スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

セメント&自然の秩序の様式

2019-01-19 19:20:32 | NOAH
 『1993年の女子プロレス』を読んでびっくりしたことのひとつに,全日本女子プロレスではセメントと称される,勝敗の結果が定まっていない試合が行われていたということがありました。
                                    
 プロレス界におけるセメントというのは,僕は二種類に分けられると考えています。ひとつは全日本女子プロレスで実際に行われていたように,勝敗の結果を実際に戦っている選手の力量だけで決定してしまうというものです。僕はプロレス業界の人間ではありませんから想像するほかありませんが,たぶんこの種のセメントは珍しいのではないでしょうか。というのはこのような方法で戦わせてしまうと,興行として成立しない可能性が高くなってしまうので,プロモーターはそれを嫌うのではないかと思われるからです。もうひとつは結果は定められているのだけれども,何らかの理由で選手がそれに従わず,結果的に潰すか潰されるかという試合になってしまうケースです。こういう試合は何度かありましたし,女子プロレスでも有名な試合があります。また,これは試合とは異なるのですが,チャボの暴挙が僕には謎と思えるのは,あれはプロレスの試合後の形を変えたセメントマッチだったように思えるからなのです。
 全日本女子プロレスは最高峰のタイトルがWWWAで,次がオールパシフィック。その下に全日本という序列でした。セメントが行われていたのはこの全日本のタイトル戦であったようです。確かに僕が見た中でも,全日本のタイトル戦というのはそこまでの技の応酬とは無関係に,最後は無理矢理に押さえ込んで3カウントを奪うという決着が多かったように思います。当時は不思議に思っていましたが,プロレスの試合をセメントで決着させるには,こういう方法で3カウントを奪うのが最も簡単だったのでしょう。
 試合の決着のつけ方としては,ファンからすれば面白いものではありません。だから下位のタイトル戦で行っていたのでしょうが,これはプロモーターの余興で,ずいぶんと趣味の悪い人たちが経営していたものだと思います。

 延長の属性Extensionis attributumからは無限に多くのinfinita物体corpusが生起しなければなりません。また,第二部定理一一系が示唆しているほかのものは,単一のものであると限定されているわけではなく,ひとつの場合もあるでしょうがふたつ,みっつ,あるいはそれ以上という場合もあり得るのであり,その組み合わせは無数に上ります。ですから人間の精神mens humanaがある物体を混乱して認識するcognoscere場合は,その混乱した観念idea inadaequataの様式は,論理的には無限に多くあります。よって,人間が形成するXの真の観念idea veraあるいは十全な観念idea adaequataは,どの人間にあっても同一であり唯一なのですが,Xの混乱した観念あるいは誤った観念idea falsaということになると,その種類は無限に多くあり得ることになります。これはもちろん,Aという人間が有するXの混乱した観念とBという人間が有するXの混乱した観念の様式が相違し得るということだけを意味するわけではなく,同じAという人間が,同じXの混乱した観念を,異なった様式で認識する場合があるということも意味します、要するに,知性の秩序の様式というのはどの人間にあっても同一で唯一の秩序であるといえるのですが,自然の秩序ordo naturaeというのはそれとは違い,無限に多くの様式があり,この様式そのものを秩序とみなす限りで,無限に多くの秩序があるということになるのです。
 このことをよく表しているのは第三部定理五一です。すでに示したように,人間は知性の秩序に従う限りでは能動actioという状態にあり,自然の秩序に従っている場合は受動passioという状態にあるのですが,現実的に存在する異なった人間が同一のものから異なった働きを受けるpatiこともあるし,同じ人間が同じものから異なったときに異なった働きを受けることがあるということをこの定理Propositioは示しているからです。少なくとも受動の様式が唯一ではないということは,この定理から明白になっているといえるでしょう。そしてそれはつまり,自然の秩序の様式は唯一ではないという意味なのです。
 このとき,人間がある自然の秩序によって働きを受ける場合と,それとは別の自然の秩序によって働きを受ける場合とでは,齎される結果effectusが異なるということがあり得ます。これは第一部公理三から明白です。
コメント
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