最近では死語になりつつあるが沖縄語に「ユーレー」という言葉がある。
夜になると「ユーレー」に行くといって家を出る人がいても、幽霊見物に出かけるのではない。
「寄り合い」という本土でいう相互金融の「頼母子講・無尽講」のことである。
最近では模合(もあい)と呼ばれているが、沖縄では、複数の個人や法人がグループを作って一定額の金銭を払い込み、毎月入札やくじ引きにより、1人ずつ順番に受け取る金融相互扶助システムのことである。
友人や同期生の飲み会が主目的の小規模なものから、事業の運転資金調達といった大規模なものまである。
ちなみに筆者の属する高校時代の同期生約10名の「模合」はとっくの昔、僅かな掛け金を踏み倒すヤツが出て、現在は「模合」口実の単なる飲み会に堕落してしまったが(笑)・・・。
沖縄で血縁による「親戚模合」、職域による「会社模合」、「地域模合」等々、何らかの模合組織に属している人が多い。
どこかの会合で誰それと名前を言うと、たちまちソイツは自分の従弟だとか、ヤツは自分の「もあい仲間」だといった声が出てくる。
この沖縄独特の相互扶助の精神が「結(ゆい)まーる」に生きている。http://www.culture-archive.city.naha.okinawa.jp/top/main/show_dinfo3.php?keyvalue=10055000
だが、中には親睦や「相互扶助」の目的から大きくかけ離れた利殖目的の模合では、親(責任者)が金を集めてドロンする詐欺的模合が現れたり、企業模合で掛け金が払えなくなって破綻する「ゴロゴロ模合」が新聞の社会面を賑わしたこともあった。
このような人間の絆が入り組んだ沖縄社会は、ネズミ講やマルチ商法が全国に先駆けて流行する素地を多く含んでいる。
昨年の「11万人」集会の時は、この濃密な人間の絆がフル回転して、いろんな方面から「県民大会に参加するように」という声が圧力となってかかってきた。
その同じ時期に「マルチ商法の破綻」を大々的に報じる新聞に、沖縄の共同体の特殊性が垣間見れて興味深かった。
以下は昨年「11万人」集会直前のエントリー「ねずみ講」の再掲です。
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那覇日経、「集団自決」45人学ぶ 事前学習で生徒に怒り
9月29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」に特別授業の一環で1200人の生徒、教師が参加する那覇日経ビジネス工学院(島袋永伸学校長)は20日、「集団自決」などに関する事前学習を行った。事前学習には、メディカルスタッフビジネス科の生徒ら45人が参加した。
同院情報工学科の国井正昭講師が沖縄戦の概要や新聞記事を基に「集団自決」について説明した。その後、高校歴史教科書検定の修正前と修正後を比較し「日本軍の関与があったことを削除しようとしている。『集団自決』した人々は自発的だったととらえられかねない。高校生が読んでどう思うか」と指摘した。
生徒は「本当に隠そうとしているからむかつく」などと疑問視。大城舞子さん(19)=南城市=は「授業を受けて沖縄の真実からかけ離れていることに怒りを感じた。東京にも声を届けたい」と話した。事前学習は28日までに22クラスすべてで行われる。
(琉球新報 9/21 10:04)
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ドサクサ紛れに過去の曲を発表してもも記事になる。(「白玉の塔」県民大会で歌唱 歌通し後世へ )
マスコミは直前に迫った「県民大会」への参加動員にはなりふり構わず手段も選ばない様相だが、
20日の琉球新報社会面トップを飾った記事で、動員人数を増やすにはネズミ講が一番だと妙な連想に走った。
「高利配当」2月停止 L&G全国に被害拡大か
高利配当をうたい、沖縄を含めた全国各地で多額の出資金を募っていた健康関連商品販売会社「L&G」(波和二代表、本社・東京都)がことし2月ごろから、現金の配当を停止していたことが20日、出資者らの話で分かった。L&Gを相手に元金返還などを求める訴訟も全国各地で相次いで起こされており、那覇地裁でも同日、浦添市の女性を原告とした訴訟の判決でL&G側に300万円の支払い命令が出された。別の被害者を支援する東京の弁護士は「1500億円の出資金を募り倒産した全国八葉物流に匹敵する被害が予想される」と指摘しており、同社をめぐる問題は今後一層表面化しそうだ。
L&Gは宜野湾市に沖縄営業所を置き、県内出資者を募っていた。沖縄営業所は琉球新報の取材に対し「本社に問い合わせてほしい」と話し、本社は「代表がいないので解答できない。代表が戻り次第、確認して折り返し連絡する」と話していたが回答はなかった。
