狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

クミスクチンとロシアの大統領

2006-04-06 16:10:10 | 食文化

最初は耳慣れない言葉も聞きなれると自然に口から滑らかに出るようになる。

 一昔前、初めて「クミスクチンチャ」という言葉を聞いた時は何度か聞き返した。

 最近では某テレビ番組で紹介されたとかで健康食品愛好家の中では知られた名前になっているらしい。

クミスクチンとはマレーシア語で「ネコのひげ」という意味をもつ植物の名前。

各種ミネラルやカリウムが豊富に含まれているので利尿作用があり腎臓によいとの事。 「ウッチン」「グァバ」と共に沖縄の三大野草の一つだという。

                    *

その「クミスクチン茶」を初めて耳にしたのは、未だ沖縄の健康食品が昨今のように一般に定着する前の事だった。

ヤマト在住の知人から「クミスクチン茶」を送るように頼まれた。 健康食品に疎い私は本土系列の大手薬品スーパーにそれを求めた。

広い店内にはいかにも新入り風の若い店員が2,3人いた。

客の途絶えた夏の昼下がりだった。

 奇妙な商品名に初めから不吉な予感がしていた。

応対に出た若い青年の胸の「見習中」の札を見て不安は更に広がった。

 「クミスクチンチャありますか?」

「クミス・・・?」

 「ク・ミ・ス・ク・チン・チャ!」

 「エッ?・・ナニのチン・・ですか?」

 「クミスクのチンだよ。」

「はー?・・・一寸お待ちください」 件の見習青年、カウンターの中に入って同僚達と何かゴソゴソ相談している様子。

 この手の類の話は当人同士が真剣であればあるほど後で思い出して可笑しくなるもの。

勿論私もその時は大まじめであった。

 戻って来た青年の表情から、求める「・・チン」が何なのか、いや有るか無いか、それさえも分からない様子が読み取れた。

 彼が戻る前に既に私の心は決まっていた。

 ≪訪ねた店が悪かったのか。 いや、慣れない店員が悪かった。 それとも商品名が悪いのか≫

 ≪ 早々に退散しよう。表では車で女房が待っているし。≫

「すみません。 クミ・ス・ク・・」 相手が「チン」を言い終わらぬうちに、「サヨナラ」・・・と、こういう場合あまり適切で無い言葉を彼に残してその店を脱出した。

 店を出際に振り返ると、その哀れな青年「クミスク・・」と言いかけた口をポカンと開けたまま呆然と立ち尽くしていた。

 後で落ち着いて考えて見ると、私のせっかちな行動と不明瞭な発音が、真面目な見習店員の心深く「変なオヤジ」というトラウマを刻み込んだだろうか。

 しかし、こんな場合慣れた店員を置いてもらわなきゃ困る!

≪ロシアの大統領じゃあるまいし≫

 待っていた女房の車に乗り込む時呟いた私の独り言を女房が聞き返した。 

 「ロシアの大統領がどうかしたの?」

「いや、チンの話だよ」

「何のチンですか」

「ロシアの大統領はフリチン、・・・いや、エリチン、・・・でもなくて、プーチンだ!」

 「それがどうかしたの」

車に乗り込んで考えた。

あの見習新人に動揺をを与えたのはやっぱり私のせっかちな行動と不明瞭な発音のせいではない。

クミスクチンのせいだ

           ◇         ◇         ◇

 ★蛇足;「クミスクチン茶」 インドネシアに広く自生するシソ科の多年草で、雄しべが長く伸びたユニークな形から、インドネシア語で「クミスクチン(猫のひげ)」と呼ばれる。 葉から抽出できる薬効成分「オルソシオニン」は、腎炎・水腫・尿路結石などに大変効果的。 ミネラルのカリウムを多量に含んでいるのが特徴。カリウムは血液中の窒素やナトリウムを排出し、血管や筋肉を柔軟にするため、高血圧・美肌・痩身・便秘などにも効果的です。ドイツでは「ニーレンティー(腎臓茶)」、中国では「腎茶」などとも呼ばれ、副作用のない「健康茶」として親しまれ、血液内の脂肪を取り除く「美容健康茶」として愛飲されている。

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「長寿県」は肥満日本一

2006-04-06 12:08:44 | 未分類

死語になりかかった言葉に「健康優良児」というのがある。

小学校の5、6年の頃その栄誉を得た友人がいた。

今で云えば何の事は無い、ただの肥満児であった。

その頃は健康優良児と対極をなすのが栄養失調児であった。

戦後、敗戦国民は皆食糧難を経験した。

肥っている事は裕福と健康の象徴でさえあった。

その頃沖縄では世界一裕福なアメリカ人の生活を間近に見ていた。

金網の中の彼等の生活は羨望を通り越して別世界そのものであった。

アメリカは27年に及ぶ沖縄占領でいろものを沖縄に残した。

昔の沖縄では稀だった「肥満」は、アメリカが残した厄介な置き土産になった。


                  *


復帰(施政権返還)後、沖縄は「長寿県」として知られるようになった。

それを裏付けるような食生活が全国に紹介された。

その中の一つが沖縄では取れない昆布の消費量が日本一。

クーブイリチ(昆布の細切り炒め)や昆布の煮物、確かに昆布は沖縄の食生活にじゃ欠かせない。

その昆布の消費量日本一の座を富山県に明渡したという。

しかもその理由が「調理が面倒だ」というから情けない。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-10778-storytopic-1.html

統計データは正直なもので昆布の消費量減少と反比例してあり難くない日本一の栄誉に輝いた。

なんと肥満日本一の座だ。
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-10523-storytopic-11.html

肥満という有り難くない栄誉は男女ともに全国1位だ。

特に男性は全国2位の北海道(34・8%)を約12ポイント上回るなど突出している。

肥満のデータは平均寿命の推移に直結する。

2000年の都道府県別の平均寿命で沖縄県の女性は86.01歳とトップを維持した。

が、男性は77.64歳と全国平均(77.71歳)を初めて下回った。

そして5年前の調査の4位から一気に26位まで落ち長寿県の栄誉は既に明渡していた。


「原因は中年世代の死亡率の高さだ」と県医師会の当山護副会長は説明する。

45歳から59歳の死亡率は、脳血管疾患や脳出血、肝疾患、糖尿病などで全国ワースト10に入る。

いずれも生活習慣と関連の深いとされる疾病ばかりだ。

生活習慣病は肥満、そして食生活にその原因を遡る。

アメリカさんも厄介な置き土産を残して行ったものだ。


                   *


そのアメリカが、平均寿命の短縮に直面している。 

アメリカでは既に成人人口の64.5%が太り気味・もしくは肥満体。
(肥満の指標となるBMI値=体重÷身長の2乗は「25」)

2008年には米国の成人の3/4がこの数値に達すると予測されている。

アメリカの肥満はジャンクフードと車社会というアメリカ文明によって作り出されている。

しかし、原因はそれだけではない。

肥満は貧困によっても作り出されているのだ、と指摘がある。

戦後裕福の象徴とされた肥満は貧困の象徴に転落したのだ。

アメリカで肥満度の高い州は、南東部の貧しい地域に集中しているという。

ハリケーン被害の甚大であったというニューオリンズ地域の貧困層と思いがつながる。

アメリカの富裕層はスリムな体形を維持する為、お箸を巧みに操って高級日本料理に舌鼓を打つ。

その一方では、 特大サイズのジャンクフーズに貪りつく大多数の貧困層。

その昔、世界一の金持ち国として隣人生活をした沖縄。

時の流れに今昔の感を覚える。

 

 

 

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