zoom『世界』を読む会・2月例会の報告
2月25日(金)、zoomの『世界』を読む会・2月例会が行われました。参加は、5名でした。
●第一テーマ・鴨志田祐美「再審制度の改革はなぜ必要なのか」
・刑法改正の際に、再審の条文だけが間に合わなくて戦前のまま取り残されたという事情があったとは驚いた。
・治安維持法のやり方、(思想犯では物的証拠は問題にならない)取調べにおける自白偏重主義が戦後も続いていることが、諸外国と違って非常に問題な点ではないか。
・証拠開示に関することで、アメリカに比べて、日本では他の分野でもデスクロージャー制度が取り入れられていない現状がある。
・検察官が不満があれば、再審の中で主張すればいいのに、抗告で妨害してしまっているのはおかしいという主張だ。
・「再審法改正をめざす市民の会」(https://rain-saishin.org/)〔p.215〕の映画喫茶『泪橋ホール』(https://namidabashi.tokyo/)の行事で、布川事件の櫻井昌司さんの作詞作曲した『想いうた』というCDを買ったが、櫻井さんはNHKの『逆転人生』にも出たようだが、癌を患っていて、歌を聴いて涙が出てきた。
・刑法関係の問題としては、死刑廃止論があるが、團藤重光という人が死刑賛成から廃止論へ変わったことが印象に残っている。
・検察の有罪証拠のねつ造、あるいは無罪証拠の隠ぺいということがあるのだが、これは過失ではなく意識的な行為なのだが、この文では〔p.217〕個人責任でなく制度の機能不全だとしているが、こういう行為が何らかの罰則の対象になることは考えられないだろうか。村木さんのねつ造の場合は、政府内部での処分で終わっているという扱いだったが。
・須網論文〔p.172〕では、越境的に国際間で対話する裁判官対話のことが書かれているが、韓国の裁判官が非常に積極的に参加している(「アジア憲法裁判所協会」)のに、比べて日本の裁判所は消極的である、とあったことと、〔p.214〕の「ガラパゴス化する日本」ということと関係しているのでは。
・慰安婦問題で、日本の裁判所は1965年の日韓条約から判断しているのに対して、韓国の裁判所は1978年頃の国際人権条約に基づいて判断している。
・「人事」が物事をよい方向に持っていく壁になっているが、「直接の上司」には人事権がなく「人事」が独立したシステムになっている体制が最低限、必要だろう。
・岩手県議会では意見書を出すことが出来たとあるが、市民が動いて地方議会は風穴を開ける働きが可能だという現実がある。
●第二テーマ・中村真人「頭とこころでつまずく」
○ 郡山さんの報告で、実際にドイツに行った時に撮影した「つまずきの石」の写真を見せて説明していただきました。zoomで「画面の共有」をして。6点に整理して報告を受けました。
①つまずきの石は、市民の生活の場所にある。日常の中で歴史と共に生活している。犠牲者は一般市民だったことを示す。
②「分散型」記念碑であったため、市民からの距離が短く、つまずきの石プロジェクトは、大勢の市民が参加するものになった。ヨーロッパ27カ国、8万人まで。
③ナチスの犠牲者全ての人々を対象としている。(ユダヤ人、シンティ・ロマ、同性愛者、障害者、政治思想や宗教で迫害された人、強制労働者、脱走兵)
④名前を持った、一つ一つの家族と個人の物語を語るものになっている。600万人という抽象的な数ではなく。
⑤つまずきの石は創造的なアートである。
⑥足で踏みつけるということに関する議論があった。〔1月号p.259〕カッセルでのユダヤ教ラビの説明。〔p.265(4)〕にある、ミュンヘンの「目線の高さで」という対応。
・加害の歴史を忘れないという決意の表れであり、それを担保する工夫の込められた貴重なプロジェクトだ。
・「群馬の森」の朝鮮人強制連行犠牲者追悼の「記憶 反省 そして友好」という記念碑が2004年県議会で全会一致で設置されたものが、ヘイトスピーチを繰り返す右翼団体の請願によって、2014年、更新期に自民党・公明党の賛成で設置を拒否した。参加者が慰霊碑前で「強制連行」という言葉を使ったからという理由で。それは「政治的だ」、この碑の前で政治活動はやってはいけない。高崎地裁では市民が買ったが、東京高裁で去年八月下旬県が勝ち、最高裁に持ち込まれている。その結果によって、撤去されることになるかもしれない。
ドイツの自治体の協力と、日本の妨害との差はあまりにも大きい。
・「頭とこころでつまずく」というのはいい題名で、アートで伝えるというのはいいなと思う。安逸な日常に攪乱を持ち込むような。
・埼玉の平和博物館でも、書き換えられることが起きている。
・ユダヤへの迫害のことは、朝鮮人の問題、南京事件などに比べて、重く扱われている。プロバガンダの差か、運動の差か、本当の両方とも大切な問題なのに。
・我々ドイツ人が過去につまずいた、という過去の「つまずき」かと思っていたが、今ここでこの石に「つまずく」そこから考えを進めるという意味なのかと思い直した。
・日常に過去の死と向き合うような仕掛けがお店の前の道にあるようなことが日本では精神の在り方としては考えにくいな、と思った。
・南京事件を描いた映画は、ヒトラーを描いたものに比べてまるでない。日本の小説としては、堀田善衛の『時間』と榛葉英治の『城壁』があるのみだが、『城壁』は出すのに非常に抵抗があった。
・ドイツの扱い方は、加害者も被害者も「個人」として扱われている。そこが日本と違うのでは。
■ 本の紹介がありました。
・中島京子『やさしい猫』
・酒井隆史『グルシット・ジョブの謎』
・今野晴貴『賃労働の系譜学』
◎ ZOOMの『世界』を読む会、3月例会 の予定
●日 時 3月25日(金) 午後7時~9時半
※ 月末の金曜が定例です。
○共通テーマ
・「NHKに何が起きているのか?」 長井 暁
・「原発とどう向き合うか?」 八田浩輔
○参加ご希望の方は連絡下さい。案内を差し上げます。
● 連絡先 須山
suyaman50@gmail.com










