呈した1例」

 発症前年に仕事でアメリカのアリゾナ州に滞在。気管支鏡でPCR陽性・培養陽性、血清抗体陽性で、コクシジオイデス症(Coccidioides immitis)と診断。抗真菌薬で治療したが、空洞の破裂により、膿胸形成して治療に難渋。輸入真菌症は流行地で特定できる。

15:50-16:10
休憩

16:10-16:40
地域で取り組む海外からの感染症対策:静岡県におけるオリパラ対策
静岡がんセンター感染症内科 倉井華子

 医師会、保健所・県に積極的に働きかけて、AMR活動を展開されている。ゴキブリやヒルを趣味で飼っているそうだ。柔らかい雰囲気で、お話がとても上手。気難しい医師会のお偉方もこれなら協力するのでは、と思う。

16:40-17:00
質疑応答、総括、閉会

 

厚生労働省の定義(変更あり) 

感染が疑われる患者は、37.5℃以上の発熱かつ呼吸器症状があり、
・発症前14日以内に湖北省に渡航または居住していた人、
・発症前14日以内に湖北省に渡航または居住していた人と濃厚接触歴がある人
をいいます。
診断方法は、核酸増幅法(PCR法など)があります。実際には、昨今の国内外の発生状況を踏まえ、これらの地域に限定されることなく、医師が新型コロナウイルス感染症を疑う場合に、各自治体と相談の上で検査することになります。その際は、疑似症として保健所に届け出後、地方衛生研究所または国立感染症研究所で検査することになります。
まずはお近くの保健所にお問い合わせください。 

 

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BLNAR

2020年02月10日 | Weblog

 内科の若い先生に相談された、抗菌薬の使い方で示唆的だった症例。

 1月17日から発熱・悪寒があり、1月22日水曜日に当院の内科新患を受診して、若い先生が担当だった。インフルエンザ迅速試験でA型陽性と出た。

 日数が経っているので、血液検査・胸部X線検査も行った。白血球8300(ふだんは3000なので倍増)・CRP8.7と上昇していた。胸部X線は肺炎の可能性ありと診たようだ。

 入院を勧めたが、患者さんは外来治療を希望した。抗インフルエンザ薬はイナビル吸入を処方して、抗菌薬はセフトリアソンを外来で1回点滴して、翌日からの内服はオグサワ(オーグメンチン+サワシリン)を処方した。次週の月曜日にフォローとしていた。

 1月27日月曜日の受診時も発熱が続き、咳・痰が増加していた。白血球5200・CRP7.6と微妙な値だった。胸部CTで確認すると両側肺に浸潤影が散布していた。この時は患者さんも入院に同意した。

 抗菌薬をどうしましょうか、と訊かれた。セフトリアキソンにしようと思うが、非定型カバー(アジスロマイシン併用など)をするべきかという。

 すでに抗菌薬を出していたが、可能ならば喀痰培養を提出することにした。肺炎球菌ならばまずオグサワで効くはずだ。他の細菌としては、通常の市中肺炎ならばインフルエンザ桿菌・モラキセラになる。インフルエンザウイルス感染後とすると、黄色ブドウ球菌も考えられる。非定型の可能性はあまりないようだ。

 喫煙者だとインフルエンザ桿菌かなあ、BLNARだとオグサワが効かないかも、と答えた。セフトリアキソンで数日経過をみて、反応が良くない時は、また考えることにした。結果は順調に軽快したのだった。 

 その後忘れていたが、若い先生が内科専攻医の症例に入れていたので、評価に回ってきた。改めて確認すると、喀痰培養でBLNARが検出されていた。ABPC、AMPC/CVAはRになっている。CTRXやLVFXはSだった。CAMもSだった。

「市中肺炎診療レクチャー」黒田浩一著(中外医学社)には、市中肺炎の外来患者の経験的治療(細菌性肺炎を疑う場合)として、第1選択がAMPC/CVA+AMPC(つまりオーグメンチン+サワシリン=オグサワ)になっている。(外来治療のに限定)

 しかし個別の菌になるとそう簡単にはいかない記載になっている。肺炎球菌が疑われる場合経験的治療としてはAMPCで問題ない。

 インフルエンザ桿菌が疑われる場合の経験的治療は、ABPC感受性(BLNAS)の場合はAMPC、ABPC耐性かつABPC/SBT感受性(BLPAR)の場合はAMPC/CVA+AMPC、ABPC/SBT耐性の場合(BLNAR)の場合はLVFX(AZMも)になる。

 モラキセラが疑われる場合の経験的治療は、βラクタマーゼを産生してAMPC体制のため、AMPC/CVA、AZM、LVFXになる。

 AMPC/CVA+AMPCに非定型カバーで処方するAZMが、細菌性のインフルエンザ桿菌とモラキセラをカバーするという結果になる。そうなると、必ずAZMを併用するか、アメリカ的にやっぱりLVFX(できるだけ結核を否定して)ということになってしまわないか。

 それにしても初診時の胸部X線で両側肺下肺野に粒状影が目立つので、CTで確認してもよかった(これも安易にCTを撮り過ぎないようにとはされているが)。CT像をみれば、入院治療の勧め方も違っていたかもしれないから。

 

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