● 中村真人 「インゲ・ドイチュクローンが心に刻んできたもの」を読んで
『世界』2月号
須山敦行
◎ 日本と違って、ドイツでは、ナチスへの反省を真摯に取り組んできたのだ、と思い込んでいたが、そうでもなかったのだ。
戦後はナチスの残党がかなり重要なポストにあったし、「悪いのは戦争だ」ということで、「自分たちは被害者だ」というように、傍観したり荷担した自らの罪に向き合おうとする姿勢は、簡単には生まれてこなかった、というのだ。
そして、インゲのような、「忘れられない」という気持ちを持った人の粘り強い努力によって、長い時間を掛けて、真実に向き合うようになってきたのだ。
「自国や家族の歴史と対峙するには時間がかかるもので、これはドイツだけではなくて、日本でもそうでしょう」
ともすれば、戦後すぐにあったはずの反省が次第に消えて行くとばかり思いがちであるが、実は、本当に反省出来るように、事実と対峙できるのは、むしろこれからなのだ。十分に出来ていないのだから、これからの課題なのだ。決して、遅くはない。
◎ その中で、
「異なる国や民族に対する偏見や差別から、われわれはいかにして自由になれるのだろうか」
というテーマは、現在に続く、人類のテーマであり、私たちはその答えを求めて闘っているのだ。安倍君、ネトウヨ君。君は、現代のテーマなのだ。
◎ その答えの一つとして、
2013年ベルリンのユダヤ博物館で開催された特別展
『本当の真実。あなたがユダヤ人について知りたいすべて』は面白い。
「展覧会に置かれたガラスのショーケースに本物のユダヤ人が『展示』され、訪れた人がその中の人に自由に話しかけられるようになっているのだ。」
日本に、「植民地博物館」はないのだろうか。
そこで、『本当の真実。あなたが朝鮮人について知りたいすべて』展を開いたらいいんではないか。
◎ インゲは、「ドイツ政府から功労勲章を贈ることを打診されたが、「元ナチも受け取っているから」という理由で今日に至るまで全て断っている。」
私は、この「意地」には賛成だ。私は、勲章は拒否する。私は、管理職にはならない。私は、君が代は歌わない。少々、痛い目に遭っても。