● 河合弘之×海渡雄一×鹿島啓一 「山動く日、来たる」を読んで
(『世界』6月号)を読んで 須山敦行
◎ 四月十四日福井地裁の「高浜原発3・4号機運転差し止め仮処分」の成果についての当事者達の評価の対談です。
◎ この判決のもつ非常に重要な沢山の内容について、解説になっています。
◎ 各論の中で、私が特に重要だと思ったのは、判決が「原子力規制委員会の新規性基準」を不十分と批判していることです。
◎ 画期的なこの判決は、これからの全ての再稼働を止める力を持つ、という。
◎ 「私たちは今回の決定と昨年五月の判決を各裁判所に提出していますが、これらを読んで心を動かされない裁判官はいないと確信します。
そして重要なことは、その人たちが自らの良心にしたがって判決を出していける情勢を私たちの手で作っていくことです。」 〔p.127〕
※ というので、四月十四日の判決文(理由の要旨)をネットで入手して読んでみました。
この判決文の意味を解説しているのが、『世界』の対談の内容だったのです。
http://adieunpp.com/karisasitome/150414decabstract.pdf
ここで、読めます。
※ 以下、判決文を学ぶ
※ 《基準地震動》
「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」
「平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある。」(入倉孝次郎教授)
地震の平均像を基礎として万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見い出し難いから、
基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っている
※ 《多重防護の考え》
基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあることは債務者においてこれを自認しているところである。
外部電源と主給水によって冷却機能を維持するのが原子炉の本来の姿である。
安全確保に不可欠な第1次的設備を安全上重要な設備でないとする債務者の主張は理解に苦しむ。
多重防護とは
堅固な第1陣が突破されてもなお第2陣、第3陣が控えているという備えの在り方を指すと解されるのであって、
第1陣の備えが貧弱なため、
いきなり背水の陣となるような備えの在り方は
多重防護の意義からかずれるものと思われる。
※ 《冷却機能の維持》
日本国内に地震の空白地帯は存在しない。
基準地震動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、
そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険である。
※ 《使用済み核燃料》
使用済み核燃料は我が国の存続に関わるほどの被害を及ぼす可能性があるのに、
格納容器のような堅固な施設によって閉じ込められていない。
深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるを得ない。
使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性もBクラスである。
※ 《具体的な方策》
①基準地震動の策定基準を見直し、基準地震動を大幅に引き上げ、それに応じた耐震工事を実施する。
②外部電源と主給水の双方について基準地震動に耐えられるように耐震性をSクラスにする。
③使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む。
④使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性をSクラスにする
という各方策がとらえることによってしか解消できない。
※ 《原子力規制委員会の新規性基準は緩すぎる》
・使用済み核燃料プールに係る計測装置がSクラスである必要性
耐震性及び放射性物質に対する防御機能が高い免震重要棟の設置の必要性
を 規制の対象としていない
免震重要棟に「猶予期間」を設けている
地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である。
・新規制基準に求められるべき合理性とは、
原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような
厳格な内容を備えていることであると解すべきことになる。
・しかるに
新規性基準は、緩やかにすぎ、これに適合しても本件原発の安全性は確保されていない。
新規性基準は合理性を欠くものである。
※ 《人格権、被保全債権》
本件原発の事故によって債権者らは
取り返しのつかない損害を被るおそれが生じることになり
保全の必要性も認められる。