県内出資関係者の話によると、会員は全国に約5万人いるというが、詳しい出資金の総額や県内出資者数、出資額などは不明な点が多いという。
L&Gは3、4年前か「協力金」名目で一口100万円が1年後には136万円(年率36%)になると説明し、不特定多数から集金していた。2007年2月以降に現金による配当は停止し、事実上、破たん状態に陥っているとみられる。
静岡県でも女性2人が総額3千万円の元本返還を求めた提訴を起こしている。今年、東京で開催された全国大会で波代表は「66人の被害者による元本返還などの訴訟が起き(会社の)口座が差し押さえられ、配当できない状況にある」と話していたという。
提訴した浦添市の女性は06年12月、300万円を出資した。しかし翌年2月に解約の意思を示すとL&G側は「捏造(ねつぞう)報道により当社の資金環境は非常に厳しい」として一方的に支払延期を通知し、現在も返還に応じていない。
原告の女性は「盲目的に信じている人たちがいる。これ以上犠牲者を出さないために提訴に踏み切った」と話した。
東京で訴訟を起こした内藤満弁護士は「明らかに出資法に抵触している。倒産しないためには永遠に新規会員が増え続けなければいけない。いずれ必ず破たんする」と指摘した。(宮城征彦)
(琉球新報 9/21 9:54)
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今から三十数年ほど前、アメリカ生まれの大型ネズミ講が初めて日本に上陸し日本中を騒がした。
その名は「ホリデイマジック」と称して化粧品販売を「マルチ商法」で販売すると標榜していた。
当時、化粧品の販売方法には資生堂に代表される店頭販売法とポーラに代表される訪問販売があったが、ホリデイマジックは第三の商法と称する「マルチ商法」でこれを販売すると宣伝していた。
今ではマルチ商法というと詐欺まがい商法の代表と思われているが、その頃はアメリカで生まれた新しい商法という触れ込みで、勿論現在のようにこれを規制する法律もなかったので、マルチ商法という名に詐欺的意味を感じる人はほとんどいなかった。
結局は化粧品の販売というのは目くらましで、実際は「販売権」という架空の権利を売買するのが目的で、その説明会に顧客を勧誘すれば専門のアジテーターが「このシステムがいかに儲かるか」と言葉巧みに扇動し、顧客に投資させその顧客を会場に動員した会員に配当金が配られるという仕組みだった。
いわば化粧品を餌にした巨大ネズミ講だった。
このアメリカネズミ講は全国に先駆けて沖縄で異常に拡大した。
ホリデイマジック以外にも沖縄で異常増殖したマルチ商法は数多くある。
いずれも目くらましの商品の販売を宣伝するが実態はネズミ講そのものである。
では何故沖縄でネズミ講が増殖しやすいのか。
それは沖縄は「結いマール」社会といわれ「むえー(模合)」と呼ばれる無尽講が社会のいたるところで行われているという事実である。
無尽とは金融の一形態であり、複数の個人や法人等が講等の組織に加盟して、通常は一定の金額を講等に払い込み、入札や抽選によってその払い込み合計金額を受けるシステムである。
友人同士の親睦のための「模合」は別として、金融のための「模合」への勧誘は信用のある人を主催者に立てると、続々と参加者が増えるというのが一般的である。
ところが信用があると見えた人が実際は借金だらけで「模合」が崩れる話は沖縄では決して珍しくはない。
このような沖縄の社会環境では人間の楯横のつながりが重要で、そのため結婚式や葬式に集まる人数の多さは他県の人を驚かす。
上記記事の健康関連商品販売会社「L&G」も結局は「ホリディマジック」の変容したネズミ講なのだろう。
石川五右衛門は「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」と辞世の歌を歌ったが、
沖縄では時代が変ってもネズミ講の種は尽きないようだ。
ところで、昨日のエントリーで新聞社の扇動に煽られて沖縄中が「県民大会」に動員される様子を評して「ネズミ講」を連想すると書いたら、読者の「鴨川」さんから次のようなコメントを頂いた。
ネズミ講 (鴨川) |
2007-09-21 16:32:30 |
ネズミ講とは言い得て妙、です。 「県民大会に5人勧誘したら○○円配当」といった巨大ネズミ講が県民大会への動員に行われる。・・・悪夢だ。 三十数年前の若き日、『マルチ商法を斬る アメリカ版大型ネズミ講の上陸,』(コスモス出版)という本を出して当時のベストセラーになったことを想いだした。 |