● 寺島実郎×翁長雄志 「沖縄はアジアと日本の架け橋となる」
『世界』5月号 から 須山敦行 〔p37〕
◎ 今回の、辺野古問題の推移、翁長知事の当選、その後の闘いが、全体として、歴史が現実が大きく変化していく、今までにない新しい動きの、重要な一歩を踏んでいることなのだ、と、「あれが転機だったのだ」というような、重要な変化であることに、目を開かされる対談だった。
◎ 時の人、翁長知事は、何を考えているのか、マスコミの報道では分からないレベルのことが、深く突っ込んで語られていて、それを聞き出した、寺島氏にも称賛を送りたい思いだ。
◎ しばらく前まで、沖縄独立論に対して、ちょっとそれは恐ろしいものと受け止めていた自分だが、この事態の中で、それを学ぶ?ことの中で、それくらいの変化も視野に入れて沖縄のことを見るような度胸が据わるような気がした。
これを機に、いくらか沖縄理解が進んだ。日本全体で、これを機に、沖縄理解をどれだけ進められるかにも注目したい。
◎ 歴史的な、日本の沖縄に対する差別の存在。それは、朝鮮に対する差別と類似したものである。このように、沖縄と朝鮮が並列されることに、一種の違和感を持ったが、それが現実だという面がある。
◎ 日本の侵略戦争の歴史さえ、真っ直ぐにそれを見ることを拒否したい現政権であるが、沖縄の歴史を真っ直ぐに見つめることができるだろうか。
沖縄は、目の前に基地を見ている。だから、歴史の現実を見ている。歴史を見ないようにしようとする現政権。歴史から学ぶことができない現政権。歴史から未来を見ようとする沖縄。沖縄が、私たちに、現実、歴史、未来を見る目を与えてくれる。
◎ 沖縄から基地をなくすこと。日本が本当の平和国家になること。平和国家としての日本が世界の平和のシンボルとして力を発揮すること。それこそが、本質的な意味で、軍事で世界を動かそうとする野望に勝つことであり、中国などの軍拡の脅威に勝つこと。
《 本文からの「抜き書き」 》
●寺島 「世の中には代替案を出せ、辺野古がだめならどこか別のところを出してみろと言う人がいます。私はその議論をやめろ、と言っているのです。それは、普天間の安全性を毀損した米国に、検証して代案を提示する責任があるのであって、日本側がどこかで引き取ってもらえないだろうかと持って回るような類いの、迷惑施設の立地問題と全然違う。」
●翁長 「私は、『振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくして下さい。そのかわり基地は返してください。国土の面積〇.六%の沖縄で在日米軍基地の七四%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか』と言ったのです。」
●翁長 「四七都道府県の中で、沖縄には日本国から来た在沖縄大使がいらっしゃるのです。」
※ それは、驚きだ!
●翁長 「外務大臣も防衛大臣も、結局何をおっしゃるかというと、『アメリカが後ろで反対するんだよ』。そうすると、もうアメリカと対話するしかないのか、ということなんですね。」
「アメリカという国の底深いところに私たちはもっと足を踏み入れて、議論もして、事態をつき動かす可能性もあるのかなと思っています。」
●翁長 「辺野古について再考することが、日米関係、日米安保体制を問い直し、さらには米中、日中関係を、尖閣問題をどうするかという、たくさんの課題を整理し改善していくことにつながる。だから私は、まず基地問題に取り組んでいきたいのです。」
●翁長 「沖縄は、あまりにも中国に近すぎて、ミサイル数発で普天間と嘉手納が吹っ飛んでしまう。………アメリカは沖縄にいる米国人のことを心配していて、もしも中国との関係がもっとややこしくなってきたら、いつの日か突然、沖縄から出て行くのではないか、とまで私は思うのですが。」
●寺島 「変化していく事態、状況に対して、私たちは何もたじろぐことはない。」
●翁長 「安倍首相は第一次内閣で『美しい日本』と、そして今回は『日本を取り戻そう』とおっしゃっています。即座に思うのは『そこに沖縄は入っていますか』ということです。そして『戦後レジームからの脱却』ともおっしゃいますね。しかし、沖縄に関しては、『戦後レジームの死守』のような状況になってしまっています。そしてそれは、アメリカが離さないのではなくて、どうも日本がそのような状況を変えないぞと言っているように、沖縄からは見えるのです。」
●翁長 「沖縄の基地問題の解決は、日本の国がまさしく真の意味でアジアのリーダー、世界のリーダーにもなり得る可能性を開く突破口になるはずです。
辺野古の問題で、日本と沖縄との関係は対立的で危険なものに見えるかもしれませんが、そうではないのです。
沖縄の基地問題の解決は、日本が平和を構築していくのだという意思表示となり、沖縄というソフトパワーを使っていろいろなことができるでしょう。様々な意味で沖縄はアジアと日本との架け橋になれる。」