● 藤岡惇 「新型核戦争システムと宇宙軍拡」を読んでのメモ
『世界』3月号
須山敦行
◎ 読んで本当に驚いた。まことに驚愕するが、事実である。
知ることは、恐ろしいことだ。とつくづく思った。
一つは、宇宙戦争の実態。
もう一つは、原発の持つ危険性の意味。
まことに恐ろしいが、この「世界」の 現実である。知らなくては、なお恐ろしい。
◎ 私はうかつだったが、桜井よしこ氏は、大事な所をキチンと見ている。
「二〇一二年九月五日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)法から『宇宙の平和目的』条項が削除され、宇宙の軍事利用を推進する主体が整えられた。JAXA法改定の方針を民主党野田政権が固めたことを、TPP参加、武器輸出三原則の緩和と並ぶ重要な決断として、ジャーナリストの桜井よしこ氏は称賛した。」
桜井よしこ氏らしい、正確な反応だ。
野田首相は、褒められた。
◎ 米主導の現代の戦争が、「半宇宙戦争」という色彩の濃いものになってきている、という事実。
無人機というものに、何か非常に不気味な恐ろしさを感じていたが、衛星の指示のもとに、ドローン(無人飛行体)によって宇宙から地上にしかける戦争が、リアルになっているのだ。
◎ 「第三次宇宙基本計画」は、日本が米国とともに、「宇宙でも戦争をする国」となり、米国戦略軍の指揮のもとで、日本の軍事衛星編隊が奮戦するためのものである。
◎ 二〇一五年一月九日に 宇宙開発戦略本部が開かれ、
国会審議も公聴会も行われず、基本方針が決まってしまった。
◎ 北朝鮮や中国のミサイルが日本を狙っているではないか? と、今の報道の中で生きていて感じる。
そして、
ミサイル防衛(MD)の任務を、
北朝鮮や中国その他の国が発射するミサイルから日本人の命と暮らしを防衛することだ
と思い込んでいる人が少なくないが(私も、ぼんやりそんな風に思っていたが)
それは幻想にすぎない。というのだ。
MDの任務は
①宇宙衛星編隊という米国の基地の防衛
②地球上に広がる米国・同盟国軍のネットワーク型戦力の防衛
である。
そして、
第二次世界大戦後、米国が開戦をした戦争の九九%は、米軍側の先制攻撃から始まった。
さらに、
1994年4月
クリントン政権は、核開発とNPT脱退を宣言した北朝鮮への先制攻撃を検討し始めたが、
「戦後(朝鮮戦争後)の国家建設が灰になる」と韓国側が抵抗し
後方支援への要請と傷病兵受け入れに日本側が難色を示した上に
カーター元大統領が北朝鮮訪問を敢行したお陰で、
(かろうじて)先制攻撃は直前に中止された。
米軍との圧倒的戦力差を考えると、
北朝鮮や中国の核開発拠点やミサイル基地への米軍の先制攻撃から戦争が始まる可能性が強い
その場合、北朝鮮や中国は残存ミサイルを応射して反撃するだろう.
下に書くように、その《反撃の標的》が問題だ。
MDとは、
その応射ミサイルを撃墜し、
米国の新型戦争システムを守るためのもので
日本国民の命と暮らしを守るものではない。のだ。
◎ 《 宇宙戦争 宇宙衛星の攻撃 とは 》
・地上ないし航空機から 強力なレザービームを発射して衛星を故障させる
・認知されにくい超小型の「キラー衛星」を打ち上げる
・大型の衛星のなかに多数の小型キラー衛星を隠しておき、有事の際にキラー衛星を散開させ、敵の衛星に隠密裏に接近させ破壊する
などなのだという。
◎ 《 矛は盾よりも強し 》
盾を強化しようとしても矛の軍拡を誘発する結果となる
そして
「矛盾の商戦」で儲けるのは、死の商人たちだ
◎ 《 反撃の標的 》
① 地上施設
MDの前線基地でありながら、防衛体制の貧弱なXバンド京都レーダー基地のような所
② 宇宙衛星
自国の衛星を撃墜する実験している
宇宙での核爆発を起こすと、米国の衛星の電子機器は故障を起こすだろう
宇宙での核実験を実際に行っている
③ 原発
原発とは「ゆっくりと爆発する原爆」のこと
この暴龍を飼いならし、「魔法のランプ」内に閉じ込め、電源として利用すること
しかし、フクシマは
ランプの簡単な壊し方があることを世界中の軍事集団に教えた。
どんな国、どんな軍事集団であれ、
原発を攻撃する覚悟さえあれば、
核爆発を生み出す能力を保有できることを示した。
核大国が核爆発力を独占する時代は過ぎ去った。
というのが、フクシマの送る最大のメッセージであった
◎ 《新しいタイプの核戦争の「起こしやすさ」》
①宇宙での核爆発
②原発の爆発
新型の核戦争は、伝統的な核戦争よりも「人道的」に見えるので、
核戦争を始める上での抵抗感は小さくなるだろう。
従来型の核抑止論の限界はいっそう明確となる。
◎ 《 日本の宇宙開発の進むべき平和の道 》
ロッキード・マーティン社は 「核戦争仕様」 の 軍事通信衛星 を目指す
軍産複合体にとって、残された数少ない「宝の山」が宇宙関連分野なのだ
◎ 《 MDをもとめる二つの力 》
① 米国の軍産複合体の要請に発する側面
② 安倍政権の独自戦略である「戦後レジューム」から「日本帝国の栄光の歴史」を取り戻したいという要請に発する側面
◎ 宇宙の脱軍事化 と 核兵器・核発電の全廃 とを 車の両輪として 運動していこう! と、呼び掛けて文章は閉じられている。
※ 目に見えない、宇宙空間で、軍需産業が暗躍している現実を知ってしまうことは、重苦しいが、いっそう平和への意欲を固めることである。