前回書いたように、「変人・奇人の集い」というユニークな会に呼ばれて、日本酒の話をした。みんなお酒を愛する人たちで、私ごときの話を一時間、実に良く聞いてくれた。そして思いのほか喜んでくれた。もちろん、お世辞も含まれているのだろうが、かなり盛り上がって聞いてくれて、何人かの人に「是非続きを聞きたいので機会を持ってくれ」と言われた。
まあ、話の内容はともあれ、講師に対してそれなりの礼節をもって応えるところに、この集いの方々の水準の高さがあるのであろう。
私は酒のプロではないので、単に私がこれまで飲み歩いた体験を語ったにすぎない。その中で、ニセモノ酒と本物の酒をできるだけ明らかにしようと思った。そして、相当な飲み手の集まりにあっても、酒の中身についてはまだまだ熟知してない人が多いことも分かった。
酒好きほど酒を知らないということもある。そもそも酒好きは日常的に酒を飲んでいるので、その中身なんていちいち吟味しない。たまに出くわしたものについては、辞書を引いたり参考書を調べたりしても、毎日接しているものにそれはやらない。
そこに落とし穴があるのかもしれない。それだけに、私の酒の飲み方が案外新鮮に聞こえたのだろう。私はどこに行くにもそこにどんな酒があるか調べ、蔵元に手紙を出して「その酒を美味しく飲める飲み屋」を紹介してもらって、その中身を確かめながら飲んできた。
そのようなこだわりが、意外に新鮮な話として受けたのかもしれない。
最後に、酒文化は「造る人(蔵元)」、「運ぶ人(酒販店)」、「飲ませる人(飲食店)」、「飲む人(一般国民)」の四者が綾なすコラボレーションだ、と話した。この四者のどこが手を抜いても酒文化は花咲かない。特に、「前三者がどんなに良い酒の提供に努めても、飲む人たる皆さんがズッこけたらおしまいだ。本物の美味しい酒を求め続けてください」と結んだところで大笑いとなり話を終えた。
ところで、かく言う自分も単なるオタクに堕しており、何か重要なものを見失っているのではないか・・・? と不安を感じながら帰途についたのだが。