沖縄が日本に返還された直後の頃。
多くの会社の社員達が出張で初めての沖縄を訪れた。
そして街のどの食堂にも書かれている「和洋中華冷やし物一切」と書かれた看板に驚かされた。
和食も出来れば洋食はもちろん中華料理も出来る店、そして冷やし物一切を提供できる魔法のようなレストラン。 それにしてはずい分素朴なたたずまい。
試しにその一軒の食堂に入って見ると、どうやらオバァが一人でやっているらしい。
和の板前や洋、中華のコックがいるようにも見えない。
「和食は何が出来ますか」と聞くと、親子丼に天ぷら定食が出来ると言う。 もちろん天ぷらはガラスケースにある作り置きの沖縄風天ぷら。
和食メニューは、ほかにも沖縄風の大き目のいなり寿司が有るという。 なるほど和食に違いない。
洋食はカレーライスにステーキも出来るとのこと。 ん? これが洋食?
中華は、と訊ねるとチャーハンに焼きそばが出来るという。
ラーメンは沖縄そばしか出ないので置いていない。
焼きそばの麺は沖縄そばを使い、いわば沖縄風焼きそばと焼き飯だ。
で冷やし物一切とは?
沖縄ぜんざいにコーラにジュースがあれば十分だろう。
かくしてオバァ一人の小さな街の大衆食堂が「和洋中華冷やし物一切」の店に変身するわけだ。
アッパレ!
大衆食堂とは別の意味で、米軍時代の雰囲気を残したレストランが沖縄にはまだ健在だ。
「ピザハウス ジュニア」は値段もお手ごろで気軽に入れる店。
この店のメニューは ピザハウスと言うくらいだから各種ピザはもちろん、お手軽ステーキから、メキシコ料理、カントン風フライドチキン、それに沖縄風タコライス、そして日本風のカツカレーに至るまでバライティーに富んでいる。
客層は若者が多いが、ときたま店の雰囲気には不似合いのオジィ、オバァが偶然米兵と並んで食事をする光景を目にする。
米兵が日本風のカツカレーをほおばっている。
カレーの匂いがあたりに漂う。
メニューを見ていたオバァが米兵のカレーを見てつぶやく。
「グスメー」
ん? 何語だろう。 沖縄方言か。
沖縄方言で「グソウ」とは後生、つまりあの世のこと。
いくら年寄りでも食事中にまさかあの世の話でもあるまい。
では「グスー」か? グスーは御衆と書いて「皆さん」のこと。
言葉の意味を検索していると、米兵がスマイルしながらアバァに答えた。
「ユライキッ」
オバァもスマイルで答える。
「アライキッ」
こちらの疑問を無視するかのように、にこやかに国際交流は続いた。
学校英語で言えば「グスメー」は「グッド スメル」と発音するし、「ユライキッ」は「ドゥーユー ライク イット」となる。
「アライキッ」はもちろん「アイ ライク イット」。
沖縄式英語は学校英語を抑えて国際交流の現場では無敵である。
沖縄ではタバスコはハッツソースでありペッパーソースとは言わない。
ホットソースと言わないところがミソだ。
ちなみにタバスコは「ハッツソース」の商標である。
最近の沖縄ブームで「スパム」もすっかり全国区になったが本家の沖縄では元々はホーメル社のポーク・ランチョンミートの1商標に過ぎず、あまりなじみのある名ではなかった。
沖縄ではポークランチョンミートのことは何といっていたか。
ズバリ「ポーク」の一言で通用した、いや今でも通用する。
その名残が、今では名物料理の「ポーク玉子」に残っている。
「タコライス」が蛸飯でないのと同じく、「ポーク玉子」は豚肉を玉子であえたものではないのだ。
ポーク・ランチョンミートと玉子焼きのコンビネーションがポーク玉子。
つまり沖縄ではポークと言えばいわゆる豚肉のことではなく、「ポークランチョンミート」の缶詰を意味する。
三枚肉とは三枚の肉でないのと同じように、沖縄ではポークは豚肉ではない、・・・といっている本人も何を言ってるのか良くワカラナクなってきた。
「ポーク」は一般的にスパムと言われているが、迷惑ネールを意味するネット上の「スパムメール」はポークのスパムに由来する。
保存と携帯に便利なため「スパム」は米軍の軍用食に利用された。
だがいくら美味しい物でもこれが繰り返し毎日続くと、★「又コロッケカー!」、・・・じゃなく、「又スパムかー!」、といやになってしまう。
この繰り返しやってくる迷惑メールを、繰り返し食わされる「スパム」に例えたという。
米軍占領下の沖縄では色んなブランドの「ポーク」が売られていたが、当時の一番人気はデンマーク製の「チューリップ」だったと思う。
今でも地元テレビでは「チューリップのコマーシャル」を流している。
子供にお使いを頼んで「チューリップを買ってきて」と言ったら、花屋には行かずに雑貨屋に行って「チューリップちょうだい」と言う。
言われたオバァも迷わず「ハイ チューリップ」とポークの缶詰を手渡す。
それを見ていた本土の観光客。
「へー、 沖縄語では缶詰のことをチューリップというのか」。
ポークにはチューリップの他にも、「ミッドランド」とかブランドは忘れたが、アメリカ製や北欧製の他に台湾製やブラジル製の「ポーク缶詰」も売られていた。
それだけ沖縄ではポークの需要が多かった。 いや今でも多い。
【蛇足】
★今日もコロッケ、明日もコロッケ~
「コロッケの唄」
「カフェーの夜」より 大正7年 益田太郎冠者 作詞/作曲
♪ランラララララララ ランランラン
ワイフ貰ってうれしかったが
いつも出てくるおかずはコロッケ
今日もコロッケ 明日もコロッケ
これじゃ年がら年中
(ウイー)コロッケ
アハハハアハハハ こりゃおかし♪
★ピザハウスジュニアhttp://r.gnavi.co.jp/f084201/
のインターナショナルなメニューの例
沖縄式タコライス
和式ライスコロッケ
和風カツカレー
メキシカンセットにタコス
ナポリ風ステーキにピザ
フィリッピン風チキンスースープ
広東風フライチキン
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